~人口動態統計を読み解く~ 『ひのえうま』にご用心!2026年の出生数は史上最悪になる?? 

こんにちは。胚培養士の川口 優太郎です。今回は、日本の人口動態統計とと或る“迷信(めいしん)”についてのお話しです。この“迷信”ですが、実は生殖医療の歴史と非常に深く関わりのあるもので、言ってしまえば非科学的な俗信(?)でありながらも、過去には日本の人口動態に非常に大きな影響を与えています。本コラムでは、過去の史実を取り上げながら、2026年に一体何が起こるのか?!について思慮をめぐらせてみたいと思います。

合計特殊出生率が過去最低に

すでに、ニュースなどでも報じられておりご存知の方も多いかと思いますが、1人の女性が産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」の最新の統計が発表され、2023年は『1.20』となり、日本で統計調査を開始してから最も低い数字であったことを厚生労働省が報告しました。2022年と比べると0.06低下していて、過去8年連続で前の年を下回っています。

さらに、都道府県別での調査結果も報告されており、東京都は『0.99』と1.0を下回る数字となっています。2023年に日本で産まれた子どもの数は727,277人で、前年より43,482人減少し、こちらも統計調査を開始して以降最も少ない数字となっています。

ベビーブームと団塊の世代

ここで少し日本の歴史を振り返ってみます。第二次世界大戦終戦後の日本では、戦地から引き揚げてきた方々が続々と結婚をされたので、婚姻件数が1947年に93万件、1948年に95万件と90万件を超える件数となりました。その後は少し低下しますが、1960年代後半から再び上昇傾向となり、1971年のピーク時には110万件になりました。

いわゆる「ベビーブーム」は、婚姻件数が増加したこの2つの山((1)1947~50年、(2)1971~1974年)に起因していて、1947年から1950年に生まれた方々は俗に「第一次ベビーブーム(団塊の世代)」と呼ばれます。そして、高度経済成長やバブル景気を経験したこの「団塊の世代」から産まれた子どもの山が「第二次ベビーブーム」である1971年~1974に当たります。第二次ベビーブームの1971年から1974年では、出生数がなんと毎年200万人を超えており、1973年には出生数が約210万人と報告されていますので、現在と比較すると実に3倍近い子どもが産まれていたということになります。

その後は一転、出生数はどんどん減少していき、2016年にはついに100万人を割って97万人となってしまいます。2025年には、先述した「団塊の世代」が、75歳以上の「後期高齢者」となるため、後期高齢者が一気に増加することで、介護や医療などといった面での社会保障費の増加が非常に懸念されています。

少子高齢化によって日本の持続可能性が失われつつある

少子高齢化が進む原因としては、

多様性などの観点から未婚化が進んでいること。

女性の社会進出、地位の向上などから、晩婚化が進んでいること。

経済的、あるいは環境的な面から子どもを持たない選択をする夫婦が増加していること。

結婚や出産、子育てに対する価値観が変化していること。

物価高騰などによって経済的に不安定な世帯が増加していること。

などが背景にあると考えられていますが、少子高齢化が進行していくと、当然ながら社会保障制度に大きな影響を与えます。子どもを産みやすい環境・育てやすい環境を整備することが最重要課題であると言われており、政府も様々な少子化政策を謳っていますが、出生率『1.20』という数字からも、実際その効果は乏しいと言わざるを得ません。

『ひのえうま(丙午)』の迷信

ここで再度、歴史の話しに戻ります。結婚件数も出生数も昔は今よりずっと多かった‥‥というお話しをしてきましたが、実は1960年代の“ある年”だけ、出生数前年比マイナス25.4%という大幅な減少を記録した年があります。

そのある年とは『1966年』の午年(うまどし)。

干支(えと)というと、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥から成る十二支(じゅうにし)を連想される方が多いかと思いますが、本来は、この十二支と甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸から成る十干(じっかん)を組み合わせたものを干支と呼びます。十二支と十干を組み合わせた干支には全部で60種類あり、それぞれの干支に様々な言い伝えや習わしがあります。

1966年の干支は『丙午』。“へいご”の年や“ひのえうま”の年と呼ばれますが、この丙午の年には様々な迷信があり、

「丙午年の生まれの女性は気性が激しく夫の命を縮める」

「丙午年には災害(火災)が多い」

「丙午年に生まれた子どもは食うのに困る」

などといったネガティブなイメージを連想させる迷信が多くあります。そのため1966年は、この迷信の通り妊娠・出産を避ける夫婦が増加したことで、出生数前年比マイナス25.4%という大幅な減少を伴う不自然な数字となったのです。

同様の事項は、明治36年(1906年)にも見られます。この年も干支は同様に『丙午』年で、妊娠・出産を避ける夫婦が多かったようなのですが、1966年とは一つ異なる点があり、前年の1905年と後年の1907年に女児の出生数だけ不自然に増加傾向に推移していることです。 これは、丙午年に生まれた女性への偏見・差別を避けるために、1906年に産まれた女児の出生年月日を、前年または翌年にずらして国に提出したためであると考えられており、俗に「生まれ年の祭り替え」と呼ばれています。今の法律ではとても考えられないことが1906年では当たり前に行われていたということですね。

2026年の出生率は史上最悪になるかも?!

先述した通り、干支には60種類ありますので、60年に一回のペースで「丙午」の年がやってきます。そして次の丙午年は『2026年』。

丙午の年の迷信は、江戸時代に起こった事件(※八百屋のお七 放火事件)がモチーフになっているとされており、根拠のまったく無い非科学的な俗信であるものの、世間ではいまだに根強く、メディアなどで取り上げられる機会も多くあります。現代の日本で、この迷信を信じている人がどれだけいるかはわかりませんが、少なくとも1966年以前まではかなり広く・強く信仰されていた言い伝えであることは確かです。

2021年から2022年で出生数が前年比マイナス4.9%と報告されていますが、たとえ2023年、2024年、2025年と前年比マイナス1.0%であったとしても、2026年の出生数は60万人を優に割り込むと試算されています。

未来の子どもたちに何を残したいのか。そして、未来の自分がどう在りたいのか。

このような“迷信”ではなく“現実”的な数字をもとに、妊娠・出産が有限であることを十分に知っていただいた上で、是非、個人の将来的なライフプランニングを行っていただけたらと思います。

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