女性活躍推進や両立支援、働き方改革に取り組むさまざまな企業へインタビューし、制度や仕組みづくりへの取り組み、風土醸成や浸透の工夫、担当者の想いなどを聞きました。人事担当者やダイバーシティ推進担当者のリアルな声をお届けします。
今回は、イオングループの中核企業としてショッピングモールなどの商業施設を中心とした開発・運営をおこなう「イオンモール株式会社」を取材しました。
働きやすい環境づくりについて、採用・育成部の岡本さん、人事部ダイバーシティ推進グループの栗田さんにお話を伺いました。
地域に根付いたモールづくりを推進 国内外約200拠点でモールを展開
― 貴社の事業内容についてお聞かせください
主な事業はショッピングモールの開発から日々の運営・管理までトータルなモールビジネスに取り組んでいます。日本のほか海外にも出店をしていて、中国とインドネシア、ベトナム、カンボジアなどを中心に国内外で約200施設を展開しています。
― スタッフの構成や男女の比率はどのようになっていますか
単体で見ると約1800名の従業員がいます。そのうち正社員の男女比でいうと、37%が女性で若干男性の比率が高くなっています。近年では、女性の募集、採用を積極的に行っていることもあり、新卒で入社する社員は女性の比率が高くなってきています。
― どのような職種の方が多いのでしょうか
職種としては様々にありますが、一番人数が多いのはショッピングモール勤務の従業員です。
北は北海道から南は沖縄まで、全国にあるショッピングモールの管理事務所に在籍し、ショッピングモール全体の運営や施設管理、モール内の専門店の営業支援などを行なっています。
入社後はまずショッピングモールの現場に配属され、その地域のお客さまに喜んでいただけるショッピングモールにするために、イベントや販売促進活動を企画、実行する業務や施設管理業務などに携わりながら経験を積みます。
―地域ごとのお客様の特性に合わせてモールづくりをしていくところはやりがいがありそうですね。各拠点に管理の組織があるイメージでしょうか
ショッピングモールの規模にもよりますが、1つのショッピングモール内で15人から20人程度が管理運営に携わっています。
モールは365日、毎日朝9時あるいは10時から夜まで営業しているので、早番遅番でシフトを組んで交代で勤務しています。シフト時間や体制は、日中のコミュニケーションが取りやすいよう調整を行なっています。管理事務所内はもちろん、なるべく日中の館内のお客さまの様子を見ること、専門店のスタッフと話す機会を増やすことで、企画や運営のアイデア創出や改善につなげています。
子育て世代が安心して働き続けられる環境づくり
―栗田さんは人事部のダイバーシティ推進ご担当ということで、具体的にはどんなお仕事が中心になりますか。
ダイバーシティ推進グループは、子育て支援の一環として保育園の導入を進める中で、2016年に新設された、比較的新しい部署です。
今では子育て支援に限らず、出産・育児、介護、治療など、様々な価値観やライフステージに対応した制度を運用して、仕事との両立をサポートする部分を担っています。 イオングループでは、子育て世代が安心して働き続けられる環境づくりの一環として、事業所内の保育所「イオンゆめみらい保育園」を設置し、イオングループの従業員やモール内の専門店スタッフ、地域住民の方にご利用いただいています。
保育園の設置に取り組んだのは、過去に待機児童が社会的な問題となるなか、イオングループの従業員もなかなか保育園が決まらず、復職が難しいという時期があったからです。
モールという特性上、土日祝日を含め勤務する可能性があるため、その働き方に合わせ365日開園する保育園を私たち企業が自らで導入していこうという経緯で始まりました。
―保育園事業まで取り組めるというのは、イオングループならではという気もしますね
そうですね。イオンモールは、地域コミュニティの中核施設となることをめざしていますので、モールの中で働く方はもちろんのこと、祝日にもお仕事がある地域の方にも広く利用いただける保育園となっていることは嬉しく感じています。
男性の積極的な育児参画をバックアップ “男性育休”推進への取り組み
―両立支援として特に力を入れて取り組んでいることや実績として見えている部分はありますか
女性の活躍には男性の育児への参画が重要と考えています。男性の積極的な育児参画を推進するため、男性育休の取得促進については特に力を入れて取り組んでいます。
特に男性の場合、収入の減少など経済面での不安が育休を取得しない要因として多かったため、「育児休業扶助金(イクボス応援金制度)」として、育休取得中の給与を補償する制度をつくって支援をしています。 直近の2022年だと、男性の育休取得実績として、対象となる男性従業員の取得率は100%で、取得期間も平均で46.8日という結果となりました。1ヶ月以上の取得も増えてきたという結果は、育休を取るのが当たり前で、どのぐらいの期間取るのか、という議論にひとつステージが上がった成果かなと実感しています。
