
少子高齢化が深刻化しているということが言われ続けてどれほどの時間が経ったでしょう。さまざまな施策を試みても、出生数がなかなか増えていかないという我が国の現状は大変厳しいものだと言われています。
こども家庭庁においてプレコンセプションケア推進5か年計画~性と健康に関する正しい知識の普及と相談支援の充実に向けて~(令和7年5月 22 日プレコンセプションケアの提供のあり方に関する検討会)が提唱されました。その中ではプレコンセプションケアの啓発と相談窓口の拡充が5年以内の目標として書かれています。
このコラムでは、地方行政が取り組むプレコンセプションケアの実例について紹介します。「産み育てることもアリかも」「もう一人いても良いかも」そんなふうに思ってもらえるようなプレコンセプションケアを行政で取り組みが新しい社会へつながるのではないでしょうか。
自治体におけるプレコンセプションケアの目的
自治体におけるプレコンセプションケアの主な目的について考えてみるとこれらの3点が挙げられます。
1.若い世代の健康増進と質の高い生活の実現
妊娠を希望するかどうかにかかわらず、思春期以降の若い世代の男女が、自身の健康に意識を向け、より良い生活習慣を身につけることを目指します。これにより、現在の健康状態を向上させ、長期的な視点でより質の高い人生を送ることを支援します。
2.将来の健康の確保
プレコンセプションケアを通じて、若い世代の男女が将来的にさらに健康になることを目指します。例えば、性感染症の予防、生活習慣病の早期発見・早期治療、適切な体重の維持などが含まれます。
3.健全な妊娠・出産の機会の増加と次世代の健康の向上
上記2つの目的が達成されることで、将来的に健全な妊娠・出産のチャンスを増やし、生まれてくる子どもたちがより健康になることを目指します。具体的には、妊娠前の健康状態を整えることで、妊娠中の合併症や不妊のリスクを減らし、低出生体重児などのリスクを低減することなどが挙げられます。
これらの目的を達成するために、自治体は医療、保健、教育、福祉などの幅広い分野と連携し、正しい知識の普及、健康管理の促進、相談支援体制の整備などを行なっていく必要があります。
また、健康診断やがん検診の受診促進、感染症予防、生活習慣の見直しなどを通じて、市民の健康リテラシー向上が基盤になってきます。
自治体におけるプレコンセプションケア実例5自治体
自治体が住民向けに実施しているプレコンセプションケアの取り組みについて、5自治体の事例をまとめました。
山梨県主催山梨大学学生向け
山梨大学の学生を対象に、プレコンセプションケアに関する情報提供やセミナーを実施しました 。この取り組みは、特に若い世代が将来の妊娠・出産を見据えた自身の健康管理について意識を高めることを目的としています。具体的な内容としては、男女の健康リテラシーの向上や、妊娠前から健康的な体づくりを始めることの重要性などをつたました。
福島県イベントにプレコンでブース出店
福島県で開催されたイベントにおいて、プレコンセプションケアをテーマとした特設ブースを出展しました 。このブースでは、イベント来場者に対して、プレコンセプションケアの概念や、具体的なライフスタイルの改善、リスクの回避など、実践的な情報を提供しました。これにより、地域住民のプレコンセプションケアへの理解促進と啓発を図りました。
奈良関係者向けプレコンセミナー
奈良県内の医療従事者、教育関係者、行政担当者など、多岐にわたる関係者を対象に、プレコンセプションケアに関するセミナーを開催しました 。このセミナーは、各関係者がそれぞれの専門分野や立場でプレコンセプションケアを推進できるよう、最新の知識や実践的なアプローチを提供することを目的としていました。これにより、地域全体でプレコンセプションケアを推進する体制の強化が期待されます。
愛知県みよし市プレコンセミナー
愛知県みよし市で、市民向けのプレコンセプションケアに関するセミナーが開催されました 。このセミナーでは、地域住民が自身の健康状態やライフプランについて主体的に考えるきっかけを提供し、妊娠を希望するしないにかかわらず、すべての年代の男女が対象となるプレコンセプションケアへの理解を深めることを意図していました。
鳥取県版プレコンチェックシート開発
鳥取県向けに特化したプレコンセプションケアのチェックシートを開発し、その提供を開始しました 。このチェックシートは、鳥取県民の具体的な生活習慣、健康課題、地域特性などを考慮した内容となっており、個人が自身の現状を把握し、具体的な行動変容を促すためのツールとして活用されることを目指しています。
支援者向けの取り組み
自治体向けプレコン勉強会
全国の自治体職員を対象に、プレコンセプションケアの推進や導入に関する勉強会を開催しました 。この勉強会では、自治体が地域住民に対してプレコンセプションケアを効果的に推進するための政策立案、具体的な事業展開、住民へのアプローチ方法など、実践的な知識やノウハウが提供されました。これにより、各自治体でのプレコンセプションケアの取り組みを具体化・加速させることを目的としています。
自治体におけるプレコンセプションケアの実施内容
自治体におけるプレコンセプションけあの実施内容は以下のものが挙げられます。
・セミナー、ワークショップ(住民向け)
・セミナー、ワークショップ(公立大学にて大学生向け)
・動画
・自治体版オリジナルプレコンチェックシート開発
・プレコンタペストリー作成
・プレコンイベント運営
・オンライン相談
・支援者向け勉強会
など
いかがでしょうか。
プレコンセプションケアは地域や時代によって揺れ動くものであると言われています。その特性を最大限に活かし、各地域に合ったプレコンセプションケアを実践していくことが望まれます。今回のコラムが皆様の地域のプレコンセプションケアの参考になりましたら幸いです。