【妊娠と仕事の両立】専門家による「産院」選びのポイント

妊娠中も産休まではしっかり働きたいと思う女性は少なくありません。もちろん母体と胎児の健康あってからこそですが、産休までは元気に働けるようなポイントをお伝えします。

人事部の方は妊娠をされた女性社員が仕事との両立で悩んでいる際にはこちらの記事の情報をぜひお伝えください。

今回のお話では、仕事との両立に向けた産院選びのポイントをご紹介していきます。

まずは病院の種類は、大きく分けて3種類あります。

総合病院・大学病院

産科以外の科も併設されている大きな病院です。大きな病院の中でも2つにわけることができ、総合周産期センターは、MFICU(母体胎児集中治療管理室)とNICU(新生児集中治療管理室)を備えた施設で、よりハイリスクな症例をみることができます。地域周産期母子医療センターは、産科と新生児科を備え比較的高度な医療行為を提供できる施設です。

メリット

・持病や合併症がある方は他科の医師と産科医で連携して妊娠経過を診てもらえる

・万が一の事態が母子に起こっても同じ施設で手術や治療の対応ができる

・急なトラブルでも夜間や休日の診療をしてもらえる

デメリット

・待ち時間が長いことが多い

・診察や出産時の医師の指定はできないことが多い

・大学病院の場合医師や看護師、助産師の実習の依頼をされることがある

個人病院・クリニック

産科のみの病院や診療所です。分娩施設の中では一番数が多いため、自宅からのアクセスの良い病院を選択しやすいです。人気のある病院だと妊娠10週までには分娩予約が締め切られることがあるため早めの予約が必要です。

メリット

・診察や入院中のホスピタリティが高いところが多い

・同じ医師の診察を受けやすい

・土日診療している病院もある

デメリット

・母体や赤ちゃんに何かあったときは転院が必要になることもある

・持病や合併症がある人は受け入れてもらえない可能性がある

助産院

助産師の開業する分娩施設です。医師はおらず、妊娠中の管理から分娩、産後まで助産師が見ていきます。ですが万が一に備え、助産院には必ず提携する医療機関や嘱託医がいます。提携先の病院や医師を事前に確認するとよいでしょう。

メリット

・同じ助産師に妊娠中から産後まで見てもらえる

・家族全員での立ち合い分娩や水中分娩など、病院ではできない希望を叶えやすい

・薬剤などを使わない自然に任せたお産ができる

・費用が安い

デメリット

・医療行為が必要な状況になった場合、病院へ転院となる

・分娩受入数が少ない、対象妊婦の条件が厳しい

以上が大まかな3つの分娩施設の種類でした。

これだけじゃ決められない、という方もいらっしゃると思います。病院先選びの具体例もご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

Aさんの場合 ~現在妊娠9週~

39歳。不妊治療で妊娠。以前8週で流産した経験あり。甲状腺の持病があるが落ち着いている。流産した経験や、高齢妊娠であることから妊娠に対して喜びよりも不安のほうがまだ強い。夫も不安な妻を案じており、費用面よりも安全面を重視して病院選びしたいと思っている。

Aさんにお勧めの病院は大学病院・総合病院です。

持病があり、高齢妊娠であること、本人・ご主人の不安も強いことから夜間の受診や緊急時にも対応できる施設が望ましいです。Aさんの場合は、大きい病院の中でも総合周産期センターほどのハイリスク病院ではなくても、地域周産期母子医療センターを選んでも十分に安心できる医療が受けられますよ。

Bさんの場合 ~現在妊娠7週~

31歳、2人目の妊娠。前回の妊娠の問題や、持病はなし。前回のお産で完全母乳推進の病院だったが、今回は仕事復帰もあるため完全母乳ではなく混合での母乳育児にしようと思っている。また、入院中くらいはリラックスしておいしいごはんを食べて過ごしたいという希望あり。夫は立ち合い分娩をしたいと思っている。

Bさんにお勧めの病院は個人病院・クリニックです。

特に医療面でのリスクもなく、入院中のホスピタリティの高さを希望している点からも個人病院やクリニックなどでの分娩が勧められます。ご主人の分娩立ち合い希望もあるので、立ち合い可能かどうかも病院選びの基準にするとよいですね。また、完全母乳推進の病院はBFHと呼ばれています。検索して対象施設を確認したり、病院のHPから母乳育児への方針を情報収集しておくといいと思います。人気の病院を希望する場合は7週頃には分娩予約の電話をしておくといいですよ。

Cさんの場合 ~現在妊娠9週~

41歳、不妊治療で初めての妊娠。持病はなし。高齢妊娠とわかってはいるが、赤ちゃんにとって負担のある治療行為などはしたくない。自然分娩で、会陰切開などもしてほしくないと思っている。夫は安全なお産にしてほしいと思っている。

Cさんにお勧めの病院は大学病院・総合病院です。

自然志向なのになぜ大きい病院なのか、と思われたかもしれません。Cさんの場合、高齢出産であることから妊娠の合併症などが現れやすいのも事実です。そして助産院で高齢の初産婦を受け入れている施設はあまりありません。そのため、ハイリスクにも対応できる大きい病院をお勧めしました。ですが、大きい病院ならではの院内助産というものをやっている病院があります。院内助産は、緊急時は提携先の大きい病院で治療を受けられて、妊婦健診やお産に関しては助産院のように助産師が中心となってケアをしていく、というシステムです。院内助産を取り入れた病院ならば、Cさんと夫の希望の中間点の対応ができると思います。

まとめ

ここまで病院選びのポイントをお伝えしてきましたが、病院選びに一番必要なことは、自分と家族の産院への希望を明確に決めることです。妊婦さん自身がバースプラン(自分がどんなお産や育児にしたいか)を大まかにイメージしておくことも大切ですよ。

また、妊娠検査薬で陽性になった後に一番最初に受診した施設でお産しないといけない、というわけではありません。ひとまず近くの婦人科で正常妊娠を確認して、妊婦健診を受けながら妊娠初期の間に産院選びをするのでも問題ありませんよ。また、産院に通う間に病院への違和感を持つこともあるかもしれません。そんな時も初期よりは病院は絞られてしまいますが、転院することも可能ですよ。自分らしいお産ができるよう、自分の重視するポイントで病院を選び、少しづつお産への準備を進めていきましょう。

妊娠後は、決めなければならないことが多く、負担がかかる可能性があります。従業員の方が健やかに自分らしく妊娠と仕事を両立することができるよう、サポートに役立てていただけると胃幸いです。