新型コロナウイルス感染症にかかってしまったら

まだまだ変異を続け猛威を振るっているこの新型コロナウイルス感染症、研究データが集まってきたことで妊娠中や授乳中に感染した場合の注意点についても徐々に明らかになってきました。

今回のコラムでは、妊娠中や授乳中に新型コロナウイルスに感染した場合のリスクや、治療薬の選び方についてお伝えしていきます。

新型コロナウイルス感染症について~最新の情報~

2020年以降新型コロナウイルス感染症の流行は継続していますが、政府は2023年5月より感染症法上の位置づけを「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」へと変更しました。それにより政府として国民に一律な感染症対策や、陽性者・濃厚接触者の外出自粛を求めなくなり、私たちの生活も大きく変化しました。

現在流行している新型コロナウイルスの主流はオミクロン株の新たな系統「EG.5(エリス)」ですが国内ですでに新たな変異株「BA2.86(ピロラ)」も確認されており、感染力を強めながら今後もさらに変異していくことが予想されます。

5類へ移行し感染者の全数把握を行わなくなったことで感染状況が把握しづらくなってしまったため、妊娠中のように重症化リスクがある場合は自分で感染状況などの情報を手に入れることが大切です。

妊娠中・授乳中の新型コロナウイルス感染症のリスク

妊娠中に新型コロナウイルスに感染しても、基礎疾患を持たない場合その経過は同世代の非妊娠女性と変わらないといわれています。しかし妊娠後期に感染した場合、早産率の上昇や、妊婦本人も一部は重症化リスクが高まるという報告があるため注意が必要です。また新型コロナウイルスに感染した妊婦から胎児への感染はまれだと考えられているため、妊娠初期から中期に感染した場合でもウイルスが原因で先天性異常が引き起こされる可能性は低いといえるでしょう。

授乳中に感染した場合、現時点では母乳を介した感染のリスクに関しては明確にわかっていないためミルクへ切り替えてもよいですが、WHOでは母乳栄養によるメリットのほうが上回るとしており、感染した妊婦でも搾乳による母乳栄養を推奨しています。もし直接母乳をあげる場合は飛沫感染や接触感染のリスクがあるため徹底した感染対策を行ってから臨むようにしましょう。

妊娠中・授乳中に使用可能な治療薬と安全性

妊娠中(妊活中)

第一選択薬は解熱鎮痛薬の「カロナール(一般名:アセトアミノフェン)」です。このお薬は比較的副作用が少なく胎児への影響もほとんどないため、妊娠中でも安全に使用できることが分かっています。アセトアミノフェンの効果があまりない場合、妊娠中でもロキソニンやイブプロフェンなど、いわゆる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用できますが、妊娠後期(28週以降)に使用すると胎児の心臓に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。

また、母体に肥満や高血圧などの基礎疾患がある場合は新型コロナウイルス感染症に対する「パキロピッドパック」という経口抗ウイルス薬の使用が検討される場合があります。この薬は2022年2月国内で2番目に特例承認された、体内での新型コロナウイルスの増殖を抑える飲み薬です。飲み合わせを注意すべき薬が多いですが、もしそれらに該当していなければ使用可能な場合がありますので、基礎疾患があり内服を希望する場合は医師にご相談ください。その他体内でのウイルス増殖を抑える経口抗ウイルス薬は「ラゲブリオ(一般名:モルヌピラビル)」「ゾコーバ(一般名:エンシトレルビル)」の2種類がありますが、いずれも催奇形性の観点から妊娠中の使用は禁忌になっています。

妊活中の女性は「ラゲブリオ」と「ゾコーバ」の使用が可能ですが、薬の成分が体の中から抜けきるまでの時間の関係上服用中及び最終服用後ラゲブリオは4日間、ゾコーバは2週間避妊が必要だとされています(ゾコーバは妊娠の可能性がある場合は内服不可、かつ男性も最終内服より2週間の避妊が必要です)。

授乳中

授乳中は妊娠中と比較すると薬の使用について制限が緩くなり、カロナールやNSAIDsなどは基本的に使用可能です。

また、経口抗ウイルス薬「ゾコーバ」の内服も可能です。この薬は基礎疾患などの重症化リスクがなくても内服可能で新型コロナウイルス感染症による後遺症を予防するのではないかと期待されていますが、母乳への移行リスクから服用中および最終服用後2週間は授乳を避けることが推奨されています。

もし母親に肥満や高血圧などの基礎疾患がある場合、「ラゲブリオ」の内服も検討されますが、母乳への影響について現在もまだ調査途中であり最終的な内服については本人や医師の判断となります。

新型コロナウイルス感染症とホルモン剤

新型コロナウイルス感染症に罹患することで全身性の炎症が起こり、血栓ができやすくなることがわかってきました。一般的に経口避妊薬や低用量ピル、エストロゲン製剤の使用により血栓リスクが上昇するため、新型コロナウイルス感染症によるさらなる血栓リスクの上昇が懸念されています。したがって感染が判明したら以下を参考に内服について主治医にご相談ください。

  • 軽症もしくは無症状であれば継続
  • 入院を要するような状態であれば中止
  • ワクチンを接種する場合は特に中止の必要なし

有効な感染予防対策

一般的な感染対策(不要不急の外出を控える、マスク着用、頻回の手洗い・手指消毒、人混みを避けるなど)を徹底することで、新型コロナウイルス感染症の予防効果があることが分かっています。一方でうがいにははっきりとした予防効果は認められておらず、特に妊娠中のイソジンの濫用は甲状腺機能異常をきたす可能性があるため推奨されません。

新型コロナウイルス感染症ワクチンについても様々な研究データが出てきています。妊娠中のワクチン接種による副反応、早産や死産・流産などは非妊娠時と比較して同程度であることが分かっていますが現在も調査は進められています。妊娠中の感染によるリスクを考えるとワクチン接種にメリットがあるため、可能であれば本人だけでなく夫またはパートナーも接種を検討することが望ましいです。また現時点ではワクチン接種が生殖器に悪影響を及ぼすといった報告はないため、妊活中でも安心して接種できると考えられます。

なお授乳中の接種についてもワクチン自体が母乳に移行する可能性は低く、万が一移行しても乳児の体内で消化されるため影響を及ぼすことは考えにくいと報告されています。

まとめ

妊娠中に新型コロナウイルスに感染してしまった場合は、念のため比較的軽い症状の場合でもまず早めにかかりつけ医など身近な医療機関(かかりつけ医がない場合は「受診相談センター」など)にご相談ください。

また授乳中であれば後遺症のリスクを減らすことが期待できるお薬の使用が可能な場合もあるため、もし希望があれば対応している病院に問い合わせてみてくださいね。

現状終息が見えない新型コロナウイルス感染症、自分や大切な人を守るため感染対策をしっかりしつつ日常生活を送っていきましょう。

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