<取材>働く女性のネットワーク構築で長崎県の女性活躍推進を後押し 女性の能力や意欲を向上させる仕組みづくりとは −第一生命保険株式会社 長崎支社
認定取得への取り組みシリーズ

女性活躍推進や両立支援、働き方改革に取り組むさまざまな企業へインタビューし、制度や仕組みづくりへの取り組み、風土醸成や浸透の工夫、担当者の想いなどを聞きました。人事担当者やダイバーシティ推進担当者のリアルな声をお届けします。

今回は、長崎県のNピカ認定取得企業の中から、「第一生命保険株式会社 長崎支社」を取材しました。

社内外を巻き込んだ、女性活躍推進への取り組みについて、活動への想いや展望などを、営業推進グループ 次長笹田さま、CS推進グループの磯田さま、生涯設計グループで総務を担当する池さまにお話を伺いました。

県下企業の女性メンバーを集めて女性活躍推進やキャリアを支援

― まずはみなさまが、普段どういう役割やお仕事をされているのかお聞かせください

池さん:第一生命 長崎支社の生涯設計グループで総務を担当している池です。内勤職の福利厚生や給与、勤怠など主に人事関係の業務を担当しています。

笹田さん:主に法人営業を担当している笹田です。自治体や地元のメディアなどの窓口も担当しています。女性活躍推進への取り組みの中心的な役割をさせていただいています。

磯田さん:長崎支社のCS推進グループに所属し、契約品質管理などを担当している磯田です。新規契約時の契約内容の確認や、コンプライアンスなどを担当しております。

― 女性活躍推進への取り組みに注力されているということですが、女性が多い職場なのでしょうか

池さん:はい。長崎支社で言うと、営業の職員を含めて従業員705名のうち女性が672名で、9割以上が女性になります。(令和5年4月時点)

長崎支社では、女性活躍推進の取り組みに力を入れていて、本日参加している3名を含めた7名の女性社員が長崎支社で、活動の中心メンバーとなっています。

― 今回長崎県が独自に認定を行うNピカの認定取得企業ということでお声がけをしております。働き方改革や、両立の支援、女性活躍推進に関して、注力されている取り組みがあればお聞かせください

「Nピカ(長崎県誰もが働きやすい職場づくり実践企業認証制度)」とは

Nピカは、誰もが働きやすい環境づくりに積極的に取り組む県内企業を、長崎県が優良企業として認証する制度

池さん:女性がもともと多いので、女性にとって働きやすい職場環境や制度の整備が進んでいます。

Nピカの認定のほかに、ながさき女性活躍推進会議が主催する「ながさき女性活躍推進企業表彰」という制度があります。2022年に、当社は福利厚生面や家庭と仕事の両立支援制度、女性のキャリア支援などへの取り組みが評価され、大賞を受賞しました。

この受賞をきっかけに、社内だけではなく社外へも取り組みを波及、拡大していこうということで、笹田が中心となり、県内の取引先企業にお声がけをして、女性の活躍・キャリアを支援する活動を進めています。

具体的には、県内企業の女性管理職や経営者を集めて女性のキャリアップ研修会の実施や、今年度は、長崎県とも連携して長崎県が抱える課題の解決方法を私たち民間企業が考えるなどの活動を社外の方と一緒に取り組んでいます。

― 社内にとどまらず、社外も巻き込んで女性活躍を推進されているとは驚きました。長崎県下では女性活躍に取り組みたいという企業も多いのでしょうか

笹田さん:この活動を始めるにあたって、まずは、私自身のお客様であるメディアやホールディングス企業の社長や管理職の方に、女性活躍推進のための活動をしたいので女性のメンバーを出してほしいとお声がけしました。

お声がけには賛同いただけたので、潜在的にニーズはあったのかもしれませんが、女性の活躍推進に関して、長崎県はまだまだ遅れていると感じています。県下の企業でキャリアに関して上を目指す女性はほんの一握りで、大半の方は、今のままのポジションで平穏無事に終わればいいという意識だと思います。

その意識を変えるという意味で、同じ年代の女性を集めてお互いに気づきを与えるようなきっかけや場を提供できればと考え、女性活躍推進グループ会議を発足したという経緯です。

