重い物を持った拍子に突然腰が痛くなり動けなくなってしまった。なんていうことを聞いたことはありませんか?ぎっくり腰は医学的な病名ではなく、正式には「急性腰痛症」と呼ばれます。
読んで字の如く何らかのきっかけで急激に発症した腰痛を指し、瞬間的に急激に生じる強い痛みが特徴です。脂汗をかくほどの激痛を伴うこともあり、欧米ではその激しい痛みから「魔女の一撃」とも呼ばれているほどです。
多くは一週間~二週間程度で自然に回復していきますが、なかなか改善が見られず痛みが続いている、または下半身に痛みやしびれと言った症状が出現した場合などは椎間板ヘルニアや圧迫骨折などの可能性もあるので注意が必要です。
なぜぎっくり腰になるの?
ぎっくり腰の原因は、実ははっきりとしたことは未だ分かっていません。よくあるケースとしては、「重い物を持ち上げた時」ですが、「くしゃみをした時」「お辞儀をした時」「ただ立ち上がろうとしただけ」など、 ぎっくり腰が起こる状況は様々です。
これらに共通するのは、中腰の姿勢で行う動作だということです。中腰は椎間板に負担がかかりやすく、腰痛などのトラブルを引き起こしやすい姿勢なのです。
また、椎間板ヘルニアや圧迫骨折などによる痛みをただのぎっくり腰と思って放置したり、整体院などで腰のマッサージなどを受けて悪化してしまうこともありますので、まずは整形外科を受診し、腰痛の原因が何なのかを医師に診てもらうことをお勧めします。
ぎっくり腰になってしまったら
ぎっくり腰になったばかりで痛みが強く出ている時はむやみに動かず、自分が最も楽な姿勢でゆっくりと深呼吸を繰り返し、まずは痛みを落ち着かせましょう。
痛みが強い場合は、コルセットを着けたり、市販の湿布や痛み止めを持っていたら使っていただいて構いません。
病院で「ぎっくり腰」と診断がつけば、湿布薬や飲み薬などの治療薬が処方されます。急性腰痛の治療薬として主に用いられる薬剤は、ロキソプロフェンナトリウムやジクロフェナクナトリウムなどの成分の入った、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)です。注射も有効で、痛みを取り、炎症を抑える薬を注射することで症状が軽くなり、回復が早まることもあります。
温めたり冷やしたりは、より楽になる方を選んでいただければ大丈夫ですが、温めたほうが痛みが楽になる場合は、入浴もおすすめです。無理のない範囲で、温かいお湯にゆっくり浸かって体を温めましょう。入浴には血液の循環の改善、浮力による腰の負担の軽減、自律神経のバランスが整うリラックス効果などがあるため、お風呂に入ると痛みが楽になる人は多いですが、逆に、入浴によって痛みが強くなる場合や、腫れがある、患部が熱をもっている時などは、入浴は避けたほうがよいでしょう。
安静にしすぎもNG
ぎっくり腰は痛みが強いのでついつい横になって休んでしまうことが多いですが、痛いながらも普段通りの生活を心掛けている方が早く治ることがイギリスの医学誌による研究※では報告されています。※ A Malmivaara,et al.N Engl J Med 1995;332(6):351-5.
痛いからといって過度に安静にしていると、逆に症状を長引かせてしまうので、痛くて全く動けないという状況が治まったら、コルセットを外し、なるべく普段通り動くようにしましょう。痛みが落ち着いてきたら、腰の軽いストレッチなどを行うこともおすすめです。
いつもの家事を少しずつやってみたり、職場の理解が得られるなら、重いものを持ったりすることは避けて軽い仕事から復帰してみたり。こういったことを心がけることで、結果的に早く良くなるということが言えるでしょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
ぎっくり腰について正しく理解し行動することで、早く痛みをとることができますので、是非参考にしてみてください。
いずれにしても、ぎっくり腰を何度も繰り返している方や痛みが続いている方は、一度医療機関を受診して原因を探ってもらう方が安心でしょう。
参考文献