令和6年能登半島地震が起き、多くのかたが被災し避難生活を送っています。これは今回被災しなかった人々にも「明日起きるかもしれない」ことであり、私たちはいつ避難生活を送ることになるかわかりません。
被災地における避難生活は、長期に及ぶことが多く、健康を守るために様々な工夫が必要となります。今回は、避難生活において可能な限り健康な生活が送ることができるよう、起こりうる健康被害とその対策についてまとめます。(※避難所の状況により実行できない場合もあると思いますが、原則避難所にスタッフがいることを前提としております)
総務人事部の方には、これらの緊急事態においても社員の健康を守るためにこのコラムを活用していただけたらと思います。
感染症
避難所での集団生活は、新型コロナウイルスやインフルエンザ、感染性胃腸炎、結核、食中毒などが流行しやすくなります。特に冬は、気温が低く空気が乾燥しているため、ウイルスが繁殖しやすい環境となってしまいます。感染症を防ぐために、以下の対策をとりましょう。
・こまめな手洗いと手指消毒、マスク着用:マスクがない場合、咳やくしゃみをするときは、ティッシュや腕で口や鼻を覆うようにしましょう。また手を拭くタオルは共有しない方が安全です。
・うがい:食事の前後、歯磨きのできないときに行いましょう。
・食事:可能な限り加熱したものを摂取しましょう。また水は安心して飲める水を、可能な限りきれいなコップを使用して飲むようにしましょう。
・トイレ:感染源となりやすいため、汚してしまったときは、スタッフへ伝えてください。
・居住区域の衛生管理:トイレで汚染された履物を介して感染が広がってしまう可能性があるため、居住区域は土足禁止です。
・怪我の予防:がれきの撤去などを行う場合は、長袖・長ズボン、手袋などで保護し、怪我を防ぎましょう。怪我をしてしまった場合は、土などで汚れた傷を放置してしまうと破傷風に感染する恐れがあります(最悪の場合、死に至ります)。放置せず、必ず手当を受けましょう。
また上記に加えて、発熱や咳、嘔吐、下痢などの症状がある場合は、すぐにスタッフへ報告しましょう。
エコノミークラス症候群
避難所や車中生活では体の動きが制限されるため、足の血流が停滞してしまい、血栓という血の塊ができます。血栓が血管を詰まらせると、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしてしまうことがあります。これが、エコノミークラス症候群です。
エコノミークラス症候群を防ぐために、以下の対策を取りましょう。
・血流停滞を防ぐため、圧迫の強いズボンや靴下、コルセットなどの着用は避けましょう。ただし、心臓方向への血流を改善する「弾性ストッキング」はエコノミークラス症候群を予防できます。
・こまめにつま先を動かしたり、足首を回したり、ふくらはぎのマッサージをするなどの、心臓方向への血流を促しましょう。
・長時間、車のシートに座った状態で眠らないようにしましょう。車中泊の場合は、可能な限り水平な姿勢を取りましょう。
・水分が不足すると血液が固まりやすくなるため、十分な水分補給を心がけましょう。
・足のむくみや痛み、違和感がある場合は、すぐにスタッフへ相談してください。
筋力低下
特に高齢者の場合、身体を動かす機会が減ってしまい、筋力・体力の低下を招き、少しずつ動けなくなります。身の回りのことは可能な限り自分自身で行ったり、作業に参加したりと、積極的に身体を動かすよう意識しましょう。
口腔衛生
避難所や車中生活では、水不足や口腔衛生用品の不足により、口腔内の清掃が十分にできなくなってしまいやすいです。またそれだけでなく、食事の偏りや、水分摂取不足、ストレスなどが原因となって、むし歯や歯周病も発生しやすくなります。特に高齢者の場合、口腔内の衛生状態の悪化は、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなり、危険です。可能な限り歯磨きを行い、難しい場合はうがいをしてください。また、食べる時間を決めるなど、だらだらと頻回に飲食をすることは避けましょう。義歯などに問題がある場合は、スタッフに相談してください。
低体温症
低体温症は、特に高齢者や子どもに起こりやすいとされています。避難所として使用される体育館は床が冷たく、また車中泊の場合エンジンを切ると急激に車内の温度が低下します。そのような環境下では、以下の対策をとることをおすすめします。
・出来る限り厚着をし、帽子やマフラーで顔・首・頭などを保温しましょう。
・栄養・水分補給は体温を上げるために必要であるため、意識して摂取しましょう。
・冷たい床に直接座ることは避け、段ボール素材のベッドの使用、毛布を敷くなどの対策をとりましょう。
・低体温症の症状(身体の震えや動きの鈍化、皮膚の感覚麻痺など)があるときは、毛布などで保温しましょう。また低体温症が進行すると、逆に震えが止まり、意識がもうろうとしてきます。このような状態を防ぐために、子どもや高齢者は注意深く観察しましょう。何か異常が見られた場合は、すぐにスタッフに報告し、迅速に対応する必要があります。
睡眠・休息
普段とは異なる環境・精神状態では、睡眠・休息をとることが難しくなります。しかし、睡眠・休息は、精神面はもちろんのこと、感染症を予防するための免疫力向上にも大きく関係します。可能な限り良質な睡眠をとるための工夫をご紹介します。
・段ボールや布などで人目を遮るようにし、できる限りプライベートな空間を作りましょう。
・耳栓やアイマスクなどを使用して、可能な限り静かで暗い環境を整えましょう。
・横を向いて眠る:硬いところで眠らなければいけない場合、横向きの方が腰への負担が軽くなり、眠りやすくなります。可能であれば、抱き枕のようなもの(毛布を丸めたものなど)を抱えて眠ると、更に楽な姿勢になります。
・就寝前に身体を拭いて着替えたり、足湯ができると寝つきが良くなります。
持病のある場合
避難生活はストレスが大きく、持病が悪化しやすくなります。治療の継続が必要な疾患がある場合は、必ず医師の診察や治療の継続ができるよう、スタッフに相談をしましょう。また、ぜんそくやアレルギーのある場合、ほこりやペットの毛、たばこ、特定の食べ物など発作の原因となりうるものから離れることが大切です。必要な場合はスタッフに相談し、環境調整に介入してもらいましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
避難生活で起こりうる健康被害についてまとめました。被災された皆様が、少しでも健康に避難生活を送ることができますと幸いです。
参考
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