―東京など都心部では、女性活躍推進の機運は高まっていて、どの企業でもやっていて当たり前という雰囲気ですが、笹田さんご自身は地方企業での課題感があったのですね

笹田さん:この活動は、私自身の経験が大いに影響しています。

私自身が長崎支社の中で営業推進統括部長となったのは51歳の時でした。実際にやってみるまでは、自分にできるのだろうかという不安がありましたが、結局、役職定年まで9年間部長を務めました。

この私の経験をロールモデルとして、後輩にしっかりと伝えていくことで、”自分にもできるかもしれない”と考える人を増やしたいと考えています。そして、それを長崎支社の中で今後のスタンダードにしていきたいという想いで、女性活躍推進グループ会議の取り組みを行なっています。

―女性側の気持ちや意識の持ち方は、身近にモデルがいることでイメージしやすくなって自信やモチベーションの向上につながりますよね

笹田さん:そうですね、不安が払拭されますよね。

このグループでは、2ヶ月に1回会議を開催します。その中で、女性の経営者や役員に、ご自身の体験を講話という形で共有していただくこともあります。その当時の悩みや苦労、両立の工夫などをお話しいただくことで、参加メンバーが新たな気づきやヒントを得る機会を提供しています。

参加メンバーは、2022年から継続して参加される方もいれば、同じ会社の中から新メンバーを紹介いただくこともあり、現在は20名程度で開催しています。年齢層は20代から50代までと幅広く、大半は40代以下の比較的若い層で構成されています。

同じ立場の社外の人と交流する機会は、女性にとっては少ないため、その場が設けられたことだけでも大きな成果なのではないかと感じています。

―たしかに、社外の人と仕事の話をする場ってあまりないですね。特に働き方やキャリアの話は、同じ立場に立ったことのある人同士の方がヒントやアドバイスをもらいやすいですよね

笹田さん:そうですね。価値観が同じ人や、仕事の悩みや想いをフラットに話せる人や場があることは、個人的にはとてもいいのかなと思っています。

制度の拡充やオンライン化で柔軟に働ける環境を整備

― これまでお話しいただいた以外にも、家庭と仕事の両立がうまくいっているエピソードがあればお聞かせください

磯田さん:私には子どもが一人いて、今はすでに成人していますが、出産当時の20年以上前は、産休が明けたらすぐに復職するというのが当社の中でのスタンダードでした。そんな状況の中、私の妊娠前に、ちょうど先輩が長崎支社で初めて育休を取得したことで、私自身もその後に続いて育休を取得することができました。

先ほどのお話の中で、キャリアの中でのロールモデルが必要ということでしたけれども、この福利厚生や働き方に関しても、ロールモデルがいて、あの人が取得するのであれば私も、という流れで、それが当たり前の環境になっていくことが必要かなと思います。

― 育児との両立ももちろん、今ではライフステージに応じて家庭と仕事の両立がしやすい環境を整えることが大事ですよね

磯田さん:そうですね。もちろん今では、育児や介護に関する各種休暇・休業制度も充実して、休みが取りやすい環境が整ってきています。コロナ禍以降は、テレワークも進み、より柔軟な働き方や家庭との両立がしやすい環境が整ってきたと感じています。

たとえば、私自身、子どもの大学受験の時には、休暇やテレワークを活用して受験を支援することができましたし、父の介護の際も、頻繁に発生する通院やケアマネージャーとの打ち合わせの際には、周囲とフォローし合いながら休みを取得できていました。家庭の事情お休みを取らなければならない時も、それぞれの状況を理解し合って、お互いさまという風土が定着しつつあるのかなと感じています。

― コロナ禍以降、全体として働き方が大きく変わったと思いますが、今もテレワークと出社のハイブリッドという形でお仕事をされているのでしょうか

磯田さん:はい、そうですね。以前よりテレワークの頻度は少なくなってきてはいますが、ハイブリッドで進めています。特に会議の実施については、以前は必ず現地に集合でしたが、ここ最近はオンライン会議システムを利用して行なっています。

