妊娠中に猫と触れ合って大丈夫?トキソプラズマ感染ってどんなもの?

2月22日は猫の日です。

妊娠すると、自分の身体とお腹の赤ちゃんのことを気にする毎日を送るようになりますよね。巷では妊娠中に気をつけるべきポイントがたくさん挙がっていて心配になることも多いと思います。その中で、「猫との触れ合いに注意」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?

「トキソプラズマ」という寄生虫の感染に猫の糞が関わるため、そのようにいわれていますが、トキソプラズマに関する正しい知識を持っていれば、過度に心配することなく、適切な対策を取ることができます。

この記事では、トキソプラズマの基礎知識や、妊娠中に注意すべきポイント、予防策、猫との関わりなどについて詳しく解説していきます。

トキソプラズマとは?

トキソプラズマは、「トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)」 という寄生虫の一種です。この寄生虫は主に加熱が不十分な肉(馬刺し、牛刺し、レバーなど)、土の中や猫の排泄物に存在し、人の体内に入ることで感染します。

トキソプラズマに感染すると「トキソプラズマ症」と呼ばれる病気を引き起こします。健康な大人であれば、ほとんど症状が出ないことが多いですが、妊婦が感染した場合には胎児への影響が懸念されるため、注意が必要です。妊娠中に初めて感染すると、胎児へ感染する確率は15〜45%といわれています。

 トキソプラズマ感染すると?

感染した時の症状は以下のものが挙げられます。

・発熱
・頭痛
・全身のリンパ節の腫れ
・倦怠感

しかし、多くの人は「不顕性感染」といい、症状が出ないまま知らないうちに感染している人が全体の8割です。

妊娠中に初めてトキソプラズマに感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんに感染する可能性があります。特に妊娠初期の感染はリスクが高く、赤ちゃんに先天性トキソプラズマ症を引き起こす可能性があります。

感染時期胎児感染率症状
妊娠の6ヶ月以上前
妊娠14週以前10%以下流早産、死産、重症度が高い
妊娠15〜30週約20%不顕性や軽度症状
妊娠31週以降60〜70%不顕性は多い、顕性でも軽度

(引用:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構HP)

 トキソプラズマの症状は?

症状は以下のものが挙げられています。

・脳や目の障害(網脈絡膜炎、水頭症)
・胎児発育不全
・精神運動発達の遅れ
・けいれん
・流産や死産のリスク

ただし、妊娠中に感染しても必ず母子感染するわけではなく、また母子感染しても必ず発症するわけではありません。また、適切な予防策を講じることでリスクを大きく下げることが可能です。

トキソプラズマはどうやって感染する?

トキソプラズマは経口感染します。経口感染とは、病原体が口から体内に入ることで感染することをいいます。予防には手洗いが効果的です。

トキソプラズマの予防策は?

日常生活で注意すべき点を押さえておくことでトキソプラズマに感染するリスクを減らせます。

①食事の注意点
馬肉、牛刺し、レバ刺し、ジビエ料理などの生肉は避ける
・生ハム、生サラミなどの加熱不十分な肉も避ける
・日本では豚肉からの感染も多く報告されているため気をつける
肉は75℃以上になるまでしっかり加熱する
調理器具(まな板・包丁)を清潔に保ち、肉と他の食材を分ける
・猫をキッチンや食卓に近づけない

②猫との生活
猫のトイレ掃除は妊婦以外の家族が行う
飼い猫が外に出る場合は、動物病院でトキソプラズマ検査を受ける
野良猫のふんには特に注意し、砂場や庭の土に直接触れない

③ 土や砂を触った後の手洗い
庭いじりや公園の砂遊びは避ける
・外出後は石鹸でしっかり手を洗う
野菜や果物はしっかり洗い、土がついているものは特に注意

④ 血液検査を受ける
・妊娠中に不安がある場合は産婦人科で血液検査を受けることができます
ちなみに、すでに過去に感染している場合は、妊娠中に再感染するリスクはほとんどないといわれています。

⑤海外旅行に注意
・トキソプラズマの多発地域のブラジル、フランスへの渡航は避ける
妊娠中の旅行はそのほかにもリスクがあるので、長時間のフライトとなる旅行は避けるのが安心です。

妊娠中に感染したかも?と思ったら

万が一、妊娠中にトキソプラズマ感染が疑われた場合は、すぐに産婦人科の医師に相談しましょう。

治療方法
・抗菌薬(スピラマイシン)を服用することで胎児への感染リスクを30%減少させることができます。
・感染時期によっては、さらに詳しい検査や治療が必要になることもあります。

まとめ

トキソプラズマは妊娠中に気をつけるべき感染症の一つですが、正しい知識を持ち、適切な対策を取ることで過度な不安を感じる必要はありません。主に以下のポイントを押さえておきましょう。

・生肉や加熱不十分な肉は避ける
・猫のトイレ掃除は妊婦以外が行う
・庭いじりや砂遊びの後は手洗いを徹底する
・血液検査を受けて、感染歴を確認する

日常生活の中で少し意識するだけで、感染リスクを大幅に減らすことができます。不安になりすぎず、安心した妊娠生活を送りましょう。

-参考文献-

国立感染症研究所 トキソプラズマ症とは  2025/02/15

・国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業 トキソプラズマとは 2025/02/15

・助産学講座6助産診断・技術学(1)妊娠期第5版.医学書院.2015

・母性看護学各論母性看護学②.医学書院.2014