2回ワクチンを打っていても、はしかにかかるの? いま知っておきたい麻しん流行と、本当に大切な備え

目次

はじめに

最近、麻しん(はしか)の報告が日本国内で増えています。

JIHSの2026年第6号では、12都道府県から報告された32例のうち、東京都が6例で最多、埼玉県と千葉県が各3例、神奈川県が2例とされており、流行初期には関東での発生が目立つ状況でした。その後も全国の報告は増え、2026年第15週時点の累積報告数は299例に達しています。厚生労働省も「麻しん(はしか)が増加しています」と注意喚起を行っています。

出典:感染症発生動向調査(IDWR)速報グラフ

こうした状況の中で、「ワクチンを2回受けていても、はしかにかかることがあるらしい」と聞き、不安になっている方も多いかもしれません。学校での感染や集団発生が報じられると、なおさら心配になります。

ですが、ここで大切なのは、情報を断片的に受け取らないことです。麻しんは、もともと極めて感染力が強い感染症であり、ワクチンは「100%感染をゼロにする魔法」ではありません。

一方で、だからといって「ワクチンは意味がない」ということにもなりません。むしろ、いま公的機関や専門学会が繰り返し伝えているのは、2回接種の意義を正しく理解することの大切さです。

麻しんとは

麻しんは、空気感染、飛沫感染、接触感染で広がります。

日本感染症学会は、麻しんは現存する感染症のなかでも最も強い部類の感染力をもち、家庭内などでは免疫のない人の約90%が感染すると説明しています。

換気の悪い室内では、感染者がその場を離れた後もしばらく感染リスクが続くことがあるとされており、決して軽く見てよい感染症ではありません。

また、麻しんは高熱と発疹だけの病気ではなく、肺炎や脳炎などの重い合併症を起こすことがあります。

厚生労働省は、先進国でも死亡は約1,000人に1人、脳炎も約1,000人に1人と説明しています。

さらに日本感染症学会は、SSPE(亜急性硬化性全脳炎)など、回復後しばらくしてから重い神経合併症を起こすことがある点にも注意を呼びかけています。

麻しんが流行すると、本人の体調だけでなく、学校や家庭、医療機関など周囲への影響も大きくなります。

なぜ2回接種しても感染するのか

では、なぜ「2回接種していても感染した」ということが起きるのでしょうか。

まず前提として、麻しんワクチンは非常に有効ですが、接種していれば絶対に感染しないとまでは言えません。

日本の定期接種では、MRワクチンを1歳で1回、小学校入学前の1年間で2回目を受けることになっています。2回接種によって、発症や重症化のリスクをできるだけ小さくすることが期待されていますが、それでも感染自体が完全にゼロになるわけではありません。

ここで知っておきたいのが、「修飾麻しん」です。

修飾麻しんとは、麻しんウイルスに感染していても、典型的な麻しんのように症状がそろわず、軽く分かりにくい形で現れるものです。JIHSでは、麻しんの典型的な3症状である発熱、発疹、カタル症状(せき、鼻水、結膜充血など)のうち、3つすべてを満たすものを「麻しん」、1つまたは2つだけを満たすものを「修飾麻しん」と整理しています。

日本感染症学会も、修飾麻しんでは症状が軽く見逃されやすい一方、感染力が完全になくなるわけではないと注意を促しています。

実際に、JIHSの2026年第1〜14週の解析では、236例のうち、典型的な麻しんが161例、修飾麻しんが73例でした。また、6歳以上の症例では、2回接種歴がある症例も含まれていました。流行初期の第6号でも、6歳以上28例のうち2回接種歴ありは4例で、その内訳は麻しん3例、修飾麻しん1例とされています。一方で、接種歴なしの8例はすべて典型的な麻しんでした。

ここから読み取れるのは、「2回打っていても発症例はある」が、「未接種のほうが典型的な麻しんになりやすい」ということです。

つまり、2回接種していても発症例はありますが、もし接種していなければ、より典型的で重い症状になっていた可能性もあります。

専門学会はどう見ているのか

日本ワクチン学会は2026年4月17日に一般向け文書を公表し、麻しんは感染力が強く、肺炎や脳炎などを起こしうる感染症であること、そしてワクチンは、はしかにかかりにくくし、かかっても重くなりにくい体になることが期待されると説明しています。つまり、学会は「2回打ってもゼロではない」ことを否定していませんが、それでもなお、ワクチンが最も重要な予防手段であるという立場を明確にしています。

また、日本感染症学会も2026年3月に緊急注意喚起を公表し、麻しんは世界的にも国内でも増加しており、流行防止には2回接種率95%以上を維持することが重要だと呼びかけています。麻しんには特効薬がなく、治療は対症療法が中心であることからも、予防としてのワクチン接種の重要性は変わりません。

