就職や転職をする場合に、転勤の有無って大きなポイントになりますよね。
「内定をもらったけど、転勤があるからワークライフバランスと両立できるか不安です。」
「仕事は充実してたけど、転勤に応じられなくて退職することに決めました。」などという話も聞こえてきます。
転勤制度については、以前から、家庭生活との両立という部分で様々な問題が提起されてきました。
さらに、最近の女性の就業率の上昇や共働き世帯の増加、高齢化や労働力人口の減少等の雇用環境の変化により、転勤制度の問題が、個別多様化してきています。
よりよい転勤制度の下で、従業員が希望するワークライフバランスと両立しながら充実した職業生活を送るために、どのような取組が望ましいのか考えていきたいと思います。
転勤がワークライフバランスに与える影響
まず、転勤がワークライフバランスに与える影響とは、どのようなものがあるのでしょうか?主なものとしては、以下の2つが考えられます。
・ライフプラン設計への影響
職業生活を送る中で、ライフステージの変化に合わせたライフプランを設計するようになります。
結婚や出産、育児等のライフイベントに伴い、生活の拠点をどこにするのかというのは大きなポイントになるでしょう。
しかし、転勤がある場合、設計したライフプランを変更しなければならなかったり、そもそもの設計自体が難しくなったりということが有り得るのです。
・単身赴任による経済的負担の増加、家族コミュニケーションの低下
家族そろっての転勤が難しい場合は、単身赴任をしなければなりません。職場から、手当等の支援はあるでしょうが、二重生活になるため、経済的負担が大きくなることが予想されます。
また、長期の転勤となった場合には、子供の成長に関わることができず、転勤を終えるころには家族とのコミュニケーションが満足に行えなかったという状況も少なくありません。
したがって、仕事だけではなく、私生活にも大きな影響を与える転勤とワークライフバランスとの両立について、悩みが大きくなるのも当然と言えるのではないでしょうか。
しかし、転勤は雇用管理上の一制度であるため、従業員が取れる対策は限られており、企業側の取り組みが非常に重要になってきます。
次の項目では、自社の転勤制度をより良いものとするためのポイントについて紹介していきたいと思います。
転勤をめぐる雇用管理を見直す際のポイント
転勤が私生活に与える影響の大きさから、様々な家庭事情をかかえる従業員に対して転勤をさせるのは難しいという企業も多いのではないでしょうか?
「転勤について見直したいけど、事業を継続するためには完全になくすこともできないし、どこから取り組んでいけばいいのか分からない」なんて声も聞こえてきそうです。
そんな企業の方のために、転勤をめぐる雇用管理を見直す際に、参考としていただきたい3つのポイントをご紹介します。
・現状把握
まずは、自社の転勤をめぐる雇用管理について、現状を検証し確認することが必要です。
転勤を行う目的や、転勤の状況、転勤に関する取扱いの状況、転勤が果たしている効果の検証などを行い、自社にとって不可欠な転勤とは何かということを見極めましょう。
・基本方針の整理
現状把握によって転勤の現状が見えてきたら、基本方針の整理を行います。あくまでも、転勤制度そのものに関する基本方針の整理を行ってください。転勤制度そのものではなく、転勤に応じられない従業員への仕組みや運用で対応しようと考えてしまいがちですが、それでは、根本的な解決にはならず、転勤に関する雇用管理が持続可能な形になりにくくなってしまいます。転勤が担う機能について、転勤という方法でなければ果たせない機能なのか、ほかの方法に変えることはできないのかなど、総合的に検討することが有効です。
・具体的なルール作り
基本方針の整理ができたら、最後に、具体的なルール作りについて検討していきます。
自社の状況に合わせて、転勤の時期や周期、転勤対象者、転勤対象者への取り扱い、転勤が難しい従業員に対する仕組み作りなどに取り組んでみてください。
この時に最も重要なのは、ワークライフバランスとの両立に関する個々の従業員の事情や意向を、書類や面談により、個別に把握できる仕組みを作ることです。これにより、従業員の意向を尊重しながら、雇用管理を行うことができます。
あわせて、キャリア面談等も組み込み、転勤を伴うキャリアの展望を明確にすることができれば、従業員も転勤を前提としたキャリアプラン・ライフプランの設計が可能となり、モチベーションアップにもつながるのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?
転勤とワークライフバランスの両立のために、転勤をめぐる雇用管理を進める際のポイントについて紹介してきました。
企業における転勤のあり方は様々であり、従業員のワークライフバランスの状況も様々です。
その中で、自社にとって不可欠な転勤制度を効率的に運用するためには、企業の実情に合った効果的な進め方を労使で話し合い、決定してくことが大切になってきます。
個々の従業員のワークライフバランスに寄り添い、転勤が従業員の不利益とならないような雇用管理に努めてください。
今後のキャリアの展望について話し合ったうえで、必要不可欠な転勤だと納得できれば、従業員も意欲的に転勤に応じることができます。また、転勤を伴うキャリアプランを踏まえたライフプランの設計が可能となるでしょう。
企業も従業員もお互いに成長でき、ワークライフバランスとの両立も可能となるような転勤制度の運用ができるよう期待しています。