プレコンセプションケアとは?

「プレコンセプションケア」という言葉を聞いたことがありますか? もしかしたら、まだ耳慣れない方もいらっしゃるかもしれません。

「プレコンセプションケア(pre-conceptioncare)」という言葉を直訳すると、

「pre」は「〜の前に」
「conception」は「受胎・妊娠」、
「care」は「ケア」となります。

まとめると、プレコンセプションケアは、将来の妊娠に向けたセルフケアであることがわかります。ですが、果たして本当にそれだけの意味でしょうか。直訳された、妊娠前のケアという言葉以上にプレコンセプションケアの示す内容や役割は広がっています。

なぜ今日本で、プレコンセプションケアが注目されるの?

少子高齢化や晩婚化や晩産化が進む現代において、妊娠・出産に関する健康リスクは多様化しています。また、生活習慣病の増加やうつなどの心理的な要因の増加といった背景も、女性や胎児への影響を考慮する必要がある状況です。

プレコンセプションケアは、これらのリスクを少しでも減らし、子どもを願う人が安心して妊娠出産を迎えられるようにするための、重要な取り組みとして注目されてきています。

プレコンセプションケアの定義とは

プレコンセプションケアはその地域や時代に即したものに変化するべきであり、全ての人が享受できるものでならないと言われています。

今このコラムをお読みになっている皆様が生きる時代で、暮らす地域で、プレコンセプションケアはどのような定義だとしっくりきそうでしょうか。

それでは、プレコンセプションケアの歴史を紐解いていき、今どうあるのかを考えてみましょう。

2006年 米国CDC 

【定義】 
女性の健康と妊娠転記に対する医学的・行動的・社会的リスクを予防と管理を通じて特定・修正することを目的とした一連の介入

【目的】
受胎めの生殖年齢の女性の健康を促進し、それによって妊娠関連の転機を改善する

2012年 WHO

【定義】
妊娠前の女性とカップルに医学的・行動的・社会的な保健介入を行うこと

【目的】
対象者の健康状態を改善する
母子健康転帰に影響しうる行動や個人的・環境要因を減らす
短期的・長期的母子健康転帰を改善する

2019年 「プレコンセプションケアを考える会」案 (日本)

【定義】
前思春期から生殖可能年齢にある全ての人々の身体的、心理的および社会的な健康の保持および増進

【目的】
現在から将来にわたる自らの健康のみならず次世代の健康の保持および増進をはかり、国民全体の健康を向上させる

2021年 成育基本法基本方針(日本)

【定義】
女性やカップルを対象とした将来の妊娠のための健康管理を促す取り組み

2023年  6月 こども未来戦略方針

2023年  12月 こども大綱

【定義】
男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うように促すこと

いかがでしょうか。

米国で初めてプレコンセプションケアについて提唱されたことをきっかけに、日本での定義が議論されるようになりました。その議論が進む間も時代は動き、現在の我が国の置かれている状況や課題と共にプレコンセプションケアの役割も変動していることが感じ取れます。

ここで重要なのは、プレコンセプションケアの定義が一つに絞られていないということです。また、その定義が一つに絞られる必要なく、時代とともに専門家によって議論されながら変化していくものであるということなのです。なんだかわかりにくいと感じてしまう方もいるかもしれませんが、未来につながるこのプレコンセプションケアが持つヘルスケアの概念を皆で考えていくこともまたプレコンセプションケアと言えるかもしれません。

プレコンセプションケアの対象者とは

プレコンセプションケアの対象者は女性だけではありません。男性も含め、性別をこえて対象となり、年齢や期間においても「妊娠前」に限定するものではなく、全ての世代が対象者であると考えています。

プレコンセプションケアの対象者を考えるとき、3つの視点から考えるとわかりやすくなります。「生物学的レベル」「個人レベル」「公衆衛生レベル」です。

生物学的なレベルでは生殖細胞や配偶子への影響、身体状態などが考えられます。「個人レベル」では自分の人生において妊娠という選択肢をおいておくことや、妊娠中の合併症を予防すること、胎児の健康などです。また「公衆衛生レベル」で考えた場合には感染防止や社会を通じた健康増進について考えることができます。

対象者については公衆衛生的な視点から考えると明らかです。本人の健康増進という視点を含めばプレコンセプションケアの対象が妊娠希望の有無や妊娠前の時期に限定されないことがわかります。

これらを踏まえて考えると、プレコンセプションケアは女性のみならず、全ての人が・将来の子どもたちの長期的な健康増進に貢献し、強いては健康寿命の延伸に繋がるヘルスケアであると考えられます。

プレコンセプションケアの内容

プレコンセプションケアの内容についてお話しします。 プレコンセプションケアは、以下のような項目を含んでいます。概要を説明します。

生活習慣の見直し

食生活の改善、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、節酒など、健康的な生活習慣を身につけることが基本です。特に、喫煙や過度な飲酒は、男女ともに健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

適切な体重管理

やせすぎも肥満も、妊娠中の合併症や胎児の発育に影響を与えることがあります。BMI(体格指数)を意識し、適切な体重を維持することが大切です。

持病の管理

糖尿病や高血圧、甲状腺疾患など、すでに持病がある場合は、病状を安定させ、担当医とよく相談しておくことが不可欠です。

感染症の予防と対策

風疹や麻疹、トキソプラズマ、B型肝炎など、妊娠中に感染すると胎児に影響を及ぼす可能性のある感染症について、抗体検査や予防接種を検討します。特に風疹は、先天性風疹症候群の原因となるため、男女ともに予防接種が推奨されています。

歯科検診

妊娠中はホルモンバランスの変化により、歯周病や虫歯が悪化しやすくなります。定期的に歯科検診を受け、必要な治療を済ませておくことで、妊娠中のトラブルを避けることができます。

婦人科検診

子宮頸がん検診や性感染症のチェックなど、定期的な婦人科検診を受けることで、早期発見・早期治療につながります。

遺伝に関する相談

不安がある場合は、遺伝カウンセリングを受けることも選択肢の一つです。

こころの健康

ストレスや不安は、心身の健康に影響を及ぼします。リラックスできる時間を持ったり、必要であれば専門家に相談したりして、精神的な健康も保つようにしましょう。

ライフプランを考える

今後の人生について、将来の妊娠出産等について考えてみることは重要です。進学や就職のタイミングなどを利用して何度でも考えてみましょう。

全てがプレコンセプションケアへつながっていく

プレコンセプションケアは、今の自分の健康を支え、次世代の健康へと繋げていく概念です。基本となる今の自分の健康と、これからに繋がる未来の健康について取り組んでいきましょう。

 この機会にプレコンセプションケアについて考えてみませんか? どんな小さなことでもかまいません。まずはご自身の健康に関心を持つことから始めてみましょう。皆様の今と未来に健康のバトンを繋いでいくことを願いながら。

参考文献

・荒田尚子:プレコンセプションケア概論.産科と婦人科2020.
・荒田尚子、水戸麻子、岡崎有香編:プレコンセプションケア.MEDICALVIEW.2024

▼プレコンセプションケア事例をご紹介します

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