さらに、JIHSのリスクアセスメントでは、把握された範囲で、2回接種者からの二次感染は同居家族内の1事例のみとされています。症状が軽くても感染をゼロにはできない一方で、2回接種は発症や重症化だけでなく、感染の広がり方を抑える方向にも働いている可能性が示唆されます。

ですから、「2回接種者でもかかった」という事実だけを切り取って不安をあおるのではなく、その人がどの程度の症状だったのか、周囲への広がりはどうだったのかまで見ていくことが大切です。

私たちが今すぐ確認したいこと

私たちが今できることは、まず自分と家族の接種歴を確認することです。母子健康手帳や予防接種記録を見て、MRワクチンを2回受けているかを確認してください。特に、接種歴が不明な方、海外渡航の予定がある方、医療、保育、教育など多くの人と接する仕事の方は、早めに医療機関へ相談することが大切です。

厚生労働省も、国内の増加状況を踏まえて、接種歴の確認と積極的な接種勧奨を呼びかけています。

2000年4月2日より前に生まれた方には、定期接種として2回の機会がなかった世代が含まれます。自分が1回接種だったのか、2回受けているのか分からない場合は、母子健康手帳や記録を確認し、必要に応じて医師や自治体に相談しましょう。

また、麻しんが疑われる症状がある場合は、いきなり受診するのではなく、必ず事前に医療機関へ連絡してください。麻しんは空気感染するため、院内や移動中で感染を広げない配慮が必要です。日本感染症学会も、受診前の電話連絡の重要性を強く呼びかけています。

修飾麻しんでは症状がはっきりしないこともあるため、「高熱と全身の発疹がそろっていないから大丈夫」と自己判断しないことも重要です。せき、発熱、発疹、結膜充血などがあり、周囲で流行がある、あるいは渡航歴や接触歴がある場合は、麻しんの可能性も考えて行動する必要があります。

判断に迷う場合や、周囲に感染者が出て不安なときは、お住まいの地域の保健所に相談することもできます。麻しんは公衆衛生上の対応が重要な感染症であり、迷ったときに早めに相談することは、自分や家族だけでなく周囲を守ることにもつながります。

不安が広がる今だからこそ、正しい理解を

「2回打っていてもかかることがある」という情報だけが広がると、不安や誤解が先行しがちです。ですが、公的データと専門家の見解が示しているのは、むしろ逆です。2回接種は、発症を減らし、重症化を減らし、感染拡大を抑えるうえでも重要です。

必要なのは過度に怖がることではなく、接種歴を確認し、正しい知識で備えることです。自分と家族を守るために、まずは母子健康手帳を開いてみることから始めてみてください。

【参考】

・厚生労働省 麻しん(はしか)

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html

・厚生労働省 MRワクチン

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/mr/index.html

・感染症発生動向調査

https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/idwr/2026/idwr2026-14.pdf

・麻しんの発生に関するリスクアセスメント

https://id-info.jihs.go.jp/risk-assessment/measles/measles_ra_2026_1.pdf

・国立健康危機管理研究機構 麻しん(詳細版)

https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/measles/detail/index.html

・日本ワクチン学会

https://www.jsvac.jp/pdfs/20260417.pdf

・日本感染症学会

https://www.kansensho.or.jp/jaid_measles_warning/jaid_measles_warning-2.html

無料 オンライン健康相談&セミナー「福利厚生サービス」ダウンロード

企業の福利厚生施策として、従業員のライフステージに寄り添うサポートサービスです。
直近3年間で400回以上のセミナー実績や、利用促進につながる広報制作全員が資格を有する専門家の相談対応をご提供しています。さらに、女性活躍推進や「くるみん」などの企業認定制度に対応した基準・条件にも沿った施策をご提案します。

1. 豊富な実績で安心
直近3年間で400回以上のセミナー開催実績。
実例に基づく具体的なノウハウをご提供します。

2. 利用促進の仕組みもサポート
広報制作サンプルを活用し、従業員が参加・利用しやすい仕組みを構築できます。

3. 専門家が直接伴走
全員が資格を有する専門家による相談対応。
女性活躍推進や「くるみん」などの認定制度にも準拠した施策をご提案します。

この記事を書いた人

人が生きていく上で最も重要なことは、心身の健康だと考えています。「まだまだ若いし、自分には関係ない」、私自身も数年前まではそう考えていました。しかし海外での生活を経て、日本でとても恵まれた医療環境にいたことに気付き、その環境に甘えていたことを痛感しています。看護師として、また働く母として、皆さんの健康への意識を高められ、そして働くお母さんたちの力になれる情報を発信したいと考えています。