「隠れ貧血」にご用心!疲れの原因は貯蔵鉄(フェリチン)不足かもしれません

季節の変わり目や忙しい時期になると、「なんだか疲れやすい」「立ちくらみがある」「体が重い」と感じることはありませんか?

その症状、もしかすると貧血のサインかもしれません。

特に女性は「貧血は仕方ない」と思いがちですが、放置すると日常生活に大きな影響を与えることもあります。今回は、貧血の原因や検査、予防や対策についてお話しします。

貧血とはどんな状態?

私たちの血液は肺で酸素を受け取り、赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質がその酸素を全身に運びます。

赤血球やヘモグロビンが不足すると、体の隅々まで十分に酸素が届かなくなり、体は“酸素不足”の状態になります。これが貧血です。

主な原因は5

1. 材料不足(鉄・ビタミン B12・葉酸の不足)

赤血球をつくるには鉄やビタミンが必要です。これが足りないと骨髄で赤血球が十分につくられません。

• 鉄不足による鉄欠乏性貧血(もっとも多い)

• ビタミン不足による巨赤芽球性貧血

特に鉄不足は貧血の約7割を占めます。鉄が不足するとヘモグロビンが作れず、貧血症状が出てきます。

2. 骨髄の異常

血液をつくる工場である骨髄の働きが低下すると、赤血球が作れなくなります。これは再生不良性貧血と呼ばれ、まれですが注意が必要です。

3. 赤血球が壊れてしまう(溶血)

作られた赤血球が通常よりも早く壊れることがあります。薬の副作用や自己免疫の異常、遺伝体質などが原因です。溶血性貧血と呼ばれます。

4. 出血による赤血球の喪失

大きなケガだけでなく、消化管からの少量の出血や月経過多でも、少しずつ赤血球が減っていきます。女性に多い鉄欠乏性貧血の背景には、この慢性的な出血がよくみられます。

5. ホルモンや腎臓の異常

造血に関わるホルモンの働きや腎臓の機能が低下して起こることもあります。

貧血の症状

酸素が足りなくなることで、次のような症状が現れます。

• 疲れやすい

• めまい、立ちくらみ• 動悸、息切れ

• 頭痛

• 顔色が悪いと言われる

• 集中力が落ちる

• 手足の冷え

「ちょっと疲れているだけかな?」と思いやすいですが、繰り返す場合は注意が必要です。

貧血の検査

病院の血液検査では、以下の項目で貧血の有無や種類を判断します。

• ヘモグロビン(Hb) :赤血球に含まれるタンパク質で、酸素を運ぶ役割があります。

男性:13g/dl 未満、女性:12g/dl 未満で貧血の可能性

• ヘマトクリット(Ht) :血液中の赤血球の割合

男性:約41~50%、女性:約35~44%

• 赤血球数(RBC) :血液1マイクロリットル中にある赤血球の数。

男性:435~555 ×10⁶/μL、女性:386~492 ×10⁶/μL

• MCV(平均赤血球容積) :赤血球1個あたりの大きさを示します。小さいと鉄不足、大きいとビタミン B12や葉酸不足を示唆します。

成人男女:83.6~98.2 fL

MCH(平均赤血球ヘモグロビン量) :赤血球1個あたりに含まれるヘモグロビンの量。

成人男女:27.5~33.2 pg

MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度):赤血球の中でヘモグロビンが占める濃さ。

成人男女:31.7~35.3 g/dL

• フェリチン(貯蔵鉄) :体内に蓄えられている鉄の量を示す指標。フェリチンが低いと「隠れ貧血」の可能性も。

成人男性:25~280 ng/mL成人女性:10~120 ng/mL

• 血清鉄(Fe) :血液中を流れている鉄の量。

成人男性・女性:40~188 μg/dL

対策と予防

1. 食事の工夫

• 鉄を多く含む食品を意識する

食品に含まれる鉄は、ヘム鉄と非ヘム鉄に分けられます。ヘム鉄は赤身の肉類、レバー、青背魚(血合いの部分は特に)に多く含まれ、体に吸収しやすい(吸収率15~20%)です。一方非ヘム鉄は卵、貝類、豆類、乳製品、緑黄色野菜、海藻類に多く含まれます(吸収率2~5%)。

ヘム鉄(吸収がよい):赤身肉、レバー、かつお、まぐろ、あさり、しじみ

非ヘム鉄:豆類、緑黄色野菜、海藻、卵、プルーンなど

• ビタミン C を一緒にとると吸収率がアップ

• お茶やコーヒーは食後すぐではなく少し時間をあけて

2. サプリや鉄剤は医師と相談

自己判断で摂りすぎると便秘や胃腸障害を招くことがあります。必ず医師に相談を。

3. 生活習慣の見直し

無理なダイエットを避け、バランスのよい食事と十分な休養を心がけましょう。

4. 原因を調べる

胃腸からの出血や婦人科のトラブルが隠れていることもあるため、症状が続く場合は必ず医療機関で検査を。

まとめ

貧血は「ちょっと疲れているだけ」と見過ごされやすいですが、きちんと原因を探して対応すれば改善できる病気です。

「疲れやすい」「めまいがある」「顔色が悪い」と感じたら、そのままにせず、一度血液検査を受けてみましょう。

体の小さなサインを大切にし、毎日を元気に過ごしていきたいですね。