―男性の育休取得に関して、しっかり実績も出ていてすごいなと思います。取得の推進や制度の浸透に関してどんな工夫をされていますか
浸透という観点では、お子さんの生まれる予定の男性従業員には、育児休職や関連制度について個別に案内しています。地道な活動にはなりますが、我々の声がけにより徐々に取得する方も増え、取得した従業員の同じ部署の従業員も育休を取得しやすい流れができています。育休の取得は当たり前、というように意識も変わっていきつつあるかなと実感しています。
ほかには、「育なび」という産休育休や育児中の働き方についてまとめたガイドブックを社内のイントラで公開しています。当事者や管理職層はもちろん、これからライフイベントを迎える若手社員も事前にこのガイドブックを参照して理解を深めることができます。また同じ部署やチームのメンバーもどのような働き方ができるのかを一緒に確認することが可能です。
―育休からの復帰に際して工夫されていることはありますか
復職前には、必ず当事者と所属長とが面談をするというフローとなっています。
特に初めてのお子さんで、産休育休を経て復帰するとなると、育児をしながら仕事をすることが未経験のことで、当事者の不安はすごく大きいと思います。上長と事前にコミュニケーションを取ることで、お互いに状況を把握した上で復職できるようにしています。
受け入れる側の上司に対しては、当事者との面談で、適切に動機付けを行うことができるよう人事部から案内をしています。
―支える側が正しい知識を持って接するというのはすごく大事だなと思います。気遣いのつもりで何気なく言った言葉が当事者にとってはモチベーションを下げてしまう結果になってしまうこともありますよね
管理職層には、育児中だからといってその方がキャリアを諦めるという意味ではないこと、時短勤務の方が、フルタイムで勤務している人より勤務時間だけを理由に評価が下がることはないこと、当事者も仕事への取り組み方は様々なので、一方的な思い込みや過剰な配慮には気をつけることなど、意識づけできるようにしています。
地域に根付く魅力的なモールづくりのために ダイバーシティを推進
―男女に関わらずキャリアを支援するような仕組みなどあれば、ぜひお聞かせください
イオングループ全体の話にはなりますが、性別、年齢、国籍、従業員区分に関わりなく、キャリアアップのチャンスが公平にあります。
上位職への登用試験は、基本的に対象となる全員が受けることになっていて、意欲や能力は関係なしに、チャレンジを促す運用をしています。全員が挑戦するのが当たり前という意味では、チャレンジしやすい風土になっているのではないかなと思います。
―年齢や性別などに関わらず、チャレンジできる場が準備されていて、まさに多様性を受け入れる環境づくりがされていますね。今後の展望や担当者としての想いをお聞かせください
岡本さん:ダイバーシティ実現のために引き続き取り組んでいきたいと思っています。
まずは女性の活躍というところで取り組みを行なっていますが、女性以外にも介護しながら働く方、治療と両立している方、LGBTQ+の方、障がいをお持ちの方、外国の方など、さまざまな状況や背景を持っている従業員の意見を経営に反映させることを目指しています。
モールをご利用いただくお客さまも多様で、様々な方がいらっしゃるため、我々の組織もそれに見合った多様性が必要だと考えています。 昨年(2023年)、2030 年ビジョンとして「イオンモールは、地域共創業へ。」を掲げ、地域のあらゆる課題を解決し地域の未来につながる営みを共創する企業になろうと取り組みを推進しています。地域の課題を見つけるためには、そこで働く人、そこに住む人、様々な立場での目が必要だなと思っているので、多様性を取り入れ、組織から変えていけたらいいなと思っています。
栗田さん:岡本さんの補足となりますが、一昨年の2022年にイオンモール人材・組織ビジョンを策定しました。その中では、「一人ひとりを尊重して能力を最大限に発揮できる組織風土」が求める組織像として掲げられています。
多様なライフプランに対応しながら働く組織や、女性の管理職を増やすことを目指すだけでなく、性別や年齢、国籍などに関わらず、一人ひとりが力を発揮して活き活きと働き続けることができる環境づくりが重要だと考えています。この人材・組織ビジョンを全社員が共有しながら実現を目指していくべきだと思っています。
―働く人を大事にしながら、地域全体として住みやすく、みんなが生き生きと暮らしていけるまちづくりへの想いを伺うことができました。イオンモールが住みやすい街のシンボルになっていると感じます。本日はありがとうございました!
■ 会社情報
会社名 | イオンモール株式会社 |
所在地 | 千葉県千葉市 |
事業内容 | 大規模地域開発及びショッピングモール開発と運営 不動産売買・賃貸・仲介 |
設立 | 1911年11月 |
従業員数 | 5,507名(2024年2月29日現在) |
公式ページ | https://www.aeonmall.com/ |