<取材>当事者と周囲とのコミュニケーションで相互理解を促進 安心して働き続けるための環境づくりの工夫とは ー社会福祉法人 福角会
認定取得への取り組みシリーズ

今回は、愛媛県松山市で保育園や児童発達支援センター、障がい者支援施設などを展開する「社会福祉法人 福角会」を取材しました。

保育士や生活支援員、看護師、ヘルパーなどがそれぞれの拠点で働く環境で、仕事と家庭の両立や休暇をとりやすい仕組みづくりの工夫、地域との関わり方について、人事部の長野様、久保様にお話を伺いました。

地域に根ざし職員も利用者も安心安全に暮らせる環境づくりを推進

― まずは事業内容についてお聞かせください

昭和29年の福角保育園の開設依頼、40年以上にわたり障害者支援施設や保育所、児童発達支援センターの運営、各種支援・相談事業など、社会的・福祉的支援を必要とする利用児・者およびその家族へのサービス提供行っています。

「この子らを世の光に」を基本理念として、全ての人たちが地域の中で安全で安心して暮らせる豊かな生活の実現を目指し、地域福祉の拠点として、社会・地域の福祉ニーズに合わせた事業を展開しています。

―地域の中に根付いた事業を展開されていると感じています。社会福祉法人として地域との関わる意味や想いについてお聞かせください

「全ての人たちが地域の中で安全で安心して暮らせる豊かな生活の実現を目指す」という理念のもと、地域で誰もが幸せな生活をおくれるための土壌作りに努めています。そのために福祉事業所として地域に根付いていくことが非常に大事だと考えています。

福角会祭というお祭りの開催や、地域の活動や催事に参加するなど、地域との関わり合いを持つための活動を積極的に行なっています。

福角会祭の様子(令和5年度)
福角会祭の様子(令和5年度)
地域行事参加の様子(青空市)
地域行事参加の様子(青空市)
地域行事参加の様子(納涼祭)
地域行事参加の様子(納涼祭)

育児と家庭との両立を支援 当事者の声の発信で相互理解につながる環境づくり

― 2023年度に「プラチナくるみん」を取得されたと伺っています。認定取得のきっかけや背景、特徴的なお取り組みがあればお聞かせください

以前より職員の子育て支援には力を入れて取り組んでいて、平成26年に子育てサポート企業「くるみん」の認定を受けていました。

さらによりよい制度を整えていこうという中で、せっかくなら「プラチナくるみん」の取得を目指し、インパクトのある行動計画に変えていこうという思いで取得への取り組みを始めました。

当時、愛媛県内でプラチナくるみんを取得している企業・団体は、まだ数社しかなく取得する価値があると考えました。

― 育児と仕事との両立に力を入れて取り組まれる背景としては、やはり女性職員の比率が高いという点も影響しているのでしょうか

そうですね、全体の職員の中で7割が女性となります。平均年齢は46歳で、45〜50歳がボリュームゾーンとなります。

福祉事業という特性上、一定数は施設に配置する職員が必要です。男女ともに継続して働きやすい環境や制度を整えるために行動計画を立てて取り組んでいます。

プラチナくるみんの取得にあたっては、男性育休取得率や有給休暇取得日数の目標数値を立てて取り組みを行いました。

―行動計画の中でも、男性職員の育児休業取得率は目標を大きく上回る結果が出ています。男性の育休取得推進に関しての取り組みについてお聞かせください

女性の多い職場ではありますが、男性の育児参画も重要な指標のひとつとして、ここ2〜3年の間に、男性の育児休業の取得推進について取り組みを進めてきました。

お子さんが生まれる男性職員に対しては、必ず全員に育休取得の声がけをし、事業所内保育所での育児実習にも参加していただきます。また事業所の管理者や幹部職員に向けた研修を行い、男性の育休取得についての意識を変えるための取り組みを行なっています。

取り組みを始めた当初は、対象となる男性職員自身から、「男性が取れると思っていなかった」という反応でしたが、当初は2週間程度の育休期間も今では4週間程度までに伸びてきており、その意識も随分と変化してきました。

―当事者となる人はもちろん、周囲の意識が変わっていくことでより取得しやすい雰囲気になっていきますよね

そうですね。私たち人事からの声がけだけではなく、実際に取得した人の声を周囲の方へ届けることが大事だと考えています。

「男性育休対談会」という、実際に育休を取得した職員と、管理者や一緒に働く職員との対談の場を設けています。育休を取得した当事者の声や、周囲でフォローした職員がお互いの声を聞くことで、理解につながればいいなと思っています。

男性育児休暇取得者と事業所側との対談の様子
男性育児休暇取得者と事業所側との対談の様子

また社内の広報誌の中では、取得体験者の声の他に、その奥様の声を紹介しています。育休をとってくれてうれしかったとか、こういう部分がとても助かったなど、ご家族の声を掲載することで、次に取得する人たちの動機づけになるといいなと思っています。

ほかにも、育児をする職員同士の交流の場「子育て座談会」や男性職員の育児実習など、男性職員が育児に参加するモチベーションを高めるためのきっかけづくりも行なっています。

子育て座談会の様子
子育て座談会の様子
男性の育児実習の様子
男性の育児実習の様子

―ホームページを拝見していて、スタッフの声の中に、「休みを取りやすい」「休みやすいから働きやすい」といったコメントが多く見られますが、お休みを取りやすい環境や制度づくりに力を入れていらっしゃるのでしょうか

行動計画の中に、有給休暇の取得日数に対する目標を定めていて、目標を達成できるよう継続して取り組みを推進しています。法人全体として取り組むことで、スタッフひとりひとりの意識づけにもつながっています。

気軽に相談できる環境を整備、サポートする側への配慮にも注力

―今後の展望をお聞かせください

そうですね。子育てと仕事の両立は定着しつつあり、制度としても機能してきていると感じています。ただ、これから増えるであろう、介護との両立に関しては、まだこれからいろいろと検討をしていかないといけないと思っています。

育児や介護だけではなく、ライフステージの変化により個々のスタッフそれぞれの状況や事情の変化は出てくると思うので、一人で悩んで、退職へと追い込まれないよう、気軽に相談できる環境を整えていく必要があると感じています。

人事部だけではなく、職種や担当が近い職員の中でそういった相談事に対応できる体制が整うと良いと思っています。相談に関わる人たちのスキルを磨いていけるよう、私たちを含め、相談にあたる人たちが研修を受けて、基本的な知識や話の聞き方などを勉強し始めているところです。

あわせて、休職者のフォローに入る職員の方の評価やサポートがすごく重要になってくると思っています。昨今の人材不足の状況の中で、職員を確保することは本当に大変ですが、対応できる体制作りがこれからも課題かなと思っています。

―気軽に相談しやすい環境づくりは大切ですね。当事者と周囲の方が相互に理解し合えるような働きかけや取り組みは素晴らしいなと感じています。本日はありがとうございました!

■会社情報

社会福祉法人 福角会
会社名社会福祉法人 福角会
所在地愛媛県松山市
事業内容児童発達支援センター、障がい者施設の運営
認定こども園・保育所の運営
従業員数373名
公式ページhttps://hukuzumikai.com/