ファミワンカンファレンスにご登壇いただいた企業の人事担当者や経営者へインタビューし、カンファレンス後のお取り組みや風土醸成、従業員との関わり方など、働く環境づくりの工夫や従業員への想いなどを伺いました。
「すべての人が子育てを楽しいと思える社会」を創ることをビジョンに、おむつ定額サービス「手ぶら登園」や保育園をかんたん比較できる「えんさがそっ♪」など、子育ての課題を解決するサービスを提供する大阪発の子育てスタートアップ、「BABYJOB株式会社」を取材しました。
ファミワンカンファレンス2023にもご登壇いただいた、人事総務部 楯野さんに、社内のコミュニケーションの工夫などカルチャーや風土醸成についてお話を伺いました。
ラフなコミュニケーションで、子育てを”壁”と感じさせない文化を醸成
― 昨年(2023年)のカンファレンスでは、社内でのコミュニケーションの工夫や心理的安全性と働きやすさの関係などをお話しいただきました。社内のコミュニケーションを活発にする具体的な取り組みや工夫などがあればお聞かせください。
当社の事業が「子育て」がテーマというところで、家庭とのバランスをとりながらの働きやすさについては、フォーカスして取り組んでいます。現在従業員の55%が子育て中という状況です。
制度の部分でお話しすると、リモートワークとフレックスタイムは浸透していて、多くの従業員が利用しています。子どもの通院やお迎えなど、勤務時間の調整や中抜けなど非常に柔軟に運用していて、子育て中でも自由と裁量をもって仕事できる体制になっています。
勤務時間の変更や中抜けの際は、社内のチャットツールで報告、共有するルールですが、「子供のお迎えのために少し中抜けします」や「子どもの体調不良で午後から勤務します」という連絡が入った際、メンバーから「行ってらっしゃい」とか「お大事に」みたいなリアクションがポンポンポンと入ります。このコミュニケーションのラフさが、制度を気軽に利用できる会社の文化なのかなと思っています。
― そうやって会社全体でいい雰囲気、いい文化があると、安心して利用できますよね。
メンバー同士もそうですが、部門のトップからもいい発信がされています。
先日も、「子どもの体調で休んだり遅れるからといって謝らなくていい」という発信が、CTO(エンジニアの長)からされて、自社ながらとてもいい発信だなぁと思ったところです。
休むとか少し遅れることを謝ってしまうと、同じ状況になった他の人も謝るような文化や風土になってしまうから、勤怠の連絡は、謝罪なしで正確な情報だけ伝えてくたらいいですよ、という主旨の発信でした。
当社は、子育てを”壁”と感じさせない文化があるとあらためて感じました。従業員を信じて任せることで働きやすさにつながっていると思います。
当事者以外でも不公平感や疎外感を感じさせない工夫
― 中には子育てしていない方もいらっしゃると思いますが、不公平感を感じさせないような工夫は何かありますか
すでに実行していることでいうと、社内で「ママパパ会」というものを3ヶ月に1回開催しています。その会では、子育てのことやパートナーとのコミュニケーションなどをテーマに話し合いをするのですが、子育て中の社員はもちろん、子どもがいない人も割と参加してくれています。
参加の目的や理由自体はそれぞれあって、単純に他の従業員とコミュニケーションを取りたい人も、将来的には子育てを考えていて、働き方の工夫など情報収集をしたい人も、フラットに参加できています。このフラットさが、疎外感を感じさせない秘訣かなと思っています。
これから取り組んでいきたいこととしては、将来的に子育てをしたいと思っている「未来のママパパ」への支援を目指して、子育てと自身のキャリア形成を両立できるような仕組みをつくっていきたいと思っています。
具体的にいうと、卵子凍結や不妊治療のための休暇制度や、妊娠中のパートナーがいる男性社員をサポートする制度なども検討中です。
やはり私たちの事業のテーマは「子育て」なので、現在子育て中の方に限らず、未来の子育てを目指すメンバーに向けたサポートを進めていこうと考えています。
― すばらしいです。今後の採用においても、未来へのサポートがあるのは応募の同期にもつながりますし、ビジョンを体現できる取り組みだと思います。
卵子凍結が選択肢になるなんて少し前までまでは考えられなかったですよね。特に私たち女性にとって、産休や育休はどうしてもキャリアの一時中断になってしまうので、そのタイミングを自分の手でコントロールできるようになるなんて、本当に革命的だと思います。会社としてもこの新たな選択肢を活かしていけたらいいなぁと思っています。
