ビジネスにおける物流2024年問題の影響と対策とは?

昨今のEC業界の拡大に伴い、物流の需要も増加しています。

「物流2024年問題」という言葉は、すでに多くのメディアに取り上げられており、耳にしたことがあると思のではないでしょうか。

今回は、「物流2024年問題」が、ビジネスにおいてどのような影響をもたらし、どのような対策ができるのかを説明します。

物流2024年問題とは?

2024年4月より、働き方改革関連法にもとづいて、配送ドライバーを対象に労働時間の上限が改正されました。

これにより、長時間労働が課題とされていた物流業界でも健康経営の実践が期待できます。

▼改正前と後の労働時間

2024年3月まで:原則3,516時間/年

2024年4月から:原則3,300時間(※労使協定の締結で、年間3,400時間までに延長可)

しかしこの改正により、1人あたりの働ける時間が16時間短縮され、配送できる荷物の量も減少し、さまざまな問題を引き起こし、今まで通りの配送ができなくなってしまいます。

こうした問題のことを「物流2024年問題」といいます。

労働時間の上限による問題とは?

配送ドライバーの労働時間が短縮されることで生じる問題は、大きく分けて2つございます。

それぞれの問題を詳しく解説していきます。

1.配送ドライバー不足

労働時間が短縮されるとその分の配送できる荷物量が減少するため、今まで通りの配送を行うには、新たな配送ドライバーの雇用が必要になります。

一見、労働時間の減少は労働環境の向上であり、新たな雇用へのハードルが下がったように思えますが、実際は新たな雇用どころか既存の配送ドライバーも減少すると予測されています。

なぜ既存の配送ドライバー数が減ってしまうのかというと、そもそも物流業界において配送ドライバーの高齢化は以前より課題とされており、実際に過去20年間で20万人以上の減少が記録されています。

それに加え、2024年4月から労働時間が短縮された分の減給が予想されるため、約3割程度の配送ドライバーは別の業界への転職を考えているともいわれています。

つまりは、もともとのドライバー不足の課題に加えて、更に深刻な問題へと発展していると言えるしょう。

2.物流コストの高騰による商品価格の高騰

運送会社は、ドライバーの確保のため、荷主企業に運賃の引き上げを行う可能性が高く、物流コストは今後高騰していくと考えられます。

物流コストは、商品の販売価格にも大きく影響します。

商品を生産するための部品や材料の配送料が高騰することで、商品にも反映せざるを得ない状況になることも可能性も考えられます。

物流2024年問題は、配送方法のダイバーシティ化で対策

現在主流とされる多重階層構造による配送網についてご説明いたします。

荷主が、宅配会社や大手軽貨物配送事業者に配送の発注をすると、下請け配送会社によって、バケツリレーのように複雑に荷物が運ばれていきます。

多重階層構造による配送網は、下請け配送会社への支払いを伴うため、物流コストは高く、多くのリソースを必要とするため、現在物流業界全体で改善へ向けた取り組みをおこなっています。

特にラストワンマイルにおける配送方法のダイバーシティ化へ取り組むことで、人手不足やCO2の排出量の削減へ大きな効果が期待できます。

1.多様なラストワンマイル配送手段

現在一般的なラストワンマイル配送は、軽貨物自動車やバイクでおこないますが、配送距離が短い都心の地域では、自転車や徒歩での配送も取り入れられています。

自転車や徒歩による配送方法であれば運転免許証を取得していない層を積極的に雇用することができるため、今後は更に増加していくと予測できます。

それとは逆に、利用客が減少傾向にある地域の路線バスでは、既存のバスを活用した貨客混載のプロジェクトなどを進めています。

こうした既存リソースを活用したラストワンマイル配送は、時代に合わせて古くなったリソースに新しい価値を創出することができるため、ALL-WINな事業としても評価されています。

また、新しくゼロから準備するのではなく、既にあるものを活用することで、低コストで導入できることから、今後多くの小売企業からも注目されていくでしょう。

2.女性やシニア世代の活躍推進

配送ドライバーといえば、男性が重い荷物を運ぶイメージを持つ方も多いでしょう。

実際に家具や家電の配送は力持ちの男性が担うことが多いです。

しかし、宅配で多く扱われる段ボール100サイズ(3辺合計99 cm)以下、10kg未満であれば、特別力持ちでない女性やシニアでも運ぶことができます。

特に今後注目される雇用ターゲットは、女性やシニア層を中心とする未経験者です。

配達大国である韓国には、「シニア配送」もしくは「地下鉄配送」とよばれる、地下鉄乗車料金が無料の高齢者が地下鉄に乗って荷物を届ける配送サービスがあります。

日本でも就労可能な健康状態のシニアは多く存在しており、こうした配送サービスを構築し、シニア層の雇用を新たに生み出すことで、物流業界の維持及びシニア雇用の需要拡大に繋がるため、今後期待できる事業であると考えられます。

3.配送効率の向上

配送効率をあげることも物流2024年問題の対策の1つです。

配送ドライバーが担当する距離が短ければ、配送先までの往復の距離や時間が短縮でき、短縮した分多くの荷物を積み込むことができ、一人のドライバーが運べる荷物が多くなり、一度で多くの荷物を運ぶことが可能になります。

こうした配送効率の向上もまた、既存リソースを活用することでハードルを下げて実現することができます。

たとえば、商店街のアパレルショップや事務所の空きスペースなどを小さな倉庫として活用することで小さな拠点をたくさん設置し、一人あたりの配送ドライバーの担当配送距離を短縮することができます。

まとめ

物流2024年問題は、物流サービスを活用する様々な企業や一般の消費者の方々にも影響を与えると予想されます。

ドライバーを雇用する物流業界の皆さまに、この記事で紹介した3つの施策を参考にしていただけますと幸いです。

▼ポイント

☑働き方改革関連法に基づいて2024年4月から配送ドライバーの労働時間の上限が変更され、それに伴う人手不足を中心とする問題を「物流2024年問題」と呼ぶ

☑配送ドライバー不足は、配送方法のダイバーシティ化で解消する必要がある

☑自転車や徒歩による配送、既存リソースをラストワンマイル配送に効果的に取り入れる

☑女性やシニア、運転免許証を持たない層を積極的に雇用

☑既存リソースを活用した配送拠点を設けて配送効率をあげる必要がある

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