【人事部なら押さえておきたい】不妊治療連絡カード運用方法

不妊治療を開始して、いやもしかしかしたら開始する前から実は多くの方が不安を抱いている悩み。

それが「仕事と治療の両立」ではないでしょうか。

・治療を始めたいのに、仕事を休めない、融通が効かないから一歩が踏み出せない。

・治療を始めたら、やっぱり病院の受診のために仕事を犠牲にすることが多くなり働きにくい

など、女性は不妊治療と仕事のバランス・両立にとても悩まされる方が多いのが現実です。では何故そこまで不妊治療を開始すると仕事との両立に悩まされることになるのか、仕事を辞めないと治療はできないのか、何か解決策はないのかなど今回は様々な視点から「不妊治療と仕事」についてお話ししていきたいと思います。

なぜ不妊治療は仕事との両立が難しいと言われるのか

我が国では現在、約5割の方が治療と仕事の両立をしているとされています。

しかし約3割の方が両立ができず仕事を辞めた、雇用形態を変えた、治療を辞めた等、現状を維持できずどちらかを犠牲にしどちらかを継続するという選択をされているという現状があります。

実際に両立を難しいと感じる場面はどんな時かというと

・通院回数の多さ

・治療のため急な仕事の調整が必要

・精神面での負担の大きさ

・待ち時間など通院にかかる時間が読めない

・仕事の調整ができない

・病院と職場が離れていて移動が大変

こういった事が原因として挙げられています。

不妊治療は、女性の月経周期に合わせて行うことが多い治療です。

そのため、おおよその予測がつけれることもありますが、人間の体はロボットではないため予定通りには行かず急な受診が必要となることも珍しくありません。

また、細かく診察を行わないと月に一度しかない排卵のタイミングを逃してしまう可能性もあります。

また検査なども、どのタイミングでも可能な検査ではなく「月経周期の○日目」に行う検査など、ポイントが絞られてきてしまう検査も多いのも不妊治療の特徴と言えます。

妊娠を目指しての治療は女性の月経周期に合わせて行う治療であることが大前提なのです。

このような不妊治療の流れを職場が理解できていなければ、急な休みが必要な治療とは?命に関わることでもないのに?など理解を得られることが難しく、両立が困難になってしまうという現状があります。

不妊治療の具体例

不妊治療には3つのステップがあります。

タイミング療法・人工授精・体外受精です。

この3つの治療法のスケジュールを簡単にご紹介します。

タイミング療法

・月経中に受診

 月経中の受診が必要となるため、月経がきてからしか受診日が決めれない

・卵胞発育確認のために月経の10〜14日目頃に受診

・排卵を促す目的で受診

*タイミング療法の場合おおよそ1ヶ月で3〜4回ほどの受診が必要となります。

 検査を行う必要がある場合は更に通院回数が追加となります。

人工授精

・月経中に受診

 月経中の受診が必要となるため、月経がきてからしか受診日が決めれない

・卵胞発育確認のために月経の10〜14日目頃に受診

・排卵日直前に人工授精のために受診

 排卵検査薬が陽性になったら受診となるため、急に受診が必要

 人工授精当日は男性の協力も必要

また精子の処理に60分ほど掛かるため病院への滞在時間も長くなる

*人工授精もタイミング療法と通院回数はほぼ一緒ですが、人工授精の日が急に決まり、それに合わせて受診する必要があり、いつもより滞在時間も必要となります。

体外受精・顕微授精

・月経中に受診

・その後10日間の間に卵胞確認を行うため2〜3回程の受診が必要

・採卵日は2〜3日前に決定

・採卵当日は朝早くに来院し昼過ぎまでかかる

・採卵は麻酔を使用することも珍しくないためその後仕事へ戻ることが可能な訳ではない

*体外受精中の診察はホルモン検査を行い結果を確認しながらの治療をとなるため、採血を行い結果が出るまでおおよそ1時間近く待つ必要があり、1回の受診の滞在時間が3時間近くになることも珍しくない。

これが実際の治療のスケジュールです。全てが女性の月経が来てからしか開始できない治療であり、そこからは怒涛のように受診日が訪れます。

通院回数が多く、短時間での受診も難しい。またそれだけではなく、これだけ頑張って治療を行っても、必ず結果が出ますという治療ではないため、このような治療を何ヶ月も継続する必要があり女性の負担は時間が経過すると共に大きくなり、身体的にも精神的にもダメージが大きくなっていきます。

また治療をしている女性はこの事実を事前に理解している方も多いため、いつまで続くかわからない治療でもあり迷惑をかけたくない、気を使わせたくないなどの罪悪感から職場には打ち明けず治療をされている方も珍しくありません。

何か対策はないのか?