企画としてまとまってきて、これからやっと経営に提案する段階ですけどね(笑)
―卵子凍結は企業としても個人としても、みなさんすごく興味のあるテーマだなと感じています。女性がキャリアを諦めないっていうところにつながりますよね。
―今、「子育て世代」と「今はそうじゃない世代」で切り分けてお話いただいたんですけれど、新しくつくった制度や仕組みをどのように社員に周知・浸透されてるのかなと思うんですが、発信の仕方について工夫などあれば教えてください。
全体への周知は、半年に一回全従業員が集まって、振り返りと次期の活動を代表が話す場があるので、そこで行なっています。ただ単に方針を聞くだけでなく、自分たちがどのような会社にしたいか、そのために自分たちは何をするべきか、を考え発信することで全社の目線を合わせるような工夫をしています。
あとは、先ほどの「ママパパ会」はイベントの開催ごとにレポートを書いて公開しています。
参加メンバー全員にアンケートを取って結果を公表したり、実際に話した内容を、匿名ですが読み手がすごくリアルに感じられるような写真と文章で記事にして共有しています。
イベントの参加のハードルも「ドタキャンOK、途中入退室OK」みたいになるべく下げています。
―「なるべくハードル下げていこう」「休んじゃっても全然気にしない」みたいな雰囲気づくりは大事ですよね。
note(https://note.com/note_babyjob/)を使ってレポートを公開していて、それを他のメンバーが、「今日ママパパ会参加して、トイトレ*はそんなに焦らなくていいっていうことがわかって安心した。」 (*子どものトイレトレーニング)みたいな感じでSNSで拡散してくれたりなど、割とフラットな場で社内周知はできているかなとは思っています。
ありがたいことに、イベントも1回目より2回目の方が参加人数が増えて、社内周知がうまくいった結果かなと思っています。みんながおもしろおかしくレポートを書いてくれるおかげですね。
―なるほど。レポート記事で会の雰囲気がわかれば、次は参加してみようかなという動機づけにもなりそうですね。全社的にコミュニケーションをしっかり取っていこうという文化ができているのを感じます。
コミュニケーション活性化の秘訣は、経営層の発信や行動にあり
―実際に会社の中にいる楯野さん自身が、この雰囲気が良い、ここが風通しの良さだったり、コミュニケーションができている一番の理由、として何か感じられる部分ってございますか?
そういう文化にしようというのが、経営層の発言や行動から感じ取れるっていうのはすごく大きいなと思っています。
たとえば社内のチャットツールで「おつかれさまです」や「承知いたしました」などの丁寧すぎる表現は不要とトップが言っていたり、トップ自身が絵文字でリアクションしたりなど、カジュアルでフラットなコミュニケーションでいい、と発信してくれているのは感じます。
あとは良くも悪くもあまり”ノー”と言われない会社です。
この「ママパパ会」実施の提案の際も、その目的さえ説明ができたら、「ああ、いいんじゃない」と同意してくれましたね。会社のビジョンとバリューさえちゃんと体現できていたら、頭ごなしにノーと言われないのでやりがいはあります。
―トップだったり経営層の、さりげないけど積極的な発信や行動って大事ですよね。それがその会社の文化やコミュニケーションにつながって浸透していくと感じるお話しです。
人事の仕事は覚悟を持って最後までやりきること
―最後に楯野さんから人事の担当者へメッセージをお願いします
私もいつも手探りで、制度や仕組みをつくっていますが、特にこの人事の仕事は、答えや結果がすぐ見えない仕事がすごく多いと思っています。
その中でも、一番重要なことは、「ビジョン、ミッション、バリュー」に沿って行動できるかという部分かなと考えています。あと最後は、とにかくやりきる、という自分の覚悟次第という思いで取り組んでいます。今、人事担当としていろいろと新しいことをやろうとしている自分にとって、心に刻み込んで何事も実行に移さないといけないなと思っています。
―楯野さんのお人柄からもBABYJOBの雰囲気や文化がとてもよくわかるような気がします。覚悟を持って、人事のお仕事へ取り組まれていることもすごく伝わってきました。本日はありがとうございました!
■ 会社情報
会社名 | BABY JOB 株式会社 |
所在地 | 大阪市淀川区 |
事業内容 | 子育てサポート事業 |
設立 | 2018年10月1日 |
従業員数 | 役員8名、従業員63名 |
公式ページ | https://baby-job.co.jp/ |