女性活躍推進や両立支援、働き方改革に取り組むさまざまな企業へインタビューし、制度や仕組みづくりへの取り組み、風土醸成や浸透の工夫、担当者の想いなどを聞きました。人事担当者やダイバーシティ推進担当者のリアルな声をお届けします。
今回は、長崎県のNピカ認定取得企業の中から、座席の縫製専業メーカーとして最大手の「双葉産業株式会社 長崎工場」を取材しました。
若い世代や育児中の女性が多数活躍する環境で、継続して働きやすい仕組みづくりについて総務係 主任 川原さんにお話を伺いました。
専用の保育園を併設し子育てしながら働きやすい環境を整備
― まずは事業内容についてお聞かせください
自動車の座席の縫製専業メーカーとして国内最大規模の工場となります。自動車のシートカバーのほか内装部品を製造しています。
―新入社員には10代の方からいらっしゃると伺いました。従業員の年齢層はどのような傾向なのでしょうか
長崎工場の従業員数は300人ほどで、40代、50代が極端に少なくて、20代が一番多くなっています。
長崎工場が8年目になるのですが、毎年30名程度の新入社員を受け入れています。そのため20代が圧倒的に多い会社です。また縫製に特化した工場なので、8割近くが女性という比率になっています。
―工場内に専用の保育園をお持ちということで、子育てしながら勤務されている方が多いのでしょうか
そうですね、子育て中の女性が多く活躍しています。
若い社員でも結婚、出産が早い傾向にあります。工場内に常に妊婦の方がいて、毎月育児休業に入る従業員がいる状況です。
―育児中で勤務されている方や、妊婦さんも多いということで、工場内に保育園があることも影響しているのでしょうか
保育園が併設していることで、子育てをしながら働きやすい環境になっていると思います。
自動車産業は祝日が休みではなく、一般の保育園だと祝日は預けられないため、工場の稼働に合わせて預けることができる環境を整えるという観点で、工場内で保育園を運営しています。
開設当初は、利用も少なかったのですが、徐々に広まっていって、現在では出産から復帰する多くの従業員が利用しています。
―保育園の併設について採用への影響はいかがですか
中途採用の方は、当社の社員から保育園が併設されていることを聞いて応募されるなど、影響はあると感じています。また、保育園の利用がしやすく、結婚後も働きながら子育てがしやすく長く働き続けられる会社と先生から聞いて応募しましたと言ってくれる新卒採用の方もいて、効果はあると感じています。
―先ほど育児休業に入られる方も多いとお伺いしましたが、取得の状況はいかがですか
女性の育児休業の取得率は100%です。取得が当たり前という意識が浸透していると感じています。
―男性の育休の取得状況はいかがでしょうか
男性従業員の育休取得に関しては、まだ実績がなく課題があります。
対象者には個別に声がけはしていますが、経済的な面の心配から取得をためらう方がまだ多い状況です。地域性も少し影響があるのかなとは思いますが、会社としては取得を促す声がけをしていきたいと思っています。
縫製の工程内でチームを組んで突発的な休みに対応
―妊婦さんや子育て中の方が多いという状況で、突発的なお休みも発生することがあると思いますが、休みを取りやすい工夫や、お休みの部分を補う工夫はされていますか
工場での縫製工程を製造ラインのチームでものづくりをしています。
同じ工程を1つのチームで担当するので、1人が休んで抜けてしまった場合でも、他のメンバーで対応ができる体制となっています。自分が抜けても、誰かがフォローに入れるとわかっていて、チーム内でもお休みに対する理解があるので気持ち的にも休みやすいという声も聞きます。
―なるほど、フォローの体制が整っていることで、突発的なお休みにも対応できる体制になっているのですね
そうですね、突発的な休みにも長期的な休みにも対応できる体制を整えて、ラインを止めない工夫をしています。
―これまでお話を伺ってきて、女性が活躍しやすい環境を整えておられると感じています。若い世代の方も多いとは思いますがどのように活躍されているでしょうか
縫製の現場では、自分でやりたいと思えば年齢は関係なく活躍できる環境はあります。早い方で入社3年〜4年目で班長になった事例もあります。
産休明けに継続して役職を持たれている方や、育児をしながら班長やトレーナーなどステップアップを目指す方など意欲のある方は、どんどんチャレンジできる環境だと思います。
若い世代が多いからこそひとりひとり個性を理解し適切にアプローチ
―毎年多くの方が入社されて、特に10代の若い方も多いと思いますが、コミュニケーションで工夫されていることはありますか
そうですね、毎年30名ずつ新卒採用を続けていて、年代によるギャップを強く感じています。3歳差くらいの若い従業員同士でも、感覚が違うという話を聞くことがあります。
特にコロナ禍の期間、学校生活や部活動の機会が少ない影響もあるのか、先輩後輩、上司部下のような上下関係という意識がなく、年上の人に対しても友達みたいな感覚で接してしまうというか。
上下関係を厳しくしたいと意図はないのですが、指摘や指導に対して、休んでしまう、辞めてしまうという状況にならないよう、会社という組織で働く、社会人として働く感覚を身につけてもらえるように、少しずつアプローチしています。
―具体的にはどのようにコミュニケーションを取られているのでしょうか
入社3年目までは、個別に面談を行なっています。面談といってもお菓子を食べながら1対1で話す時間を設けて、1人1人の状況や考え方を把握するようにしています。せっかく入社されたからには、長く働いてほしいので、個性を理解しつつ適切にコミュニケーションをとるように心がけています。
今後の展望
―今後の展望をお聞かせください
今のところ、まだ男性の育休取得の実績がないため、女性従業員と同じような流れで休みやすい環境づくりに取り組んでいきたいと思っています。当事者への声がけはもちろん、なんらかの形で、周囲の理解促進への働きかけもしていきたいです。
また若い世代とのつながりを持つことや世代間の相互理解を深めていくために、従業員のみなさんが参加できるイベントなども企画して、働きやすい環境を作っていきたいと考えています。
■会社情報
会社名 | 双葉産業株式会社 長崎工場 |
所在地 | 長崎県佐世保市 |
事業内容 | 車の内装部品の製造業 |
従業員数 | 1,300名 |
公式ページ | http://futaba-s.co.jp/ |