大腸内視鏡検査(下部消化管内視鏡検査)とはいわゆる大腸カメラのことです。
胃カメラより馴染みが少なく、受けたことがあるかたも多くはないのではないでしょうか。
日本人の死亡原因第1位はがんによるものですが、その中でも大腸がんで亡くなる方は多いです。2023年9月に厚生労働省が発表した【2022年の人口動態統計】によると、部位別がん死亡数の中で大腸がんは男性では肺がんの次に多く2位、女性においては1位が大腸がんでした。 この大腸がんですが、早期に治療を行えば完治が期待できるため早期発見がとても大切です。
大腸内視鏡検査とは
大腸内視鏡検査は胃カメラと同じような内視鏡のスコープを、お尻(肛門)から大腸の一番奥である盲腸あたりまでまず挿入します。奥まで到達したら内視鏡から空気を入れ、腸をふくらませひだなどをのばしながらスコープ引き抜きつつ大腸の中にポリープやがん、粘膜の異常などがないかを観察する検査になります。スコープの太さは1㎝ほどで胃カメラより少し太いです。
大腸内視鏡検査でわかること
大腸内視鏡検査でわかる主な疾患は大腸ポリープ、炎症性疾患、大腸憩室、大腸がんなどです。現在大腸がん検診は40歳以上を対象に年1回の受診が薦められていますが、大腸内視鏡検査はその中でも以下のようなかたに勧められています
・健康診断などで便潜血検査が陽性だった方
・家族に大腸がんになった方がいる方
・便に血が混じる方
・以前大腸ポリープを指摘されたことがある方
・便が細くなった、残便感がある方
大腸内視鏡はカメラの先から鉗子といわれる器具を出して気になる組織をとり検査に出すことができたり、近年はカメラの先から電気メスを出してポリープや初期の大腸がんの切除、下血時の止血処置なども行うことができます。大腸内視鏡検査は大腸がんやポリープを診断・治療するためにはなくてはならないものです。
大腸内視鏡検査のイメージ
みなさんの大腸内視鏡検査のイメージはどんなものでしょうか。 「お尻を見られるなんて恥ずかしい。痛そう。下剤など検査前の準備が大変そう。」などでしょうか。 わからないからこそ不安が大きいですよね。今回は大腸内視鏡検査の不安や疑問が少しでも減るように、検査の流れを一緒にみていこうと思います。
大腸内視鏡検査のながれ(あくまで1例になります)
〈検査前日〉
検査前日は検査食や病院から指定されたような低脂肪・低たんぱく・低繊維の消化のいい食事を食べます。
病院から前日の下剤をもらっている場合は内服し、ある程度便を出します。
〈検査当日〉
・朝から食事は食べられません。
・検査用の腸管洗浄剤(下剤)をコップ1杯ずつ1.5~2L飲んで腸をきれいにします。飲む量に幅があるのは腸がきれいになる下剤の量には個人差があるからです。1.5L飲んでもまだ便に固形物や浮遊物がありきれいになっていない場合は、指示を確認し下剤を追加で飲みます。
・便が透き通りきれいになったら、検査時間に合わせて病院へ行きます。
【病院によっては検査用の下剤を家ではなく病院で飲むところもあります。また下剤の大量の水分を摂ることがどうしても苦手な場合や、持病でたくさんの水分を制限されている場合などは錠剤タイプもありますので医師に相談してみましょう】
〈来院後〉
検査着に着替えます。検査着はお尻が隠れる長い上着に、下は膝丈の検査用パンツのことが多いです。検査用パンツはお尻のところに切れ込みが入っており、普通にしているとお尻は見えにくいですが、検査時横になった時にそこから内視鏡を挿入していけるようになっています。 パンツを脱ぐわけではなく、また検査時はタオル等をかけてくれる施設が多いので医師にもおしりはほとんど見えません。検査中の便もれなどを心配される方も多いですが、下剤で腸の中はとてもきれいになっていますし、検査中はスコープの先から腸の中にあるものを吸引しながら観察していくので、検査中や検査後に便を漏らす心配はほとんどありません。
〈検査中〉
検査台に横になります。緊張しますね。検査時間は個人差がありますが15分~30分くらいで終わることがほとんどです。
ひと昔前の大腸内視鏡検査のイメージの多くは「痛い」だったと思います。あまりに痛くて中断してもらった方、なんとか最後まで受けたけれど2度と受けたくないと思っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。この「痛み」が大腸検査を受けない原因のひとつになっていたと思います。大腸内視鏡検査で痛みが起こる理由は大きく2つあります。
1つ目は『腸の曲がり』です。特にS状結腸という部分は文字どおりS字型に腸が曲がっておりここを内視鏡が通過する時に痛みが出ます。
2つ目は『腸管の膨らみによるお腹の張り』です。内視鏡を挿入する時や、抜きながら観察する時に、よく観察するためにスコープから空気を入れ腸の中を膨らませます。この膨らみによりおなかが張り、痛みが出現します。では昨今はどうでしょうか。痛みに対しては、静脈麻酔で鎮痛剤や鎮静剤を使用し緊張をやわらげ、痛みを軽くして受けられる施設が増えました。おなかのはりに対しては、空気ではなく炭酸ガス(二酸化炭素)を使用する施設が増えました。炭酸ガスは体内吸収率がよく、空気の約200倍速く腸管内で吸収されるためにお腹のはりや痛みの軽減につながります。筆者自身もかつて大腸内視鏡検査は「痛い」という先入観があり敬遠しがちだったのですが、一度鎮静剤を使用し検査を受けたら痛みがほとんどわからず、これなら毎年でも受けられると思いました。
話をもどしましょう。鎮静剤や鎮痛剤を使用していざ検査が開始したあとは、できるだけお腹の力をぬいてリラックスしましょう。指示に従い時々からだの向きを変えることがあります。これは腸の走行にそってスコープを挿入しやすくするためです。
もしポリープや検査に出す組織などがあれば、スコープの先端から器具を出し組織を採取することもあります。また、大腸内視鏡検査は体の向きによっては自分の腸の中をモニターで見ることができますよ。
〈検査後〉
鎮静剤等を使用した場合、検査後はしばらく休んでから帰宅することになります。
検査結果の説明は次回の施設もあれば当日の施設もありますのでご自分が検査をうける施設に確認しましょう。
5.おわりに
ざっと大腸内視鏡検査についてお話してみましたがいかがでしたか。
大腸内視鏡検査のイメージがすこしついたでしょうか?
みなさんが大腸内視鏡検査の正しい知識をもち、大腸内視鏡を敬遠せず適切に受診することで疾患の予防や早期発見につながれば何よりうれしいです。
参考文献
・厚生労働省
令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省
・日本消化器内視鏡学会:大腸内視鏡検査と治療