2025年「くるみん」認定企業が実際に取り組んでいる”不妊治療支援”とは?

目次

はじめに

みなさん、「くるみん」や「くるみんプラス」という制度はご存じでしょうか。

近年、働きながら不妊治療を行う人が増え、治療と仕事の両立は大きな社会課題となっています。治療のために休暇や早退が必要になるにも関わらず、制度が未整備であることにより、キャリアを諦めざるを得ないケースも少なくありません。こうした状況を受け、くるみん認定制度にも不妊治療支援の観点を組み込むなど、サポートの仕組みが大きく変わり始めています。本コラムでは、「くるみん」の概要と「くるみんプラス」認定企業の実例を紹介します。

くるみん認定とは

まず、「くるみん認定」について解説します。

「くるみん認定」は、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づき、企業が「一般事業主行動計画」を策定・届出し、従業員の子育てと仕事の両立支援に関する一定の目標・取組を実施し、かつその目標を達成した場合に、厚生労働大臣から「子育てサポート企業」として認定を受ける制度です。 

この認定を受けた企業は「くるみんマーク」を使用でき、採用・広報などにおいて、子育て支援に積極的な企業であることをアピールできます。 

くるみん認定と不妊治療支援の関係

不妊治療を受ける労働者は増加傾向にあると考えられますが、不妊治療と仕事との両立が できずに離職されている労働者がいることから不妊治療と仕事の両立は大きな社会課題として注目されるようになりました。

「くるみん認定」は子育てしながら働きやすい企業を認定する制度として始まりましたが、2023年に、新たに「くるみんプラス」「プラチナくるみんプラス」という上位制度が誕生し、この制度から、不妊治療と仕事の両立支援が初めて“必須要件”として明確化されました。

くるみんプラスに認定されるには

認定を受けるためには、くるみん等の認定基準を満たした上で、以下4項目のプラス認定基準を全て満たす必要があります。

①次の(1)及び(2)の制度を設けていること。
(1)不妊治療のための休暇制度(不妊治療を含む多様な目的で利用することができる休暇制度や利用目的を限定しない休暇制度を含み、年次有給休暇は含まない。)

 (2)不妊治療のために利用することができる、半日単位・時間単位の年次有給休暇、所 定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、在宅勤務等のうちいずれかの制度

②不妊治療と仕事との両立に関する方針を示し、講じている措置の内容とともに社内に周知 していること。

③不妊治療と仕事との両立に関する研修その他の不妊治療と仕事との両立に関する労働者の 理解を促進するための取組を実施していること。

④不妊治療を受ける労働者からの不妊治療と仕事との両立に関する相談に応じる担当者(両 立支援担当者)を選任し、社内に周知していること。

2025年「くるみんプラス」認定企業の取り組み紹介

では、くるみんプラスに認定されている企業の取り組みを見ていきましょう。

(認定月順)

両備ホールディングス株式会社

2025年4月「くるみんプラス」認定

取り組み

〈不妊治療のための休暇制度・短時間勤務制度を新規導入〉

ヘルスサポートプランとして、不妊治療を含む傷病の治療の支援を目的とした休暇制度・短時間勤務制度を新規導入。不妊治療の場合は全労働者を制度対象者とし、制度内容について社内周知を実施。

〈不妊治療の内容や職場での配慮のポイントについて、社内制度の研修会を実施〉

全社員を対象とし、「不妊治療と仕事の両立」にポイントを置いた研修会を開催。

不妊治療についての理解を深めるほか、利用できる社内制度や配慮事項について認識することを目的として実施。

トヨタテクニカルディベロップメント株式会社

2025年4月「くるみんプラス」認定

取り組み

<不妊治療と仕事の両立支援>

不妊治療に利用できる特別有給休暇「ケア休暇」の導入や、全従業員を対象にした e-Learningによる理解促進 などを実施

株式会社 鳥取銀行

2025年4月「くるみんプラス」認定

取り組み

〈休暇制度の新設 〉

不妊治療を含む多様な目的で利用することができる休暇制度「ウエルネス休暇」を新設

(年次有給休暇とは別に1日/月、年間12日取得可能)

