2019年12月に中国湖北省武漢市の原因不明の肺炎から始まり、世界的大流行に至った新型コロナウイルス感染症ですが、ワクチンの普及により、流行がある程度コントロールできるようになり、2023年5月から5類感染症に位置づけが変更になりました。しかしその後も、ウイルスが変異することで、ワクチンだけでは完全に防ぐことが難しく、感染の流行が繰り返されています。最近では、感染者数が再びじわじわと増加してきています。
夏休みに入り、旅行や家族・友人などの集まりが増える今、安全に夏を楽しむために、改めてコロナウイルス感染症について正しい知識を持ちましょう。
新型コロナウイルス感染症とは
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)による感染症です。2020年1月30日にWHOにより国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)が宣言されましたが、2023年5月に解除され、日本でも5類感染症に引き下げられました。
感染経路
飛沫(ひまつ)感染(+エアロゾル感染)/ 接触感染
ウイルス自体は自分自身で増えることはできません。しかし粘膜などの細胞に付着して体内に入り込んで増えることができます。そのため感染者との直接接触はもちろん、感染者の口や鼻から、咳、くしゃみ、会話等の時に排出されるウイルスを含む飛沫や、エアロゾルと呼ばれる小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入する事により感染します。一般的には1メートル以内の近接した環境において感染しますが、エアロゾルは軽いため1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。
コロナウイルスは健康な皮膚から直接体内に入り込むことはできず、皮膚に付着したウイルスは時間がたてば壊れてしまうと言われていますが、物によっては付着後24時間~72時間くらい感染する力をもつとも言われています。そのためウイルスが付いたものに触った後、手を洗わずに、目や鼻、口を触ることにより感染することもあります。WHOは、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存すると報告しています。
症状
発熱、倦怠感、頭痛、咽頭痛、咳、鼻水、味覚・嗅覚の異常などが一般的ですが、ウイルスの種類により症状の出方が異なり、またワクチン接種歴によっても症状には個人差があります。
重症化リスクの高い方
- 65歳以上
- 肥満
- 喫煙者
- 持病のある方:高血圧、糖尿病、がん、慢性肺疾患、慢性腎疾患、心臓や脳血管疾患、HIV感染症、免疫不全など
- ステロイドなどの免疫を抑える薬を服用している方
- 妊娠後期の方
当てはまる項目のある方は、十分な感染予防、そして早めの受診を心がけましょう。
感染対策
換気
自室のみならず、共有スペースも定期的に窓を開けて換気を行いましょう。ただし夏場は、熱中症予防に注意が必要です。熱中症の約4割は住居内で発生していますので、室温が高くなりすぎないよう、日中の無理な換気はせず、熱中症予防を優先してください。
手洗い
手指消毒などの手指衛生:手洗いは、流水だけで洗ったとしてもウイルスを流すことができるため有効ですが、石けんを使った手洗いはコロナウイルスの膜を壊すことができるので、更に有効です。手洗いの際は、指先、指の間、手首、手のしわ等に汚れが残りやすいといわれていますので、これらの部位は特に念入りに洗うよう心掛けてください。また、流水と石けんでの手洗いができない時は、手指消毒用アルコールも同様にウイルスの脂肪の膜を壊すことができ、感染力を失わせます。
マスクの着用
マスクの着用は、個人の判断が基本となりました。しかし、マスクをすることでインフルエンザなどの感染が予防できることは、すでに公衆衛生学的にも証明されています。高齢者や基礎疾患をお持ちの方は感染リスクが高いため、ご自身を感染から守るためにも、また周囲の方に感染を広げないためにも、マスクの着用が有効です。
感染が疑われた場合
体調に異変を感じたら、まずは抗原定性検査キットでセルフチェックをしましょう。
ただし発熱などの症状があり、かかりつけ医がいる方、そして持病のある方は、かかりつけ医に電話で相談し、指示に従ってください。
かかりつけ医がおらず、診察等を希望される場合は、医療機関案内サービスを活用しましょう。
また検査の公費負担やPCR等検査無料化事業・抗原検査キットの配布は終了しています。検査キットを購入される際は、外箱の表示を確認し、[体外診断用医薬品]もしくは[第1類医薬品]と記載のある、国に承認されたものを購入・使用してください。詳細については、こちらからご確認ください。
外出を控えることを推奨される期間は、「発症日を0日目として5日間(無症状の場合は検体採取日を0日目とする)」、かつ、「5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまで」です。
新型コロナウイルス感染症は、発症2日前から発症後7から10日間は感染性のウイルスを排出していると言われています。また発症後3日間は感染性のウイルスの排出量が多く、5日経過後は大きく減少する事から、特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高く注意が必要です。排出されるウイルス量は発熱や咳などの症状が改善するとともに減少しますが、症状軽快後も一定期間ウイルスを排出するといわれていますので、注意しましょう。
ワクチン
新型コロナワクチンの全額公費による接種は、2024年3月31日で終了しました。そのため、ご希望の方は任意接種として、自費で接種していただくことになります。ただし、2024年度秋冬より、原則有料ではありますが、自治体による定期接種が始まります。対象となるのは、65歳以上の方、60~64歳で対象となる方(心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、HIVによる免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方など)です。詳しくは、各自治体にご確認ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。5類感染症に引き下げになってから、どう対応をしたら良いのかわからなくなってしまった、という話をよく耳にするようになりました。ご自身が感染してしまった時、身近な人が感染してしまった時、このコラムを読んで正しいご対応をしていただけたらと思います。
後編では、最新のコロナウイルス治療薬について薬剤師より解説していきます。自己負担額などの変更もありましたので、後編も併せてご一読いただけますと幸いです。