ファミワンカンファレンスにご登壇いただいた企業の人事担当者や経営者へインタビューし、カンファレンス後のお取り組みや風土醸成、従業員との関わり方など、働く環境づくりの工夫や従業員への想いなどを伺いました。
今回は、2023年に東北金融機関初、山形県内企業初となる「プラチナくるみんプラス」を認定取得した「山形銀行」を取材しました。
男性育休への取り組みや、不妊治療と仕事の両立支援への課題感、人事担当としての使命などを、ファミワンカンファレンス2023 にもご登壇いただいた人事総務部 ダイバーシティ推進室の笹原さんにお話を伺いました。
男性育休取得推進への取り組みと課題感
―昨年のカンファレンスでは「出生サポート休暇」と「産後パパ育休」への取り組みについてお話しいただきました。その後、産後パパ育休の取得に関して、社内での取り組みの推進状況や成果などをお聞かせください
制度導入時は、「これって何なの?」という、パパになった当事者ですら、理解しきれていないという状況でしたが、徐々に浸透し始めていると感じています。
お子さんが生まれたことを人事担当で把握した時点で、産後パパ育休制度を案内しています。直近半年間でみると、対象の社員はほぼ産後パパ育休を取得できている状況です。
―ありがとうございます。ちなみに、産後パパ育休の取得期間はいかがでしょう
多いのは1週間になります。 数週間や、数ヶ月という長期間での取得までには至っていないので、取得日数の面で見るとまだ課題を感じますね。
―制度の浸透について工夫していることはありますか
お子さんが生まれた職員自身へはもちろんですが、その上司にも、人事総務部から育休利用について声がけしています。
実際にお休み中の業務を担当するのは、その同僚の職員だと思いますので、その部門の上司からみんなでサポートしていこうと周囲に伝えてもらい、取得しやすい雰囲気づくりをしてもらいたいと思っています。その反面、実際に職場ではどう受け止めているのかまでは測れていないので、アプローチの方法など今後の取り組みの中で改善していけたらと思います。
―支える側のサポートも必要になりますよね
そうですね。育休中の業務を円滑に進めるためには、周囲の協力が必要不可欠です。取得した職員の中では数ヶ月前から、育休の取得を周囲に公言して、業務を調整した職員もいました。まだ男性の育休取得については発展途上ですが、意識改革と工夫を重ね、取得事例が多くなっていくことで、浸透が進むと思っています。
―取得する人が増えれば増えるほど、後の人はどんどん取りやすくなると思うので、まずは地道に案内をしていくことが大事だと感じます。そのほかアナウンスで気をつけていることなどはありますか
産後パパ育休もそうですが、当行では、他にも看護休暇や介護休暇などの特別休暇があります。諸制度について、職員が正しく理解し、利用が進むように、制度概要や使えるタイミング、利用事例などを行内で発信しています。
―子どもがいる方だけじゃなくて、ライフステージが変わると事情も変わるからお互い様、という理解が進むといいですよね。全社員向けに誰でも活用できる、こういう制度があるよ、という周知はたしかに大事です
年間5日間では不足、不妊治療と仕事の両立のための制度運用について
―不妊治療で使える「出生サポート休暇」について、取得の状況や行員の声などがあれば教えていただきたいのですが、いかがでしょうか
休暇制度を利用した職員から、少し話を聞くことができています。利用者は6名で、無事妊娠・出産を迎えられた職員もおります。
その中で、高度治療(体外受精)をする場合は休暇の日数が足りないという話が出てきました。
当行の出生サポート休暇は、年間5日で40時間分利用できます。
利用者の声としては、高度治療になると、本当に頻繁な通院が必要となるので、到底年間5日間では足りない、という率直な声があがっています。私自身もその当事者であるので、2023年度分の休暇は使い切ってしまいました。不足分は、有給休暇を使ったりして、通院に充てているという状況ですね。
時間にすると40時間分はあるものの、この日数では足りないということは、課題として捉えていて、今後の改善に活かしていきたいと考えています。