テレワークの恩恵を受けながら、業務へ取り組み方や時間への意識が変わることで、生産性の向上につながっているのではないかと感じています。

ボトムアップのコミュニケーションで風通しの良い風土づくり

― 母体が大きい会社で、全社的な話や支社の方針などそれぞれ情報としてあるのかなと思っております。コミュニケーションや浸透の工夫についてはいかがでしょうか

池さん:会社全体で取り組みとはなりますが、月に1回、上司と部下が1対1でのミーティングを実施しています。毎回のミーティングのテーマは部下が自由に設定します。相談事やプライベートの話、働き方に関することなど、10〜15分の場を設けて実施しています。

人事面談以外で、上司と部下が定期的に対話を持つことで、今の状況やお互いの考え、改善点などの共通認識を持つ機会となっています。

笹田さん:もうひとつ特徴的な会社の取り組みとして、オンライン会議システムを使用して本社の役員と直接話す機会が設けられています。本社からは支社や各部門へ情報や方針が伝達されますが、全社的に流れてきた情報への疑問や質問を、役員と直接話すことで解決する仕組みです。

内勤の社員だけでなく、営業職である生涯設計デザイナーも参加できます。たとえば、他社にはこんな商品があり、自社にそれに類似した商品があれば保険販売を増やすことができる、という提案を行うなど、現場の生の声を反映できる場になっています。

また、役員に直接声を届けるだけではなく、質問や提案を通じて同じチームの上司や同僚にも自分の考えや意見を伝えることができる良い機会だと思っています。

― 場所や役職、職種は関係なく、本社の役員と直接コミュニケーションできる機会があることは、とても良い取り組みですね

笹田さん: はい、オンラインで全国の拠点と本社が直接つながることは、会社の方針や商品の目的がしっかりと伝わるので、徐々に良い影響が出てくると思います。将来的には、全社員が下から上への声がきちんと伝わることを理解すると、仕事の取り組み方も変わってくるのではないかなと思っています。

ロールモデルの確立でさらなる女性の活躍を推進 誰もがいきいきと働ける環境づくりを目指して

― 女性活躍推進へのお取り組みを伺ってきましたが、今後一層力を入れて取り組みたいことや、今後の展望などをお聞かせください

笹田さん:私は定年まで残り3年となりましたが、その期間内に私の部下のうち、ひとりでも管理職に昇進させることが目標です。

現在、女性活躍推進グループには7名のメンバーがいて、私を含め2名はすでに管理職です。あと5名の中から管理職に昇格することで、社内の流れや状況がきっと変わると考えています。これを実現できるよう、残りの3年間でしっかりと取り組みを推進したいと思っています。

磯田さん:私も現在管理職として、部下を持つ立場にあります。みんなが生き生きと働ける環境を整えることを目指したいと考えています。

オンライン会議システムの利用などにより、働き方はより柔軟になってきています。制度や仕組みを当たり前に利用できることは重要ですが、それに感謝しながら前向きに仕事に取り組んでほしいと思っています。働きやすい環境を整える中で、みんなが仕事に対して前向きにがんばろう、自分をさらに成長させようという思いで、生き生きと働いていけるように、部下と一緒に取り組んでいきたいと思っています。

池さん:私は、自分自身のキャリアアップを考えていかないといけないなという思いです。

合わせて、女性活躍推進グループ会議に参加し他社の方と話しをする中で、男女の、仕事と家庭の両立に対する意識の差を感じることがあります。女性は、家庭と仕事の両立を意識し、育児休業や介護休業など働き方に関して話題にしたり議論したりすることが多くあります。一方で、男性はなかなか育児休暇の取得が進まず、まだ当たり前になってはいないと感じています。

男性であっても女性であっても、育児休暇や介護休暇などを利用して家庭と仕事の両立が当たり前となるように、総務担当として取り組んでいきたいと考えています。


■ 会社情報

会社名第一生命保険株式会社 長崎支社
所在地長崎県長崎市
事業内容生命保険業
従業員数705名(2023年4月時点)
設立年月日1902年9月15日
公式ページhttps://www.dai-ichi-life.co.jp/