今、世間を騒がせている「トコジラミ」。噛まれると痒くて眠れない程だとか、海を渡った隣の国や来年オリンピックを迎える国で繁殖しているとのことで話題になっていますね。日本では「トコジラミ」と呼ばれるので間違えやすいですがあちらはカメムシの一種です。今回は混同しないように本家の「シラミ」についての説明です。 未だに保育園等、お子さん向けに自治体では注意を呼びかけている「シラミ」についてもしっかり予防・対策できるようにしましょう。
シラミと聞いてみなさんはどんなことを思いうかべるでしょうか。
ヒトにのみ寄生するシラミは吸血性のシラミ類に分類され、野鳥や哺乳動物の羽毛や体毛に寄生するシラミ類から出現してきたと考えられています。ヒトに寄生するシラミには、頭髪に寄生するアタマジラミ、身体を覆う衣類や下着等に潜んで吸血するコロモジラミ、主に陰毛に寄生するケジラミの3種類があります。今回はこのなかのアタマジラミについてお伝えしたいと思います。
アタマジラミってどんな虫?
子どもに多く見られるアタマジラミは皮膚ではなく頭髪に寄生する2~4㎜くらいの虫で、動いているのが目で確認できる大きさです。卵→幼虫→成虫へと成長し、卵は0.5㎜程で乳白色をしており約7日間でふ化、成虫は2~4㎜の透明がかった灰色で約4週間頭髪に生息します。幼虫、成虫ともにヒトの頭皮から血を吸い、その時に唾液をわずかに注入するため、これが次第に痒みを引きおこします。アタマジラミが寄生することで媒介する感染症はありませんが、痒くてかいた傷から細菌等に二次感染することや痒みで睡眠障害になることもあります。卵は耳の後ろや襟足、頭頂部の髪の毛に付着していることが多く、成虫は 血を吸うために頭皮近くに生息しています。羽はないため飛んだりノミのように跳ねたりはせず、人から離れ吸血できなくなると3日ほどしか生きることができません。アタマジラミはプールの時期に多いと思われがちですが、プール前検診などで頭髪を確認したときに見つかることが多いためであり、実は季節は関係なく1年中感染する可能があります。
どうやって感染するの?
・清潔にしていてもうつります
アタマジラミは基本的に頭髪から頭髪へうつっていきます。「シラミ=不潔」と思われがちですが、アタマジラミは不潔が原因で発生してくるものではなく、清潔にしていても頭と頭の接触があれば誰でもうつる可能性があります。全員が誰かからうつっているものなので原因は特定できません。差別に繋がるような犯人捜しはやめましょう。
・頭髪への接触や集団の場でうつります
小さい子どもは頭がぶつかるほど身体を寄せ合って遊ぶことが多く、また保育園等では布団を並べて一緒にお昼寝をするため、頭髪から頭髪へ感染し集団発生がみられることがあります。また多くの人が利用するところ(銭湯やプールの脱衣所等)で衣類を他の人と重ねて置くことでうつることもあります。
・物品の共用でうつります
頭髪に触れたもの(タオル、ブラシ、帽子等)を共用することでうつります。
・海外旅行時に海外からもちこまれることもあります
・入浴やプールでうつることはありません
水中でシラミは髪から落ちないよう強くしがみついているので、うつることはまずありません。水中より脱衣所の方がうつる可能性があります。
予防するには?
頭の接触を減らすこと、頭髪に触れるもの(タオル、ブラシ、帽子等)を共用しないことです。アタマジラミはいつうつるかわかりません。予防のために毎日洗髪するとともに、子どもの場合は月に何回か大人が頭髪をチェックし感染していないか確認してあげましょう。アタマジラミは成虫1匹で1か月に約100個産卵します。繫殖力が非常に強く爆発的に数が増えていくので早期発見がとても大切です。成虫は動きが早く、数が少ない時は見つけられないこともあるため定期的なチェックが必要です。もしアタマジラミに感染した子がいれば、身の回りのものの共用は控えるようにしましょう。
どうやって見つけるの?
