日本でフェムテックが話題に上るようになったのは、2020年。フェムテック元年と言われています。女性のライフステージにおける健康の問題を解決するサービスや製品が、次々と登場しました。きょうは、政府が支援しているフェムテック6分野とは何か、フェムテックがなぜ必要されているのか、実際フェムテックを取り扱う企業のリアルな声をご紹介していきます。
フェムテックとは
フェムテックは、Female +Technologyを掛け合わせた造語です。女性のライフステージにおける課題と健康の問題を技術で解決する製品とサ-ビスのことです。女性の社会進出に伴い、雇用期間も長期化している中で、女性は健康課題をさまざま抱えています。女性が更に社会で活躍するために、ファムテックは重要な役割を担っているのです。
・フェムテックの経済効果と政府の支援
フェムテックの経済効果は大きく、経済産業省の調査では2025年には約2兆円になるものと推測されています。そのおもな内訳は、「月経分野」で年間約2400億円、「妊娠・赴任分野」では年間3000~5000億円、「更年期分野」では年間1.3兆円です。
経済産業省では、「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」をフェムテックを活用した働く女性の就業継続支援として支給しています。支給の対象になるのは、フェムテック製品を提供している企業、フェムテック等の製品・サービスを導入している企業、医療機関、自治体などです。
経済産業省によると、補助金の目的は「働く女性の妊娠・出産・更年期等ライフイベントに起因する望まない離職等を防ぎ、企業の人材多様性を高め、企業の価値創造につなげることを目指します。 間接補助事業においては、フェムテック企業と導入企業(女性を雇用する企業)、自治体、医療機関等が連携し、働く女性の健康の悩み等を解消するため、地域の実情やニーズに応じた形で、フェムテックを活用したサポートサービスを届ける実証事業を行います。」となっています。
・フェムテック産業実態調査の適用分野とその実態
令和2年、経済産業省は産業経済研究委託事業として、実態調査を依頼しました。調査のフェムテックの適用分野を6分野にしています。「月経」「妊娠・不妊」「産後ケア」「更年期」「婦人科系疾患」「セクシャルウェルネス」の6つです。
「月経」
月経痛や月経前症候群 (PMS)は、月経経験者の約97%が辛い症状を経験しています。
18歳から49歳までの働く女性の94%は、月経の症状によって仕事のパフォーマ ンスに影響があるとの声があります。また、45%はパフォーマンスが 半分以下になると回答しました。しかし現場では、生理休暇の取得者も少数で、PMSに効果のある定量ピルの服用率も低いのが現状です。
「妊娠・出産」
出生率の低下と出産の高齢化は進む一方で、第一子を35歳以上で出産する女性は、21.1%までになっています。高齢出産は母体と胎児の両方にリスクがあります。女性の年齢が上がると、妊娠の可能性は低くなると考えられています。日本は不妊治療を受けている夫婦は約 5.5組に1組です。働いている女性の中で、仕事と不妊治療が両立できずに離職する女性は23%もいます。
「産後ケア」
妊娠中と産後1年未満で死亡した女性の死因の原因の一番多いのは自殺です。うつ症状は妊娠中の妊婦で約10%、産後1年未満の産婦の中の10~15%に見られています。
「更年期」
女性の閉経前と閉経後の各5年を更年期と言います。その間、更年期の女性は、ほてり・のぼせ・ホットフラッシュのほかにいらいらしたり、気分がおちこんだりします。仕事のパフォーマンスへの影響は、自覚症状のある40歳以上の女性の中で95%があると回答。46%の女性がパフォーマンスはいつもの半分以下になると答えています。さらに更年期症状があるために昇進を辞退した女性は約50%、退職したひとが約17%もいることがわかりました。
「婦人科疾患」
女性特有である病気の乳がんは年間33万人が、子宮頸がんは毎年1万人が罹患しています。不妊症の原因とされる子宮内膜症は罹患者が260万人以上いると考えられて いるのです。しかし、検診率はいずれも低く、乳がんで50~69歳の女性の検診は約40%、子宮頸がんの検診率は20~69歳の女性の約40%に過ぎません。子宮内膜症の検診も6.7万人で、症状があっても検診する人は少ないのが現状です。
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フェムテックを取り扱っている企業例
女性が働きやすい環境と健康問題を改善するために、フェムテックを取り入れている
企業が増えてきています。今回は、その中から2社を紹介します。
・丸紅株式会社
「私たちは、働く女性をサポートするフェムテックのサービスの提供を通じて、企業における多様な人材を受け入れ活用していくことで健康経営を推進していきます。会社と社員、社員同士がお互いに思いやりあえる社会を作っていくことで、働く女性のQOLが向上するだけでなく企業の魅力や競争力が増していくと考えています。」
・株式会社ルナルナメディコ
フェムテックのための商品開発をしている会社です。「自社の福利厚生としてピルのオンライン処方と女性のカラダの知識講座を提供することで、従業員のパフォーマンスが良くなったと感じている。一方福利厚生への導入は「女性だけがずるい」と言われてしまう懸念や、男性の意思決定者には必要性を理解してもらうのが困難と言う障壁がある。社内研修で女性の健康に関する知識を等しく高め、男女ともに働きやすい職場作りに貢献することで、女性だけという不公平感をなくすことが有効と考えている。」
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まとめ
フェムテックのための商品、サービスを提供する会社が増えてきている反面、企業の福利厚生として取り入れることに足踏みしている企業もあります。共に働く女性のライフステージの変化で生じる健康状態を正しく理解し受け入れることは、自社の発展につながるとの認識は大切です。女性自身も検診、受診をきちんと受けること、その上で、フェムテックの製品やサービスを上手に利用し、自身の健康とキャリアを守ってください。
参考文献:
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/R2fy_femtech.pdf
(令和2年度産業経済研究委託事業 働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に 与える効果と課題に関する調査 報告書 (概要版) )
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/femtech/femtech.html
(フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援)
https://j-femtech.com/
(フェムテック協会)
http://www.am-one.co.jp/warashibe/article/fuyasu-20230427-1.html
(わらしべ瓦版)