近年、女性が活躍できる社会のあり方が注目されています。しかし現代の日本は、働き続けたいすべての女性が、家事や育児と仕事を両立しながらキャリアアップできる社会とは言い難い状況です。一方で、人口は減少し労働力不足が懸念される中で、グローバル化やニーズの多様化に対応するためにも、女性の活躍推進は重要視されています。そこで始まったのが、女性の活躍を推進している企業に対し、厚生労働大臣が認定する「えるぼし認定」の制度です。
今回は、えるぼし認定についての基準やメリット、申請方法について解説していきます。
1.えるぼし認定とは
えるぼし認定とは、女性の活躍推進に関する取り組みや職場環境などが優良な企業を認定する制度です。
えるぼしの「える」はアルファベットの「L」に由来し、「Lady(女性)」や「Lead(手本)」、「Laudable(称賛)」などを意味します。
えるぼし認定を受けた企業は、自社のホームページや商品に認定マークを使用することができ、女性の活躍を推進している企業であるということをアピールできます。
2.認定について
「えるぼし認定」は3段階で評価されます。その中でより高い基準を満たした企業は「プラチナえるぼし認定」を受けることができます。
1)認定の基準
女性の能力が発揮しやすい職場環境であるかという観点から以下の5つの評価項目が定められています。また、その実績を厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」というサイトに毎年公表することが必要です。
(1)採用
男女別の採用における競争倍率(応募者数/採用者数)が同程度であること
(2)継続就業
平均継続年数や継続雇用割合の男女差が一定の基準を満たしていること
(3)労働時間等の働き方
過剰な時間外勤務及び休日出勤がないこと
(4)管理職比率
管理職に占める女性従業員の割合や、課長級の職階にある従業員の男女差の割合が一定の基準を満たしていること
(5)多様なキャリアコース
女性従業員のキャリアアップ制度を設けていること
参考:厚生労働省「えるぼし認定、プラチナえるぼし認定」
https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/000651390.pdf
2)認定の段階
上述した評価項目のうち、基準を満たしている項目数に応じ、取得できるえるぼし認定の段階が決まります。
(1)5つすべての基準を満たす 3段階目
(2)3~4つの基準を満たす 2段階目
(3)1~2つの基準を満たす 1段階目
3)プラチナえるぼし認定
えるぼし認定を取得している企業の中で、特に優良な企業はプラチナえるぼし認定を取得することができますが、下記の要件を満たしている必要があります。
(1)上記5つの評価項目を、プラチナえるぼしの基準で全て満たしている
(2)策定した一般事業主行動計画に基づく取組を実施し、当該行動計画に定めた目標を達成している
(3)男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任している
(4)女性活躍推進法に基づく情報公表項目(社内制度の概要を除く)のうち、8項目以上を厚生労働省の運営するサイト「女性の活躍推進企業データベース」で公表していること。
参考:厚生労働省「えるぼし認定、プラチナえるぼし認定 」
https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/000651390.pdf
3.えるぼし認定を取得するメリット
1)企業のイメージアップ
認定を受けた企業は厚生労働省のホームページに記載されるほか、自社のホームページや商品、広告などにえるぼし認定マークを使用することができます。女性の活躍を推進している企業であるということを印象付けることができ、企業のイメージアップにつながります。
また、えるぼし認定マークを求人広告に利用することで、多くの求職者からの応募が期待でき、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。優秀な人材が集まり企業が成長していくことで、より質の高い商品やサービスの提供が可能となり、顧客の満足度向上にもつながっていきます。イメージアップ、優秀な人材の確保、顧客の満足度向上という好循環を生み出すことができます。
2)従業員の満足度向上
基準項目には、従業員が継続して働きやすい環境やキャリアアップが見込める職場であること、過剰な残業や休日出勤を減らすことなどが含まれていることから、認定基準を満たす企業は働きやすい環境が整っていると言えます。このような企業では、女性従業員が能力を高めながら、就業を継続できる職場環境を提供することができ、従業員のモチベーションの向上、離職率の低下などが期待できます。
3)公共調達、低利融資の優遇措置が受けられる
えるぼし認定を受けた企業は、政府が民間の企業から物やサービスを購入する公共調達で加点評価を受けることができます。公共調達で有利になることは、国や地方自治体から仕事を受注する企業にとっては大きなメリットになるはずです。
また、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」を通常よりも低金利で利用することができます。従業員の待遇改善や保育園の建設など働き方改善計画を実施するために必要となる資金に使うことが可能なのですが、基準金利からマイナス0.65%の金利で利用することができるメリットがあります。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法が平成28年4月1日から施行されました!えるぼし認定企業になりませんか?」https://jsite.mhlw.go.jp/miyazaki-roudoukyoku/library/miyazaki-roudoukyoku/koyoukannkyou-kintoushitsu/leaflet/leaf_eruboshinintei.pdf
4.えるぼし認定の流れ
えるぼし認定を取得するためには、以下の手順で進めていきます。
1)自社の女性の活躍に関する状況把握と課題分析
まずは、指定された基準項目、選択項目に沿って女性の活躍に関する社内の状況を把握します。把握した状況から自社の課題を分析していきます。
2)一般事業主行動計画の策定・社内通知・公表
状況把握、課題分析ができたら、その結果をもとに行動計画を策定していきます。行動計画には、計画期間、数値目標、取組内容、取組の実施時期を盛り込むことが必要です。
行動計画は、非正社員を含めた全ての労働者に周知します。併せて、厚生労働省が運営するサイト「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページで掲載して、外部への公表も行います。
3)えるぼし認定申請
行動計画を策定したら、電子申請、郵送または持参により、管轄の都道府県労働局に届け出ます。
4)取り組みの実施、効果の測定
定期的に、数値目標の達成状況や行動計画に基づく取組の実施状況を点検・評価しましょう。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう」https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000984248.pdf]
5.まとめ
えるぼし認定は、女性の活躍を推進する企業であるという証です。えるぼし認定を取得することで、企業のイメージアップ、従業員と顧客の満足度につながり、企業と従業員のどちらにも多くのメリットがあります。
この記事で紹介した基準項目や申請の流れを参考に、えるぼし認定の取得を目指してみてはいかがでしょうか。