大人は頭を近づける機会が少なく、ヘアケア用品等を使用し髪の手入れをよくするためアタマジラミが繁殖しにくいと言われており、アタマジラミ感染の8割は8歳以下の子どもです。お子さんがよく頭をかいているようでしたら、一度頭髪をじっくり見てみましょう。成虫はすばしこいので卵を見つける方が簡単です。後頭部や耳の後ろの髪をよく観察すれば見つけられます。卵は頭皮がリング状にぬけたヘアーキャストとよく似ていますが、ヘアーキャストは指でつまむと簡単に動くのに比べて、卵は髪にしっかり付着しておりつまんでもなかなかとれません。判断に迷うときは保健所へ連絡をするか皮膚科を受診しましょう。
感染したらどうしたらいいの?
はじめてアタマジラミを見つけたときはびっくりすると思いますが、慌てなくて大丈夫です。アタマジラミの駆除剤は市販されており、家庭できちんと対処すれば2週間程度で駆除できます。
・十分な洗髪とブラッシング
成虫は洗髪で洗い流すことができます。子どもは洗髪が不十分になりやすいので感染している間は大人が丁寧に洗ってあげましょう。卵は洗髪だけでは取り除きにくいため、洗髪し卵がふやけた時に、目の細かいすき櫛で根元から髪の毛を丁寧にすき、卵をとり除きましょう。アタマジラミ専用の櫛もあります。
使った櫛はアタマジラミが付着している可能性があるので、60度以上のお湯に5分以上浸して消毒します (シラミは熱に弱く60度以上5分以上の加熱で成虫も卵もほぼ死滅すると言われています)。必ずしも頭髪を短くする必要はありません。
・頭に触れるものは毎日交換し洗濯する
枕カバーやシーツ、帽子、頭を拭いたタオルなどは他の洗濯物とわけておきます。洗濯前に60度以上のお湯に5分以上つけてから洗いましょう。アイロンや乾燥機の使用も効果的です。寝室の掃除は普段より入念に行い、吸い取ったゴミは密封して捨てましょう。床に落ちたシラミは血を吸えないため2~3日で死んでしまいます。羽がなく飛んだり跳ねたりしないため、あまり神経質にならなくて大丈夫です。
・頭に触れるものの共用をさける
家族間でもブラシ、タオル等の共用は避けましょう。また、家族間で感染している可能性が高いので、全員の頭髪をよく調べましょう。
・専用の薬剤の使用
上記方法でほとんどのシラミは駆除できますが、シラミ駆除専用パウダーおよびシャンプも販売されています。必要に応じて使用しましょう。
学校や会社は行っていいの?
アタマジラミの感染がわかっても、通勤・通園・通学を制限する必要は基本的にありません。ただ、感染拡大予防のため、できるだけ速やかに施設の管理者や学校の先生方に感染したことを伝えましょう。伝えることで保育園幼稚園等は施設内で拡大させないための対策を行うことができます。多くの先生は対処に慣れていて子どもが嫌な思いをしないように配慮をしてくれます。 駆除がおわるまで保育園の昼寝等で使用したシーツや帽子は毎日持ち帰り洗濯しましょう。また感染拡大予防には家庭との連携が不可欠です。感染を伝える時はどのような状況でいつから駆除対応を開始しているのか伝えるようにしましょう。
最後に
「シラミがわいた」という言葉がありますが、アタマジラミは不潔にしているから発生したてきたり、逆に清潔にしているから大丈夫というものではありません。昔に比べシラミの発生件数が減少し、シラミについて知っている人も少なくなりました。大切なことは正しい知識をもつことです。特に子どもは大人の発言で深く悩んだり、心に傷をもったりします。誤った認識からの不用意な発言で子どもを傷つけることや、偏見に繋がっていくことのないようにしたいですね。
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