【人事制度】不妊治療休暇を取り入れるために、健康課題に対しての社内制度

健康課題に対しての社内制度を整えることは、生産年齢人口の減少や、社員の高齢化の影響から、会社として真摯に取り組むべき課題となっています。

人材確保も難しいなか、心身に何らかの不調をきたしながら働く社員を多く抱えるということは、結果として会社全体の業務の質を落とすことになり、生産性の面でも得策ではありません。

社員の心身の健康、人生に寄り添った経営をすることで、社員の健康が増進し、病気などによる長期休業や退職を未然に防ぐことができます。

それは社員のみならず、会社にとっても健康で長く働いてもらうことで優秀な人材の確保ができ、メリットが大きくなります。

また、社員が心身共に健康で長く勤められるということは、採用市場でも優位に働きます。

現在は仕事内容や給与のみで求職活動するのではなく、プライベートの確保に重きを置く考えが浸透しつつあり、健康課題に対しての社内制度を整える事は、そのようなライフスタイルの多様化の時代において、新しい人材確保についても優位にはたらく事が予想されます。

有給取得率の変化

厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況※1

令和4年労働者一人平均年次有給休暇取得率は 58.3%(同 56.6%)となっており、昭和59年以降過去最高の取得率になっています。

平成31年4月、有給休暇年5日の取得義務化がはじまって以降、着実に有休取得率が向上したことがこの表で分かります。

産前産後休業、育児休業取得率状況

 厚生労働省 平成27年度仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査※2

この表を見ると、正社員の9.9%は利用したかったにもかかわらず、利用できていません。更に非正社員の場合は29.3%に跳ね上がります。

しかし、産前産後休業の取得をした場合、正社員も非正社員も同程度の期間を休むことができています。

男性の育児休業取得は女性と比べて3分の1程度で、まだまだ浸透していないのがわかります。

有給休暇取得までの課題

有給休暇を取りやすくするためには、会社が社員一人一人の業務量などを把握し、誰かが有給を取得したとしても対応できるように担当業務を柔軟に対応するなどの措置が必要です。

・有給取得のための申請ステップ

極端に手間のかかる手順を踏ませたり、取得申請は1カ月前には行わなければならないなどのルールを設けてはいけないことになってはいますが、一般的に一週間前から遅くとも前日までに口頭で伝え、メールしたうえで申請書を作成、上司の許可を得て人事で承認されるのが一般的です。

理由も私用で良いのですが、こんな理由で取得しても良いのかと気にする場合も少なくありません。

気兼ねなく取得するにはまだまだ改善の余地があると思います。

・制度の活用

年次有給休暇や生理休暇、通院休暇、看護休暇や介護休暇など、会社として制度を整えていたとしても、活用されなければ意味がありません。

上司、部下、会社全体が理解を深め、休暇を取得しやすい環境にしなければなりません。

不妊治療休暇の課題

有給休暇や、出産・育児休暇は近年取得率も上がってきましたが、不妊治療休暇に関してはまだまだ課題があるように感じます。

申請・プライバシーの壁

申請する際、上司に申請書を提出しなければならないので、治療を受けていることを職場に知られたくない場合、申請を断念する場合があります。

プライバシーに配慮できるように、職場・上司・本人の間に入るような第三者的視点を持つ産業医を置いたり、不妊治療でも使えるような休暇制度を設けてみるのも効果的かもしれません。

・キャリアの壁

不妊治療は、通院回数の多さから日程調整が難しく、精神的にも負担になり離職を選択する場合もあります。会社は両立支援を積極的に行う必要があります。

・理解の壁

不妊治療に理解のない上司や同僚の場合、申請した社員を大きな仕事から外したり、嫌がらせや不利益な扱いなどをしてしまう場合があります。

些細なからかいや冗談なども、当事者を傷つける場合がありますので、十分留意する必要があります。

さいごに

女性の社会進出が進み、仕事との両立のために家族計画を立てたうえで妊娠を考える夫婦が増えています。

さらに医学の進歩による選択肢の大幅な増加や、社会情勢の変化もあり、高齢出産や、働きながら不妊治療を受けるケースは増加傾向にあります。

そういった傾向に会社は、妊娠前から妊娠後まで、社員が安心安全に長く働き続けられる環境を整える必要があります。

社内制度だけではなく、社会全体で不妊治療、育児について考えるべきです。それは少子高齢化社会の今、次世代の育成をするために必要不可欠な課題だと思います。

参考:

厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況※1 

厚生労働省 平成27年度 仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査※2