〈研修の実施〉

全役職員を対象とした「不妊治療と仕事との両立」に関する研修を実施

〈相談窓口の設置〉
窓口の設置と相談担当者の選任

株式会社 中原建設

2025年6月「くるみんプラス」認定

取り組み

<不妊治療のために利用できる制度の整備状況>

①休暇制度

休業開始日の属する事業年度を含む引き続く5事業年度の期間において、 最長 1 年間まで休業を取得することができる制度を整備。

②両立支援制度

 所定労働時間を 5 時間とする短時間勤務制度を整備。

 <不妊治療と仕事の両立に関する周知等>

・不妊治療と仕事の両立支援について、全社員に向けて社長からメッセージを 発信するとともに、社内制度や相談窓口を周知。

 ・従業員が制度について十分に理解ができるよう、全社員向けに不妊治療と仕事の 両立支援制度にかかる研修を実施。

日鉄ソリューションズ株式会社

2025年10月「プラチナくるみんプラス」認定

取り組み

〈不妊治療と仕事との両立をしやすい職場環境整備〉


不妊治療に使用できる休暇制度の整備(福祉休暇)
既存制度の不妊治療への適用と周知(半日年休、フレックスタイム、在宅勤務)
社内イントラに当事者向け支援、理解醸成のための特設ページを開設

シスメックス株式会社

2025年10月「プラチナくるみんプラス」認定

取り組み

全社員を対象に「スマートワーク制度」を導入。
業務内容や生活スタイルに応じて働く場所や時間を選択できるハイブリッドワークスタイルを採用。

フレックスタイム、時差出勤、中抜けなどを組み合わせることで、柔軟な働き方を実現し、ワークライフバランスの実現を推進している。

さらに、不妊治療費用の補助、不妊治療やつわりに対応した「めばえ休暇」など独自の制度が充実。

課題と今後の展望

不妊治療と仕事の両立支援は制度整備が進みつつありますが、制度が整っていても「使いにくい」という課題もあります。治療に伴う通院やスケジュール変更を周囲に言い出しにくい雰囲気があると、制度があっても利用が進まず、不妊治療と仕事の両立が困難になってしまします。また、上司や同僚の理解不足により、従業員が孤立感を抱えながら治療と仕事を両立しなければならないケースもあるでしょう。

不妊治療は治療内容や期間が人によって大きく異なるため、一律の制度では対応しきれない場面も想定されます。柔軟な働き方の適用範囲拡大や、当事者の状況に合わせた個別対応が必要です。

不妊治療と仕事の両立支援を進めることは、多様な働き方を尊重し、結果的に従業員の定着、企業価値の向上にもつながっていきます。今後、企業の取り組みが広がっていくことに期待したいですね。

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くるみん認定」「くるみんプラス認定」取得に向けた取り組みをご相談いただけます。
不妊治療と仕事の両立支援や育児支援制度の整備をはじめ、認定取得を後押しする多様なサポートをご提供します。

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あなたの会社は、くるみん取得に向けてどの段階にありますか?
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関連資料とあわせて、制度設計や支援施策のヒントが得られます。

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くるみんチェックシートのダウンロードは無料。
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この記事を書いた人

「助産師は女性のライフステージに携わり続ける仕事」という助産学講師の言葉を胸に、助産師・保育園看護師として妊娠・出産・育児に関わるサポートを行ってまいりました。保育園では乳幼児の健康管理に加え、働くお母さま方との交流を通じて、仕事と育児の両立に伴う悩みや育児不安に寄り添うことの大切さを実感しました。
専門職として妊娠・出産・育児に関する正確な情報をお伝えするとともに、二児の母としてのリアルな視点を踏まえながら、ライフステージの各段階に寄り添うサポーターでありたいと考えております。