はじめに
皆さんは「産業医」「産業カウンセラー」という職業の存在をご存知でしょうか?
近年、コロナ禍によるテレワークでメンタルヘルスの重要性が認識されつつあります。
そのため、メンタルヘルスのサポートを専門とする産業医や産業カウンセラーは企業や組織にとって非常に重要な存在となっています。
この記事では、産業医と産業カウンセラーの違いや役割、今後のメンタルヘルスケアの現場に対するかかわり方について解説していきます。
産業医とは?
産業医とは、組織の中において従業員の方が健康且つ快適に業務を行えるよう、専門的な立場から指導やサポートをする医師のことをいいます。国家資格を持っており、心と身体の両面からサポートを行います。
産業医の役割
産業医の職務としては以下のようなことが挙げられます。(参考文献:労働安全衛生規則14条第1項)
①健康診断の実施とその結果に基づく措置
②長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
③ストレスチェックとチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
④作業環境の維持管理
⑤作業管理
⑥上記以外の労働者の健康管理
⑦健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
⑧衛生教育
⑨労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置
従業員の方の現状を把握することで適切な健康管理等を行っていきます。
産業カウンセラーとは?
組織の中で働く従業員の方の相談に乗ったり、職場環境の改善をサポートしたりする人のことをいいます。民間資格を持っており、メンタルヘルスの向上や維持に向けてサポートを行っていきます。
産業カウンセラーの役割
①職場でのストレスや不安から生じるメンタルヘルスの問題に対してのカウンセリング
②ストレスとなる原因を特定し、改善策の提案や解決につながるサポート
③従業員の方のワークライフバランスの援助
④従業員の方へのキャリアアドバイス、また職務に対する適性を引き出すサポート
産業医・カウンセラーの必要性
企業の業績としても従業員の方の適切な健康維持のためにも産業医や産業カウンセラーは非常に重要な役割を担っています。
厚生労働省が発表した令和4年度「過労死等の労災補償状況」によりますと、前年度に比べ、387件増加の3486件になっています。(令和3年度 3099件)
こうした結果から、企業は産業医や産業カウンセラーを選任し、従業員のメンタルヘルスの管理やサポートを行う相談窓口を設置するべきだといえます。
また、コロナ禍でテレワークが長期化した企業やその従業員の方の悩みは増えています。
企業側は相談窓口を導入し、従業員の方が利用することでパフォーマンスが向上し業務の生産性も上がれば双方にとって良い影響があるのではないでしょうか。
(参考文献:厚生労働省より https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33879.html)
産業医・カウンセラーが求められているもの
今もなお少子高齢化やテレワーク、共働き世帯の増加でさまざまな働き方が増えています。
その環境の変化についていけず、うつ病や不安障害などの心の病にかかる人が増えているのが現状です。
産業医・産業カウンセラーは、医学的な知識や専門的なサポートはもちろん、それらの多様性を受け入れ、社会環境の変化に柔軟に対応していけるようサポートしていくことが求められていると感じました。
そして企業側、従業員側の両方から話を傾聴し、合理的に判断することも非常に重要になってくるのではないでしょうか。
今後のメンタルヘルスケアの現場へのかかわり方
産業医や産業カウンセラーのかかわり方はさまざまあり、ストレスチェックは従業員の方の心に寄り添える一つのかかわり方だといえます。
ですが、「面談や診察の内容が周囲に漏れるのではないか」とカウンセリングを受けることに抵抗がある人は少なくないです。
株式会社NTTデータ経営研究所が「働く人のメンタルヘルスとサービス・ギャップの実態調査」を実施した結果、6割〜7割の方が抵抗を感じ相談窓口を利用したことがないという結果もでていることが分かりました。
https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/ncom-survay/210915/
また、産業医や産業カウンセラーが認知されていないという現状もあり、知ってもらうことの必要性があります。
受け身だけではなく、産業医・産業カウンセラー側からも従業員の方にいかに寄り添えるかが非常に大事だと感じます。
さいごに
今後IT技術を駆使し、進展していくことで社会環境も変わっていき、従業員の方の心や身体的な部分でのストレス問題も増加してきます。
そこで、「産業医」や「産業カウンセラー」の存在が重宝されるのではないでしょうか。
産業医や産業カウンセラーを設置している企業はもちろん、現時点で設置義務のない企業(労働者50人未満)のメンタルヘルスの対策も、誠実に取り組む姿勢が求められているといえます。