製造業における女性活躍推進法

女性活躍推進法とは?

仕事で活躍したいと希望するすべての女性が、個性や能力を存分に発揮できる社会の実現を目指して、2015年8月に成立した法律です。正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」と言います。

女性が、個性や能力を存分に発揮できる社会の実現を目指して、目標の一つとして政府では、管理職に占める女性の割合を「30%」と置きました。

しかし、2020年時点でこの目標に対し未達に終わり、直近の調査においても、目標を達成している企業は近年の調査では最高ではあったものの、10%にも満たず、諸外国と比較しても日本の女性活躍はまだまだこれからと言えます。 (出典:女性登用に対する企業の意識調査(2022年)

どのような企業が女性活躍に対して積極的に取り組んでいるのか?

日本で女性活躍に積極的に取り組んでいる企業にはどのような企業があるのか?企業のホームページ等を調べてみると、リクルート、ソニーなど企業規模が大きい企業が挙がってきました。

これらの企業が発信している取り組み事例、働いている女性の声などの情報をみてみると、主に営業職、現場を支える管理部門などホワイトカラーの方の事例が多く、製造業でイメージする工場のラインで働いている方などブルーカラーの方の事例はあまり見かけません。制度自体の対象とはなるものの、業務の特性上実際に使えないもしくは使いづらいものだからではないでしょうか。

女性活躍に向けたファーストアプローチは?

少子高齢化が進み、労働力人口が大きく不足する日本にとって、女性活躍は取り組みが必要な大きな課題です。1企業で取り組むには限界があり、国を挙げての施策、法の整備が必要であることは言うまでもありません。

国の強力な後押しのもと、企業ではどのような取り組みが必要でしょうか。

まずは、前述した女性活躍を積極的に取り組んでいる企業の事例が非常に参考となります。

まず1つ目としては、

(1)ハードへのアプローチ:働く環境の整備・改善

・法定を超える期間の短時間制度

  育児・介護休業法では、子の年齢が3歳未満となりますが、子どもの育児負担が多い時期を考えると、少なくとも小学校低学年、もしくは小学校修了までの短時間勤務が必要な場合もあるかと考えられます。  

・自身でその日の始業・終業時間を決めることができるフレックス・タイム制度

・在宅勤務制度

上記のように柔軟に働く場所、時間を認める制度の導入が挙がってきます。

しっかりと働く環境を整えても、利用されなければ問題解決には向かいません。制度を利用できるよう、多様な働き方や背景を理解し合わなければ、せっかくの制度も宝の持ち腐れになってしまいます。

最大限活用してもらうため、2つ目も重要です。

(2)ハートへのアプローチ:男女問わず、誰も育児と仕事を両立することができる環境、職場づくりなど意識改革

①アンコンシャスバイアスの解消

アンコンシャスバイアスとは、無言の偏見のことを指します。例えば、母親が子育てをすることが当たり前という社会的な前提などのことです。これらの前提や偏見に基づいて、子育てをする男性や、育児休暇を取得する女性に対して、周囲からの理解が得られなかったり、不当な批判を受けたりすることがあります。こういった偏見を職場で解消することが制度を利用する一歩として必要です。

②女性自身の意識改革、キャリア意識の醸成

女性のリーダーシップ育成やキャリア支援などによる女性自身の意識改革です。   

上記に挙げたものどちらを取り組めばいいか、2つ取り組む場合にはどちらの優先度を高くして取り組んだらよいかということではなく、両方取り組むことが必要となります。

その上で、製造業ならではの特有の課題にも取り組んでいきましょう。

製造業特有の女性活躍にはどんなものが考えられるか?

製造業でイメージする工場の製造ラインの例でいくと、会社に来て働くことが必須となります。

そのため、子どもを生み、一定年齢まで育てるための休職や復職後の短時間勤務、子供が熱を出すなどの体調不良による突発的なお休み、帰宅は、どちらも大きな痛手となります。

子どもを生み、育てるための休職に対しては、期間が長期となることが多いので、他部署からの異動や派遣活用などその期間の代替人材確保。突発的なお休み、帰宅に対しては、その業務の穴埋めができる人材の育成(多能工化)、マニュアルの整備、業務の標準化が考えられます。

多能工化、マニュアルの整備、業務の標準化については、会社に来て働くことができないのは、育児による事由だけではありません。本人の体調不良、両親の介護なども考えられます。

常日頃から取り組むことで、不測の事態にも対応できるようになるだけでなく、各人の対応力向上にもなり、業務の改善などにもつながり、強い職場づくりにも大きく寄与します。

最後に、ここまで挙げてきたことは、実行してすぐ結果が出るというわけではありません。結果をすぐに求めず、実際に働く人の声に耳を傾けながら、地道に取り組んでいくことが必要ですね。