職務特性モデルを活かした人材育成

人材育成の難しさ

企業は成果を上げることを目標としていますが、従業員を育成することもその目標達成のために必要なことです。育成といっても、単に作業の方法を教えることに限りません。ビジネスマナーをはじめ、仕事への取り組む姿勢や会社のルール、モチベーションを上げることも育成の一環と捉える必要があるでしょう。教えることは山ほどあります。マネジメントやリーダーシップも教えていかなければなりません。育成する人を育成する必要もあります。

そして近年は時代の変化もあり、通り一遍等の教育をすればいいわけではなく、多様な人材に対して丁寧なサポートが必要です。考え方や気持ちに対しても整えていく手伝いを会社が担う必要のある時代となってきています。人材不足の深刻さが増す今日この頃において、上手に人材を育成することを効率的にやってのけることは、企業として生き残っていくためにとても重要なことでしょう。

職務特性モデルとは?

ハーバード大学組織心理学者のリチャード・ハックマン氏とテュレーン大学経営学者のレッグ・オールダム氏は、仕事の特性が人の「やる気」に関連すると考え、職務特性モデルを理論化しました。職務特性理論とは、「核心的な職務特性を有する職務に従事する人たちは、心理状態に良い変化が現れ、結果的にモチベーションが上がる。ただし、程度には個人差がある」というものです。つまり、人はおもしろい仕事をするとモチベーションが上がり生き生きと働けるということです。これはどうやったら人のモチベーションは上がるのか、ということを示しており、人材を育成していく上で大きなポイントとなる理論です。

もう少し具体的に見ていきましょう。

「核心的な仕事特性」とはどんなものなのでしょうか?

  • 技能多様性(Skill variety)
    複数のスキルを活かせる仕事であること。つまり、単純作業ではなく自分の持つ多様な能力を発揮できる仕事であること。

  • タスク完結性(Task identity)
    かかわる仕事の全体像を理解でき、始めから終わりまでかかわることができること。

  • タスク重要性(Task significance)
    かかわっている仕事を重要だと思えること。他者の生活や社会に影響力のある仕事だと思えること。

  • 自立性(Autonomy)
    裁量権を持って自律的に仕事を進められること。

  • フィードバック(Feedback)

自分が取り組んだ仕事の成果を確認できること。これは上司からだけではなく、お客様や同僚などからの反応も大事です。

この5つが満たされると、重要な心理状態である「仕事の有意味感」と「仕事への責任感」と「結果に関する知識」が整います。これらはすべて人のモチベーションを上げるのに大いに役立つということになります。

モチベーションが高いと何がいい?

根本的に人が持つ欲求として、自分と自分の少しばかりの周りの人たちをコントロールしたいというものがあります。職務特性モデルはこの欲求にも関連しているように思えます。仕事に対してもたとえ自分の仕事がチームのパーツとしての役割を担っているとしても、全体像が見えていて裁量権を持ち、自分の持つ能力を最大限に発揮できて、仕事の結果がいくつもの立場の人たちから届き、それが人々の生活や未来に役立っているとなれば、自然とモチベーションも上がり、自己効力感を高く感じることでしょう。

さて、モチベーションを高く持つと何がいいのでしょうか?

一人当たりの生産性が上がるでしょうし、会社と仕事への執着心も増すでしょう。それによって離職率は下がるでしょう。ワーク・エンゲージメント(熱意・没頭・活力)も向上しメンタルヘルスにも貢献することになり、こころが折れにくい従業員たちが生き生きと働く現場になっていくことでしょう。また多少の不満感を感じるようなことがあったとしても、モチベーションが高いと常に目標の方に視点を向けているために、日々のちょっとしたことは気になりにくいことでしょう。つまり人間関係などの問題が起きにくいと言えます。控えめに言って、良いこと尽くしのようです。

職務特性モデルの育成への活かし方

職務特性モデルから学び、育成へのポイントを考えてみると見えてくるものがあります。例えば、新人だからといって簡単な単純作業だけをやらせるとか、判断は上司がしているから黙って与えられた仕事だけをこなせばいい、などということは育成において大いに問題があるやり方だと言えるでしょう。権限を渡さないのもよくありません。上司にしてみればまだまだ育っていない部下に任せてしまうことは不安に感じるかもしれませんが、部下を信じて任せる力はマネジメント能力でもあり、整えていく必要があります。評価も上司からだけではなくて、同僚やお客様、取引先の方からも言葉をもらうことは大切なことです。たとえ直接受け取れなくても、伝えてあげることは必要です。5つのモデルをしっかりと活用していると、自ずと人は育っていくでしょう。

ポイントをまとめてみましょう。

  • 仕事の意図を説明する 全体像把握のために必要です。この仕事が何に役立っているのかなどもきちんと伝えていく。
  • ある程度の裁量権を渡す 自分で自由に考えて工夫し決断し動けるようにすること。責任を渡すこと。
  • 作業は簡単すぎず難しすぎず 難しすぎてできないようだと当然気持ちが下がります。しかし簡単すぎることもよくありません。部下の技量をよく観察して、少し背伸びしないと届かないことを任せていきましょう。
  • 仕事の成果を感じれるようにする 直属の上司からだけでなく、周りからの声も届くようにします。自分で考えて力を尽くした仕事の結果を知ることは、モチベーションアップに重要な役割を果たします。

おわりに

職務特性モデルを考えていると山本五十六氏の言葉を思い出します。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、

褒めてやらねば、人は動かじ

話し合い、耳を傾け、承認し、

任せてやらねば、人は育たず

やっている姿を感謝で見守って、

信頼せねば、人は実らず」

人材育成はたいへんで難しいものです。それを踏まえて取り組んでいくことが重要です。職務特性モデルをうまく活用して、人材育成に役立てていきましょう!