今回、ファミワンの福利厚生サービスの医師相談対応をお願いしている産婦人科専門医の稲葉可奈子先生に、産婦人科や患者さまに対する想いなどを伺いました。
稲葉先生は、産婦人科医・医学博士としてご活躍される中、「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」の代表理事を務め、HPV ワクチンや子宮頸がん予防の啓発やSRHRの普及にも取り組まれていらっしゃいます。
稲葉先生が産婦人科医になろうと思ったきっかけを教えてください
医学部の実習時に全部の診療科を回り、いくつかの科に医学的な魅力や興味を持ったのですが、産婦人科という科は女性が生まれてから生涯を通して関わる科で、また、内科的な治療や外科的な手術もあり診療のスペクトラムが広く診療する側の立場として非常に魅力的に感じました。そして、お産に携われるいうのは産婦人科だけに限られたこともあり、その3つが大きな魅力と感じたので産婦人科を目指しました。
その後産婦人科医になってから1秒たりとも後悔したことがなく、自分にとって産婦人科医が天職と感じ、日々やりがいを感じながら過ごしています。
産婦人科医、というと一般的に妊婦さんを診られるイメージがありますが、稲葉先生はどのような患者さまの対応をされることが多いのでしょうか
産婦人科というと妊娠したら行くところ、というイメージがある方が多いと聞きますが、全くそんなことはありません。
妊婦さんの診察・診療というのはあくまで産婦人科の診療の中の一部でしかなく、実際には思春期から20〜40代の方たちの生理に関するトラブル・困った症状の診療もしますし、子宮筋腫や卵巣嚢腫など良性の腫瘍の治療も行います。あとは子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんなど婦人科系の悪性腫瘍、つまり子宮や卵巣に関する病気の診療もあります。更年期などの診療や、さらにもう少しご高齢になってからの子宮脱などの診療もあります。
ただし、女性特有といっても乳房に関する症状・病気は乳腺外科になります。子宮や卵巣のことは全て産婦人科にご相談いただければと思います。
患者さまからお悩みをお聞きするときに大切にされていることはありますか?
患者さまが何に困っていて、どう改善したいかというところをきちんと聞くようにしています。同じ病気であっても、症状は人それぞれ、同じくらいの症状でもどれくらい困っているかは人それぞれ違うんですよね。
例えば、生理痛でこれくらい痛いということがあったときに、同じくらいの痛みでも、しんどく感じる方もいれば、そんなにしんどく感じない方もいます。低用量ピルで楽になるとしても、毎日薬を飲むことが大変と感じる方、薬代がかかることを考えたらそこまでの痛みではない、という方もいます。そういう方には無理に薬をすすめるのではなく、「もしもっと辛くなったときに、また相談しにきてくださいね」と伝えています。
病気をみる、というよりは患者さんの個々の症状とライフスタイル、価値観に合わせてケースバイケースで寄り添っていくことを大切にしています。
どんな症状があるとき医療機関へ相談いただきたいでしょうか
特に産婦人科は「妊娠していないのに行っていいのか」「こんなことで受診していいのか」と言われることがあるんですが、何か辛いなと感じたら、を1つの受診の目安にしてほしいです。
生理に関する症状で、生理痛だけではなく生理の量が多すぎたり、PMSで気分が落ち込むなど、生理周期に伴う症状で何かしら少しでも辛いと思っているのであれば、それは改善ができる可能性が十分にあるのでぜひ相談していただきたいと思います。
また、更年期症状も同じで、辛いと思うのであれば我慢せずに受診していただきたいですね。
あとは、症状がある方はもちろん我慢せずに受診していただきたいですが、全く症状がなくても2年に一度の子宮頸がん検診も元気だからこそ受診してほしいなと思います。