厚労省が行った調査の結果、不妊治療を行っている労働者が受けられる支援を行っている企業は3割でした。この様に企業自体が不妊治療の実態について知られていないこと、それが原因で支援策も十分でないことがわかります。

これらのデータから、厚労省は「不妊治療連絡カード」の活用を呼びかけています。

不妊治療連絡カードは治療を受ける、もしくは予定している労働者の方が、企業に不妊治療中であることを伝えたり、治療のために企業に両立支援制度の申請をしたりする場合に活用することができます。

企業(職場)と労働者(治療を受ける者)の連絡ツールとして、企業と病院の連絡ツールとして活用していただき、企業にある制度や休暇を利用して頂くことができます。

不妊治療連絡カードの使い方

実際に連絡カードを利用したい場合、まずは通院している病院にご相談ください。

不妊治療を行っている病院であれば連絡カードの作成は可能です。

作成にあたっては、担当医にご自身の業務内容などを伝えた上で作成をしてもらいます。

作成を依頼し当日中に受け取れる場合もありますし、1週間程度時間が必要な病院もあります。そのため事前に確認をしておくと良いでしょう。

また費用に関しても実は病院により異なります。

無料で作成をしている病院もありますが、有料となっている病院もあります。

有料の場合2000円〜5000円と病院により大きく異なるため、こちらも事前に確認が必要となります。

病院で不妊治療連絡カードを作成してもらったら、あとは会社に提出するだけです。

その連絡カードに治療内容、必要な通院回数や時間、身体的負担についてなど記載されるため、ご自身で細かく伝える必要はありません。

受け取った企業はどうすべき?

不妊治療連絡カードを受け取った企業は、それに伴い対策を検討する必要が出てきます。

連絡カードの内容を確認後、勤務時間の配慮・休暇・出張の可否などを本人へ確認し会社で使用できる制度などがある場合は提案などを行っていく必要があります。

また、プライバシーへの配慮も必要です。

治療の現状をどの部署の誰にまで伝達して良いことなのかを本人へ確認し情報を共有する必要があります。

利用した女性の声

私は実際に病院で勤務しており、この不妊治療連絡カードの利用を呼びかけています。

実際に利用したからはこの様な声をこれまで聞いています。

・職場に話したかったけど、切り出せなかったからこの用紙できっかけを作ることが出来た

・これまで毎月、生理が来るたびに治療のスケジュールを伝える必要があり苦痛だったけど、連絡カードを提出するだけで仕事を配慮してもらえるようになり助かった

・治療スケジュールを伝えるのって実は難しい。自分の事なのにわからないの?と思われるかもしれないけど、、、。だからこの連絡カードで直接、医師が職場へ伝えてくれるのでありがたい。

・連絡カードの存在をもっとアピールして欲しかった。早くに知りたかった

・毎月提出するのが大変

今後の課題

2017年に厚労省によって作成された連絡カードですが、利用が拡大されず数年が経過しています。

実際に利用した方からは、利用したことへのメリットの声が聞かれていますが、実際にはこの存在を知らず、長年両立に苦しまれている方が多い現状が続いています。

不妊治療が保険適用となり、早い段階からの治療に取り組みやすくなったはずなのに、実は保険適用だけでは不妊治療に取り組みやすくなった訳ではないのです。

不妊治療にかかる費用も大きな課題ではありましたが、不妊治療と仕事の両立。実はこれがもう一つの大きな課題です。

この課題を少しでも軽減させ、一人でも多くの女性が仕事を諦めることなく、治療に取り組めるように、この不妊治療連絡カードを利用し、また企業も治療について理解した上でサポートできる体制を整えていくことが、保険適用の次の大きな課題ではないかと思います。

不妊治療連絡カードはこちら

また、妊娠中の仕事の調整のためには、母子健康指導事項カードがあります。

こちらも従業員からの提出がある可能性がありますので、形式等おさえておくと良いでしょう。

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