タバコを「意志」でやめるのは難しい?ニコチン依存症の仕組みと禁煙外来で成功率を高める方法

「喫煙は健康に悪い」

この言葉は多くの方が知っています。でも、私は臨床の現場で単に悪い!と言うだけでは足りないと思っています。
喫煙が健康にどう影響するのか、なぜやめたくてもやめられないのか、そしてどうすれば禁煙を成功しやすくなるのか、そこまで丁寧に伝えることが大切だと感じています。

私は循環器病棟で働いていますが、心筋梗塞や脳卒中などの患者さんの中に長年喫煙を続けてきた方は少なくありません。また、喫煙は本人だけでなく周りの方にも影響を及ぼします。

どうしたらご自身の、またご家族の健康を守れるのか?

今回は喫煙の健康影響と禁煙支援についてお話させていただきます。

目次

タバコは血管を傷つける

タバコの煙の中には、5,000種類以上もの化学物質が含まれ、その中の70種類以上が発がん性物質であることがわかっています。喫煙は心臓病や脳卒中、慢性肺疾患、糖尿病・腎臓病などさまざまな生活習慣病のリスクを高めます。これは厚生労働省も指摘している事実です。

日本人を対象とした大規模な研究では、喫煙者は非喫煙者に比べて、

  • 心血管疾患で亡くなるリスクが約1.5倍
  • 冠動脈疾患(心筋梗塞など)のリスクが約2倍以上
  • 脳卒中のリスクも有意に高い

このように、喫煙は単なる楽しみではなく、生命にかかわる健康リスクそのものなのです。

また、面白いことに同研究では、禁煙後10年ほどでそのリスクは非喫煙者に近づくことも報告されています。ということは、現在タバコを吸われている方でも、禁煙ができれば先ほどあげたような健康リスクはさがっていくということです。

周囲の人も危険にさらされる(受動喫煙)

タバコの煙は、喫煙者自身だけでなく周囲にいる人にも悪影響を与えます。これを受動喫煙といいます。受動喫煙は、日本の厚生労働省の報告書にも、心疾患や脳血管疾患、がんのリスクを高めると明確に示されています。

受動喫煙は、家族、友人、同僚などにとっても健康の大敵です。「外で吸っているから大丈夫」「換気扇の下だから安心」と思う人もいますが、煙は意外なほど広がり、衣類や髪についた有害物質も周囲に影響を与えることがわかっています。受動喫煙による健康被害は、本人の喫煙と同じように深刻に考える必要があります。

なぜやめられないのか(ニコチン依存という仕組み)

喫煙が体に悪いとわかっていても、なぜやめられないのでしょうか?
それは、タバコに含まれるニコチンには強い依存性があるからです。

ニコチンは脳内に働きかけ、快感を感じさせる物質(ドーパミン)を放出させます。これが「吸うとストレスが減る」「気持ちが落ち着く」と感じる仕組みです。しかしこれは本当のリラックスではなく、ニコチン切れによる不快感を一時的に和らげているだけです。

ニコチンが体から抜けてくると

  • イライラ
  • 不安
  • 集中力低下

といった離脱症状が出てきます。これがまた吸いたくなる原因となり、繰り返し喫煙してしまう負のループが生じるのです。

喫煙で感じる「気持ちよさ」は本物か?

喫煙者に「吸うとどんな気分か」と聞くと、

  • ストレスが減る
  • 落ち着く
  • 休憩の合図になる
  • 仲間とのコミュニケーションになる

といった答えが返ってきます。

確かに、心理的にはこうした役割があるかもしれません。
しかし、生理的には喫煙により心拍数が上がり血圧も上昇し、体はむしろ緊張状態になっています。これが本当の意味での“リラックス”ではなく、ニコチン切れによる不快感を一時的にやわらげている状態と理解することが大切です。

禁煙は一人でがんばらなくていい

禁煙はとても難しい挑戦です。しかし、方法があります。
「気合いでやめる」だけでは成功率は低くなります。日本の複数の医学学会が作成した禁煙ガイドラインでも、行動支援と医療的サポートを組み合わせることが有効であると示されています。

具体的な方法としては、

  • 医師や看護師によるサポート
  • ニコチンパッチやガムなどの補助薬
  • 医療用の禁煙薬
  • 行動療法(吸いたくなる場面への対処法を一緒に考える)

などがあります。

保険で受けられる禁煙外来という選択

そして大切なのは、禁煙は治療できるということです。
日本では、喫煙はニコチン依存症という医学的な病気として扱われており、一定の条件を満たせば健康保険を使った治療が受けられます。

保険適用になる主な条件

  • ニコチン依存症と診断されること
  • 直ちに禁煙を希望すること
  • 1日の喫煙本数 × 喫煙年数(指数)が200以上
  • 治療に同意すること

※前回保険治療を受けてから1年以上あいている必要があります。

治療の流れと方法

禁煙外来は12週間(約3か月)、合計5回の通院が基本です。そこで、

  • 呼気中の一酸化炭素測定
  • 禁煙状況と体調の確認
  • 禁煙補助薬の使用
  • 行動支援(吸いたくなる場面の対処法)

などを行います。

治療費は3割負担で約1万3千円〜約2万円程度が目安で、薬剤や通院回数によって変わります。医療機関で継続的に支援を受けることで、意志だけに頼るよりずっと禁煙成功率が高くなります。

最後に

喫煙は単なる習慣ではなく、体にも心にも深く影響する行動です。循環器疾患だけでなく、呼吸器疾患やがん、受動喫煙による健康被害など、影響は広範です。

でも、禁煙は決して不可能ではありません。科学的根拠に基づく支援と医療の力を借りれば、成功率は確実に上がります。血管は静かに変化していきます。そして、やめることで体は回復に向かい始めます。

今日という日は、これからの人生で一番早いスタートの日です。もし少しでも「やめてみようかな」と思えたなら、その気持ちを大切にしてください。私たち医療者はいつでも味方です。

参考文献・引用文献(日本の学会・公的情報)

  1. 厚生労働省「禁煙して心身の健康を取り戻そう」 – 健康日本21アクション支援システム, 厚生労働省(喫煙の健康影響)
    https://kennet.mhlw.go.jp/slp/event/fctc/teach
  2. Honjo K, et al. The effects of smoking and smoking cessation on mortality from cardiovascular disease among Japanese (2010) – PubMed (喫煙と心血管死亡リスク)
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20008160/
  3. 厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」の概要 – e-ヘルスネット(受動喫煙含む)
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/tobacco/t-09-01.html
  4. 日本医科大学呼吸ケアクリニック「禁煙外来」 – 禁煙外来の保険適用条件(日本医科大学)
    https://rcc.nms.ac.jp/visit/maincare/disease04
  5. 日本肺癌学会「禁煙宣言2024」(肺がんと喫煙の関連)
    https://www.haigan.gr.jp/project/declaration/
  6. 禁煙ガイドライン(合同学会ガイドライン) – 日本肺癌学会ほか(喫煙者を“患者”と位置づける禁煙ガイドライン)

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この記事を書いた人

8年間、循環器専門病院や専門病棟にて循環器内科・外科・集中治療室勤務しておりました。皆様に必要な情報を分かりやすくお届けできるようにしていきたいです。