「また頭が痛いけれど、命に関わるわけじゃないし……」
「検査では異常なしと言われたから、きっとこの痛みは仕方がないのだろう」
頭痛や片頭痛に悩んできた多くの方が、これまで何度も、こうした言葉を自分自身に向けてこられたのではないでしょうか。
朝起きた瞬間から重く感じる頭。
仕事や家事の途中で、突然強くなる痛み。
光や音がつらくなり、できれば人のいない静かな場所に身を置きたくなる時間。
それでも、そのつらさを誰かに説明することは簡単ではありません。「少し休めば大丈夫」「そのうち治る」と自分に言い聞かせながら、日常をやり過ごしてきた方も少なくないと思います。
頭痛は、外からは見えにくい症状です。発熱や外傷のように目に見える変化がないため、周囲に理解されにくく、「大げさに思われるのでは」「気にしすぎだと言われるのでは」と感じてしまうこともあります。その結果、説明すること自体が負担になり、「自分が我慢すればいい」「迷惑をかけたくない」という思いから、痛みを抱え込んでしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、医学の立場から見ると、慢性頭痛や片頭痛は決して軽く扱ってよい体の不調ではありません。現在では、慢性頭痛・片頭痛は明確な診断基準と治療指針が定められた疾患であり、適切な評価と治療によって、症状の軽減や生活の質の改善が期待できることが分かっています。
このコラムでは、なぜ頭痛が起こるのか、なぜ我慢し続けなくてよいのか、そして頭痛とどのように向き合っていけばよいのかについてお話ししていきます。
頭痛には「二つの種類」があります
医学的に「頭痛」は、大きく二つに分類されます。この分類は、国際頭痛学会(International Headache Society)が定めた国際頭痛分類第3版(ICHD-3)に基づき、世界共通で用いられています。
ひとつは一次性頭痛。
これは、他の病気が原因ではなく、頭痛そのものが主な症状となる頭痛です。片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などがこれにあたります。
もうひとつは二次性頭痛。
感染症や外傷、脳出血、腫瘍など、別の病気や状態が原因となって起こる頭痛です。この場合は、原因となる病気の治療が最優先されます。
二次性頭痛は頭痛が起こる原因疾患があり治療ができる一方で、片頭痛を含む一次性頭痛は、「命に直結しないから大丈夫」と軽く見られがちです。しかし、繰り返し起こる頭痛は、日常生活や仕事、家庭での役割に大きな影響を与えることが分かっています。
片頭痛は「体質」ではなく、医学的に定義された疾患です
日本頭痛学会によると、片頭痛は日本人のおよそ8〜9%が経験するとされています。およそ10人に1人近くが悩む可能性のある疾患で、決して珍しいものではありません。男女ともに発症しますが、女性にやや多い傾向があることも、国内外の研究で一貫して報告されています。
それでも、「昔からあるものだから」「私の体質だから仕方がない」と受け止められてきた方は少なくありません。周囲からも「頭痛持ちなんだね」「大変だけど慣れているでしょう」と言われ、病気として扱われないまま時間が過ぎてしまうこともあります。
しかし、片頭痛は国際頭痛分類(ICHD-3)で明確に定義された一次性頭痛のひとつです。診断の目安となる特徴には、次のようなものがあります。
・ズキズキと脈打つような拍動性の痛み
・中等度から重度の痛みで、日常生活や仕事に支障をきたす
・歩行や階段昇降、家事などの動作で痛みが強くなる
・吐き気や嘔吐、光や音に対する過敏さを伴う
これらの症状は、脳の血管や神経、神経伝達物質が一時的に過敏な状態になることで起こると考えられています。精神的な弱さや気の持ちようが原因ではなく、医学的に説明可能な身体の反応です。
「異常なし」と言われたときに残る違和感
頭痛を理由に医療機関を受診すると、CTやMRIなどの画像検査が行われることがあります。「異常は見つかりませんでした」と伝えられると、多くの方はひとまず安心されるでしょう。
一方で、
「原因が分からないなら、我慢するしかないのだろうか」
「この痛みは、誰にも理解されないままなのだろうか」
そんな思いが、心の奥に残ることもあります。
片頭痛は、脳出血や腫瘍のように画像で確認できる構造的な異常を伴う疾患ではありません。脳の機能的なバランスが一時的に崩れることで起こる頭痛と考えられているため、画像検査で異常が見つからないことは珍しくないのです。
これは「異常がない=問題がない」という意味ではありません。片頭痛は、症状の特徴や頻度、痛みの強さ、生活への影響などを総合的に評価して診断される疾患です。検査で異常がなかったとしても、あなたが感じているつらさが否定されるわけではありません。
