黄砂とPM2.5の違いとは?その影響と最新の予防策




まだまだ寒い日が続きますが、暦の上では春となりました。毎年この時期になると、特に九州地方で車のフロントガラスに黄砂が積もっていたり、洗濯物が黄色く染まってしまう様子が報道されることが多いと思います。近年、黄砂は環境への影響だけでなく、目や鼻、皮膚、呼吸器や循環器疾患を引き起こすリスクが高まることが報告されています。そこで今回は、黄砂による健康被害を防ぐための予防と対策についてお話しします。

黄砂とは

黄砂は、ユーラシア大陸内陸部、主にタクラマカン砂漠(中国)やゴビ砂漠(中国とモンゴルにまたがる)などの乾燥・半乾燥地域で強風によって巻き上げられた土や鉱物の粒子が偏西風にのって中国・韓国・日本などに飛来し、大気中に浮遊あるいは降下する現象です。

黄砂はほぼ年間を通して観測されますが、特に毎年2~5月の春先に多く飛来し、4月頃にピークを迎えます。これは中国の砂漠地帯の積雪や凍土が溶け、黄砂が風に巻き上げられやすくなるためです。その後、6月頃には中国大陸の発生源地域に雨が降るため、黄砂は徐々に収まってきます。以前は黄砂は自然現象の一種と思われていましたが、近年では家畜の過放牧や農地転換などによる土地の劣化との関連性も指摘されています。

黄砂は発生源地域に近いほどその被害がひどく、人や家畜への被害、道路・線路といった社会インフラへのダメージ、また農作物への被害も重大です。黄砂によって視界が悪くなり、航空機の欠航や道路交通が麻痺するなどの被害や、精密機器工場へ入り込んだ黄砂の粒子が製品不良を引き起こすこともあります。日本はアジアの国の中では黄砂発生地帯から離れており多くの場合、日本に飛来するまでに黄砂の濃度は低くなり、日本では自動車や 洗濯物の汚れに対する注意喚起にとどまることがほとんどですが、ごくまれに高い濃度のまま黄砂が飛来する事もあります。また低濃度であっても黄砂が人の健康へ与える影響はあるといわれており、現在日本や台湾、韓国などで黄砂と健康被害に関する数多くの調査・研究が進められています。

黄砂の健康への影響

1)目、鼻、皮膚への影響と対策

黄砂の飛来により眼、鼻、皮膚などのアレルギー症状を起こす事があります。目のかゆみ、結膜炎、鼻水やくしゃみなどの症状がみられ、それは黄砂の濃度が高い日ほどそれらの症状を発症する方が多くなるとの報告があります。 黄砂飛来時に屋外にいる時間が長いほど症状が出やすいため、黄砂が飛来する日には不必要な外出を減らすように心がけましょう。またどうしても外出される際にはマスクや眼鏡を着用するようにしましょう。マスクは一般用マスクでも黄砂に対するある程度の吸入予防効果が期待できます。 マスクを着用する場合には自分の顔に合った形やサイズのものを選び、空気が漏れないように顔に密着させて着用しましょう。黄砂飛来中に外出された際は帰宅後によく手を洗い、着ていた服はすぐに洗濯するようにしましょう。布団や洋服はこまめに洗濯し、黄砂飛来中には外に干すのは控えましょう。

2) 呼吸器への影響と対策

黄砂は、気管支喘息や気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患とも関連しており、飛来後喘息の方は発作を起こしたり、薬の効果が低下してしまったり、病状が悪化する可能性があると言われています。特に小児や高齢者の方々への影響が大きいため注意が必要です。もともと呼吸器の疾患がある方のみならず、既往のない方も黄砂の濃度が高いほど咳が出ることが報告されています。 さらに、肺炎での入院の増加や死亡との関連も報告されているため、できるだけ黄砂を避けるようにしましょう。

黄砂やPM2.5が多い日は、窓の開閉や換気は必要最小限にして、外気の侵入を少なくしましょう。また換気扇や空気清浄機を使って室内の空気をきれいに保つ事も有効です。

3)心臓・血管系への影響

黄砂は循環器疾患にも関連があると言われています。 黄砂が飛来すると1~2日以内に心筋梗塞や脳卒中で救急搬送される人が増える傾向があり、また植込み型除細動器を入れた方については不整脈を起こす可能性があるともいわれています。ただし心筋梗塞を発症する過程において、黄砂がどのように関わっているのかは今のところはっきりとは分かっていません。 高齢者や糖尿病、慢性腎臓病等の既往歴がある方は、循環器疾患を発症するリスクが高いとされているため更に注意が必要です。

黄砂とPM2.5

PM2.5とは、”Particouldete Matter”(粒子状物質)の略で、「PM2.5」は、大気に浮遊する2.5μm以下の粒子状物質の総称です。大気中に浮遊している直径が2.5μm(1μm=0.001mm)以下の非常に小さな粒子のことを言います。ボイラーや焼却炉などから発する煤煙、コークス炉や鉱物堆積場などから発する粉塵など、または火力発電所や工場から排出される硫黄酸化物や窒素化合物、溶剤や塗料の使用や森林などからも発生する揮発性有機化合物が、大気中で光やオゾンと化学反応することでも生成されます。黄砂も大きさが2.5マイクロメートル以下であればPM2.5に含まれるため、黄砂が飛来すると PM2.5 濃度も上昇します。PM2.5 は、注意喚起のための暫定的な 指針が定められており、PM2.5 の高濃度汚染時(環境省暫定指針:日平均値 70 μg/m3 以上)の対応を行うことで、黄砂による健康影響の予防にもつながります。

黄砂の飛来情報をチェックする事のできるウェブサイトもありますので、気象情報とあわせてこまめにチェックしてみてください。

気象庁による黄砂情報黄にて黄砂に関する実況図と予測図がチェックできます。

気象庁 | 黄砂情報

環境省による黄砂の飛来状況にてレーザー光線を利用した観測装置で、地上から上空の黄砂飛来量を測定したデータを確認できます。

黄砂~環境省黄砂飛来情報(ライダー黄砂観測データ提供ページ)

 ・環境省によるそらまめくんというサイトにてPM2.5を含む大気汚染物質濃度など、全国の大気汚染状況についてのリアルタイムデータを確認できます。

環境省大気汚染物質広域監視システム(そらまめくん) | ホーム

まとめ

黄砂が引き起こす健康への影響はまだ解明されていないことも多くありますが、アレルギーや呼吸器、心臓疾患を持っている方、また小児や高齢者は特に注意が必要です。黄砂を避けるために、外出を控える、マスクを着用する、室内の空気を清潔に保つなどの対策を取ることが重要です。

【参考】

環境省 黄砂ってなに? https://www.env.go.jp/air/kousa/dss_01.html