【産業保健活用】利用される企業内相談窓口の条件とは

働く人の心の健康が重要視されてきた流れの中で、人事部や健康管理室などに従業員からの相談窓口を設置している企業は増えてきていると思います。ハラスメント相談窓口は設置義務がありますが、従業員からの「なんでも相談窓口」は一見するとメンタルヘルス対策として「従業員思いのいい施策」になっていると思います。

しかし、いざ蓋をあけてみると「会社の人には相談しにくい」「誰が何の相談をしているのだろう」と窓口設置の意図がうまく伝わっていないため、ほぼ利用されていないケースもあるのではないでしょうか。

では、利用されやすい相談窓口とはどのような相談窓口でしょう。

また、相談窓口の利用率があがった際、その先に人事、会社はどのように相談窓口を活用していけるのかその可能性を考えてみたいと思います。

利用されやすい相談窓口とは

目的、担当者、守秘義務などをしっかりと従業員に周知していることは大前提ですが、「相談したらどうなるの」というところまで事前周知している窓口が望ましいです。従業員からすると、どこまで自分の情報は知られてしまうのか、上司に相談したことが伝わるのでは、と不安に感じるため「あなたの了承なしに他者に内容を伝えることはありません」ということを丁寧に説明し、できる限り不安を軽減させておくことが相談窓口利用のハードルを下げることに繋がります。

しかし、そうなると職場環境調整などが必要になった際に上司に伝えられないのでは?と疑問に思う担当者の方もいると思います。相談対応でのポイントは「本人の了承なしに共有しない」という点になります。よって、上司に情報共有することが本人にとっての利益に繋がるということを相談担当者が説明し、本人の了承を取ることで上司や関係者への共有が可能になります。このステップを踏まずに勝手に情報共有を進めてしまうと相談者本人からの信頼はもちろん、その一連の出来事が社内に広がり、相談窓口そのものへの信頼を落としてしまう結果を招くことになります。

信頼の積み重ねが重要

相談窓口を設置したらすぐ相談がどんどん来る、ということはなかなか少ないのではないでしょうか。最初は皆さん様子を見られると思います。仕事でも、友人関係においても、最初から相手を信頼・信用する人は少ないのではないでしょうか。「会社が設置した相談窓口ですよ、さぁ皆さん安心して相談してくださいね」、と周知してもいまいち説得力が足りません。1つ1つの相談に対して、丁寧に、誠実に、投げ出さずに対応すること。そして、その積み重ねの結果が相談されやすい相談窓口となります。担当される方のご負担もあると思いますが、地道な積み重ねが大切です。

データを活用する

さて、そこまで頑張って相談窓口の利用率をあげていても実際の休職者・退職者が減っていないということはないでしょうか。相談者がそのまま休職や退職となるケースは多くないかもしれませんが、従業員の悩みの背景やストレス要因などは都度の相談ケースから分析していくことは可能です。組織への働きかけをしていかないと、休職や退職は減りません。定性的な情報、定量的な情報、どちらも取得できるのが相談窓口担当者とも思います。ただ相談を受けて個人の悩みの解決に寄り添うだけではなく、日々の相談対応をデータ化し、会社や組織の課題についてアプローチしていくことが相談窓口担当者としての重要な役割とも思います。わかりやすい事例ですと、両立支援があげられます。従業員からの相談の背景に「仕事と育児の両立」があるのであれば、他部門や他職種ではどうなのか、似たような相談は他に何件あるのか、などを調査し、自社にあった両立支援制度の提案に繋げることができます。人事部門は大手になるほど分業化されていると思いますが、分業化されていても実際に悩んでいる従業員の声を共有していくことは企業全体にとって有益であり、重要な横の繋がりではないでしょうか。

まとめ

相談窓口がしっかりと機能していない、利用率が低い等でお悩みの場合はまずは周知内容や方法の見直しをお勧めします。また、相談窓口へのアクセスが悪い場合も利用率に響きますので、従業員の目にとまりやすいところに情報を掲載できているか、も重要です。

相談窓口の利用率はあがっているのに休職や退職が減っていない場合は、改めてこれまでの相談件数・内容をデータでまとめ分析してみましょう。個人へのアプローチと組織へのアプローチ、両方に相談窓口の存在は大きいです。ぜひ、相談窓口担当者の方は粘り強く取り組んで頂ければと思います。