なぜ片頭痛は起こるのでしょうか
片頭痛の正確な原因は、まだ完全には解明されていません。ただし、研究の積み重ねにより、重要な仕組みが分かってきています。
現在、広く受け入れられているのが三叉神経血管説です。片頭痛発作が起こると、脳の周囲の血管と三叉神経が反応し、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経伝達物質が放出されます。これにより炎症のような反応が起こり、ズキズキとした痛みや吐き気、光や音への過敏が生じると考えられています。
また、片頭痛のある方では、脳が刺激に対して敏感になりやすい状態があることも分かっています。睡眠不足や気圧の変化など、ちょっとした環境の変化が発作の引き金になることもあります。
頭痛は、生活や体の変化と深く結びついています
片頭痛は、ひとつの原因だけで起こるものではありません。睡眠不足や生活リズムの乱れ、精神的・身体的なストレス、気圧や天候の変化など、さまざまな要因が重なり合って症状が現れると考えられています。
女性では、月経周期、妊娠・出産、更年期など、ホルモンバランスの変化が頭痛に影響することがあります。一方で、男性においても、仕事の緊張や長時間労働、慢性的な疲労、生活習慣の乱れが症状を悪化させる要因となることが知られています。
頭痛は、今の生活が少し無理をしていないか?体が疲れ切っていないか?を知らせるサインとして現れることもあります。弱さの証ではなく、体が発している大切なメッセージとして受け止める視点も大切です。
薬に頼りすぎてしまう前に知っておきたいこと
頭痛が繰り返されると、市販の鎮痛薬や処方薬に頼る機会が増えることがあります。日本頭痛学会では、そのような状況で起こりうる薬物乱用頭痛について注意を促しています。
一般に、
・鎮痛薬を月に10日以上(薬剤によっては15日以上)
・3か月を超えて継続的に使用
このような状態が続くと、かえって頭痛が慢性化することがあるとされています。
「前より薬が効きにくくなった」
「飲まないと不安で落ち着かない」
こうした状態は、意志の弱さや自己管理の問題ではありません。脳の痛みを調整する仕組みが変化している可能性があり、治療を見直すべきサインと考えられています。
我慢を続けるほど、回復まで時間がかかることもあります
片頭痛は、早期に適切な治療や対処を行うことで、慢性化を防げる可能性があることが示されています。一方で、我慢や放置が続くと、頭痛の頻度が増えたり、生活の質(QOL)が低下したり、不安感や気分の落ち込みを伴うことがあります。
日本頭痛学会の診療ガイドラインでは、月に4回以上片頭痛がある場合、予防治療を検討することが推奨されています。慢性頭痛や片頭痛は、内科、脳神経内科、頭痛外来などで専門的な評価と治療が可能です。
おわりに
片頭痛は、性別や年齢を問わず、誰にでも起こりうる疾患です。そして、我慢し続けるよりも、正しく理解し、適切に向き合うことで改善が期待できることが、医学的にも示されています。
頭痛は、気のせいでも甘えでもありません。
いつものこととやり過ごさず、体からの大切なサインとして受け取ってください。
正しく知ること。
無理をしすぎないこと。
必要なときには、専門家の力を借りること。
それが、頭痛に振り回されない日常への、確かな一歩になります。
参考文献・引用文献
- 日本頭痛学会 編『頭痛診療ガイドライン2021』医学書院
- International Headache Society
The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3) - 厚生労働省 e-ヘルスネット https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/
- 日本神経学会 慢性頭痛の診療に関する解説資料
無料 オンライン健康相談&セミナー「福利厚生サービス」ダウンロード
企業の福利厚生施策として、従業員のライフステージに寄り添うサポートサービスです。
直近3年間で400回以上のセミナー実績や、利用促進につながる広報制作、全員が資格を有する専門家の相談対応をご提供しています。さらに、女性活躍推進や「くるみん」などの企業認定制度に対応した基準・条件にも沿った施策をご提案します。

1. 豊富な実績で安心
直近3年間で400回以上のセミナー開催実績。
実例に基づく具体的なノウハウをご提供します。
2. 利用促進の仕組みもサポート
広報制作サンプルを活用し、従業員が参加・利用しやすい仕組みを構築できます。
3. 専門家が直接伴走
全員が資格を有する専門家による相談対応。
女性活躍推進や「くるみん」などの認定制度にも準拠した施策をご提案します。
