はじめに
最近、海外のクルーズ船でハンタウイルス感染症の集団発生が報じられ、「新しい感染症なの?」「日本でも流行するの?」と不安に感じた方もいるかもしれません。
ハンタウイルス感染症は、主にウイルスを持つネズミなどのげっ歯類の排泄物に含まれるウイルスを吸い込むことで感染する病気です。
WHOは、ハンタウイルス感染症はまれではあるものの、重症化すると命に関わることがあると説明しています。特に北米・中南米でみられる「ハンタウイルス肺症候群」では、急速に呼吸状態が悪化することがあります。
大切なのは、「怖い感染症」として怯えることではなく、「どのように感染し、どのような場面で注意が必要なのか」を正しく知ることです。
ハンタウイルスとは
ハンタウイルスは、主にネズミなどのげっ歯類が自然に保有しているウイルスです。感染したげっ歯類は目立った症状を示さないことが多い一方で、尿・糞・唾液の中にウイルスを排出することがあります。
人は、これらで汚染された粉じんを吸い込んだり、汚染されたものに触れたりすることで感染することがあります。
ハンタウイルスによる病気は、大きく2つのタイプに分けられます。
ハンタウイルス肺症候群(HPS)
主に北米・中南米で発生します。肺に影響し、重症化すると呼吸不全に至ることがあります。厚生労働省は、ハンタウイルス肺症候群について、致命率が約40〜50%と説明しています
腎症候性出血熱(HFRS)
主にアジアやヨーロッパで発生します。発熱や腎障害が特徴です。主な流行地域は極東アジアと北欧・東欧であり、中国では年間数万例、北欧・東欧では年間数千例の発生があるとされています。
人から人へうつるの?
結論から言うと、ほとんどのハンタウイルスは、基本的に人から人へ感染することはありません。感染の中心は、あくまで「ネズミとの接触」や「排泄物を含む粉じんの吸入」です。
ただし、重要な例外があります。WHOやCDC(米国疾病予防管理センター)は、南米に分布する「アンデスウイルス」については、限られた条件で人から人への感染が報告されていると説明しています。 今回のクルーズ船の事例も、このアンデスウイルスが原因とされています。
とはいえ、インフルエンザや新型コロナウイルスのように、一般の日常生活で広く感染が拡大するタイプとは考えられていません。感染者と接触者を適切に管理することで、感染の広がりは抑えられるとされています。
どんな症状に注意すればよい?
ハンタウイルス肺症候群の潜伏期間は、通常1〜5週間程度、一般的には約2週間とされています。
初期には、発熱、強いだるさ、筋肉痛、頭痛、吐き気、腹痛、下痢などがみられることがあります。その後、咳、息切れ、胸の圧迫感などが現れ、急速に呼吸状態が悪化することがあります。
肺水腫や呼吸不全に進行することがあるため、疑われる場合は早期に医療機関で評価を受けることが重要です。
日本で心配しすぎる必要はある?
現時点で、日本国内でハンタウイルス肺症候群の患者発生は報告されていません。厚生労働省は、ハンタウイルス肺症候群は南北アメリカ大陸に分布する感染症であると説明しています。
また、東京都健康安全研究センターは、今回の事例の原因となったウイルスを保有するげっ歯類は日本国内に生息しておらず、日本国内で本事例の原因となったハンタウイルスに感染する可能性は極めて低いと考えられると説明しています。
一方、アジア型の「腎症候性出血熱」については、日本でも1960〜70年代に発生の報告がありましたが、その後はみられていません。
つまり、現在の日本で普通に生活するうえで、過度に怖がる必要はありません。ただし、南北アメリカやアジア・ヨーロッパの一部地域へ渡航し、山小屋、倉庫、農場、キャンプ場など、ネズミの排泄物に触れる可能性がある場所へ行く場合は注意が必要です。
予防の基本は「ネズミの排泄物」と「粉じん」を避けること
現在、日本国内で承認されたハンタウイルス肺症候群に対するワクチンや特効薬はありません。治療は、呼吸や循環を支える対症療法が中心です。
そのため、「ウイルスを体内に入れないこと」が最大の予防です。
| 予防策 | 具体的なアクション |
| ネズミを寄せ付けない | 食品は密閉容器に入れ、ゴミは適切に処理する |
| 粉じんを吸い込まない | 閉め切った古い小屋や倉庫を、いきなりホウキで掃かない |
| 安全に清掃 | 排泄物を見つけたら、消毒液などで湿らせ、粉じんが舞わないように拭き取る |
| 帰国後の体調に注意 | 流行地域からの帰国後に発熱や息苦しさがあれば、渡航歴を伝えて相談する |
ハンタウイルス感染症のまとめ
| 項目 | 内容 |
| 主な感染源 | ウイルスを保有するネズミなどのげっ歯類 |
| 主な感染経路 | 汚染された粉じんの吸入、排泄物との接触 |
| 人から人への感染 | 原則としてまれ。南米のアンデスウイルスでは例外的に報告あり |
| 主な症状 | 発熱、強い筋肉痛、だるさ、咳、息苦しさ、腹痛など |
| 治療 | 特効薬はなく、早期の呼吸・循環管理などの対症療法が中心 |
| 予防の鍵 | ネズミとの接触回避、粉じんを吸い込まない清掃方法 |
不安が広がる今だからこそ、正しく備える
ハンタウイルスは、重症化すると命に関わることがある感染症です。一方で、感染経路は比較的はっきりしており、一般的な日常生活で人から人へ広がりやすい感染症とは異なります。
大切なのは、むやみに不安になることではなく、「流行地域への渡航歴」「ネズミとの接触」「発熱や息苦しさ」という情報を冷静につなげて考えることです。
もし海外の流行地域でネズミのいる環境にいた後に体調を崩した場合は、早めに医療機関を受診し、「いつ、どこで、どのような環境にいたか」を医師に必ず伝えてください。
正しい知識を持つことが、自分と周囲を守る第一歩になります。
WHO Hantavirus cluster linked to cruise ship travel, Multi-country
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON601
厚生労働省検疫所FORTH ハンタウイルス感染症
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/name35.html
CDC Update on CDC’s Hantavirus Response
https://www.cdc.gov/media/releases/2026/transcript-update-on-cdcs-hantavirus-response.html
国立健康危機管理研究機構 腎症候性出血熱
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