一方で、時間単位で使えるのでありがたい、という声もあがっています。
たとえば受診時間が10時からの場合、一度出勤して受診時に中抜けし、時間単位で必要なだけ取得できる点は使いやすいと言ってもらえています。
他の課題としては、これまでの制度利用者は全員女性で、男性職員の利用がないということです。
女性の方が頻繁に病院に行く必要があるので、利用率が高いのは当然ですが、通院する中で夫婦での受診が求められる場面もありますので、女性限定の制度だと誤解が生じないよう、正しい内容について、職員の案内を徹底していこうと思っています。
悩んだ時に仕事を継続できる支援や環境づくりを目指して
―今新たに取り組んでいることや、今後の展望等があればお伺いしたいです
様々な状況の人がいるので、「特定の層にだけ」メリットがある事をするよりは、様々な事情の人が働き続けられるよう、支援を広げていきたいと思っています。
そして支える側へのアプローチをしていけたらと思っています。
どういう方法にしていくのかはまだこれから検討という段階ですが、当事者だけが恩恵を受けるのではなく、支える側への配慮が必要という視点は持っているので、平等感にフォーカスした取り組みを進めていきたいと思っています。
―それでは最後に、ぜひ行内の方にメッセージをお願いします
働きながら人生を歩んでいると、ライフイベントや家庭の事情があって、退職を考えてしまうことがおそらく誰にでもあると思います。
悩んだ時に仕事を継続できる支援があり、安心して働いてもらえる会社でありたいなと思っています。
私たち人事総務部はもちろん、会社全体で「人財」はすごく大事だと考えています。
両立できないことを理由に退職せざるを得ないということが本当に痛ましい気持ちですし残念です。制度を整備する、仕組みをつくることで、しっかりと支援していきたいと思っています。
―ありがとうございます。笹原さんって入社された時から人事のご担当なのでしょうか
いいえ、入行後の3年3ヶ月は、営業店で窓口業務や渉外業務をしていました。
4年目から人事異動で人事総務部の配属となったので、最初から働き方や働く環境というような人事部門の目線を持って働いているわけではないんです。実は私も1人目の妊活時、(すでに人事総務部にいましたが)、治療との両立が原因で退職を考えたこともありました。
―そうだったのですね。でも今は人事に異動したからこそ、変えられるのではないかという思いで取り組まれているのでしょうか
不妊治療サポートを始めたきっかけとしては、もともと当行は2015年4月に全国で初めての「プラチナくるみん」の認定を受けており、2023年から不妊治療との両立を支援する企業にプラス認定が追加されるということで情報収集を始めました。
過去に、不妊治療を理由とした退職が発生していたことや、国が不妊治療を保険適用化した社会情勢などから、支援の必要性は感じていました。少子化で山形県の人口も減っていますし、不妊治療に取り組みやすい環境を整えるべきという思いから、制度を整備してきたという経緯です。その結果、県内企業初となる「プラチナくるみんプラスの認定」をいただくことができました。
山形銀行は山形県のリーディングバンクです。私たちが地域経済をけん引する役割を持つと同時に、エンゲージメントやダイバーシティ等、職場環境の整備についても、先行した取り組みを行うことで、地域全体に良い影響を与えられる存在でありたいと考えています。
―ありがとうございます。行内はもちろん、地域のため、山形県のためにという視点がすばらしいなと思って聞いておりました。またお話の全般から、全員が働きやすい環境をつくろうという思いがすごく伝わってきます。ありがとうございました!
■ 会社情報
会社名 | 株式会社 山形銀行 |
所在地 | 山形県山形市 |
事業内容 | 預金業務、貸出業務、有価証券売買業務・投資業務、為替業務など |
設立 | 1896年4月14日 |
従業員数 | 1,119人(2024年3月末) |
公式ページ | https://www.yamagatabank.co.jp/ |