【人事部なら押さえておきたい】母子健康指導事項カード運用法

『母子健康管理指導事項連絡カード』を知っていますか?

男女雇用機会均等法により、妊娠中・出産後1年の女性労働者のために作られた申請書です。

内容としては、医師や助産師からの女性労働者の通勤や業務への指導が記されています。

女性労働者はこのカードを職場に提出することで企業側から指導内容に基づいた措置を受けることができます。

今回は、この『母子健康管理指導事項連絡カード』について詳しく説明していきます。

『母子健康管理指導事項連絡カード』の変更点とそのポイント

2021年7月から、『母子健康管理指導事項連絡カード』の内容が一部改正されました。

〈変更点〉

・症状での大枠と指導内容での大枠に分かれ、措置が複数選択できるようになった

・以前は症状の選択項目が病名だったが、症状のみでも選択できるようになった

(例:【旧】切迫流産、切迫早産→【新】腹部緊満感、子宮収縮、腹痛、性器出血)

・症状別の業務配慮の例が添付されるようになった

〈ポイント〉

・症状に対する指導が明確かつ汎用性が高くなり、医師側が記入しやすくなった。

・企業側が、症状に対してどのような措置をとればよいのか参考にしやすくなった。

・女性労働者が病気になる前段階の予防時期の要望に関して申請しやすくなった。

『母子健康管理指導事項連絡カード』の上手な利用方法

『母子健康管理指導事項連絡カード』は、診断書と同じ意味合いを持ちますが、診断書を出すほどの内容ではないときに利用するのに適しています。

例えば、長い妊娠生活だと「電車通勤時に毎回お腹が張るし、座れなかった時に貧血で気持ち悪くなって途中下車をすることもある…けど会社につけば回復していつも通り仕事できるから休みを申請するほどではない」というような、時間や場所に限定して辛さを感じるという悩みもよくあると思います。

そんな時に活用してほしいのが『母子健康管理指導事項連絡カード』です。

先ほどのような悩みの場合、〈子宮収縮〉〈貧血〉が症状として認められます。

その症状に対して、医師が時短勤務や在宅勤務を指導として記載し、申請書を作成してくれるのです。

『母子健康管理指導事項連絡カード』の利用する流れ

まず、妊婦健診の時に医師に症状の相談を行い、『母子健康管理指導事項連絡カード』での指導の希望を伝えます。

症状と健診内容に応じて、医師がカードを作成します。

『母子健康管理指導事項連絡カード』は、診断書と同価格もしくはそれより安いことが多いです。

病院によって価格は様々ですが、2000~3000円で用意しておくとよいでしょう。

『母子健康管理指導事項連絡カード』を受け取り、会社に提出してください。

〈事前に確認しておくとよいこと〉

・病院に『母子健康管理指導事項連絡カード』が用意されているか問い合わせておきましょう。病院にない場合は、厚生労働省のホームページや母子手帳のURLからダウンロードできます。

・指導内容が休業となる場合、病欠になるのか有給となるのかは会社によって異なるので人事部に聞いておきましょう。 また、傷病手当がでるかどうかも健康保険組合によって変わってきますので、併せて確認するとよいでしょう。

『母子健康管理指導事項連絡カード』の利用例

①「新型コロナウイルスが流行って、通勤や会社で感染するのではないかと不安」

→『母子健康管理指導事項連絡カード』は新型コロナウイルスの感染についての不安やストレスに関しても措置を講じています。

通勤緩和や在宅・時短勤務、休業等の措置を受けることができます。(対象期間は令和5年6月現在で、令和5年9月30日まで)

実際に私が働いていた病院では、新型コロナを理由に産休の時期まで在宅勤務や休業の指導を受ける妊婦さんが多くいましたよ。

②「夕方ごろの体調がいつも悪いので時短勤務にしたいが、上司が男性で言いづらい」

→職場の人間関係や、労働環境によっては直接上司へ業務変更の要望を言い出しづらいという人も多いと思います。

そういった時もこの『母子健康管理指導事項連絡カード』を利用していきましょう。

自分主体で「こういう症状があるから仕事を変えてほしい」というのと、「こういった指導を医師から受けたので仕事の相談をしたい」と報告するのだと圧倒的に後者の方が言い出しやすいですよね。

このカードは、企業側と女性労働者の間を医療側が仲介するような役割としても利用できますので、ぜひ上手に活用してほしいと思います。

『母子健康管理指導事項連絡カード』受け取った企業側の気を付けるポイント

①申請内容に対してのネガティブな発言はしない

「これまで働いていた妊婦さんはこんな申請はしてこなかった」

「私が妊娠した時はそんなにつらくなかった」

こういった発言はマタニティハラスメントになりかねません。

風邪の症状ですら、人によって違います。

妊娠も同じで、これまでの人が大丈夫だったから問題ない、ということはありません。

②業務内容の変更は女性労働者と相談する

『母子健康管理指導事項連絡カード』へ症状に応じた措置が書いてありますが、詳細の指導は医師側からは書いていないこともよくあります。

そんな時に気を付けたいのが、申請者本人と話さずに措置内容を決めてしまうことです。

どの程度の配慮が必要なのかを本人と直接相談できると、双方にとって今後の仕事が続けやすくなるでしょう。

③他社員への配慮

権利として認められているとはいえ、休職や業務変更となったら他の社員で申請者の仕事をフォローしなければいけないのも事実ですよね。

申請者本人の許可が得られたら、医師からの指導で勤務の調整が必要なことを他の社員へも伝えて、配慮への理解を得るようにしましょう。

医師の診断がある、という情報は第三者が聞いたときに納得感を得やすいです。

この際に申請者へのマイナスな気持ちなどは含めないように気を付けましょう。

関連URL:https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/josei/hourei/20000401-25-1.htm

また、不妊治療中の仕事の調整のためには、不妊治療連絡カードがあります。

こちらも従業員からの提出がある可能性がありますので、形式等おさえておくと良いでしょう。

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