<取材>キャリアかプライベートかではなく、キャリアもプライベートも自分らしく 選択肢を広げるために会社ができるサポートとは ―株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ

今回は、全国でウェディング事業やホテル事業などを主軸としたホスピタリティ事業を展開する「株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ」を取材しました。

2024年 3月から始まった、女性従業員特有の健康課題をサポートする福利厚生施策『Femself BOX(フェムセルフボックス)』の導入経緯や、キャリアとプライベートの両立のための取り組みについて、人事部長の酒井さんにお話を伺いました。

自身の身体とキャリアへの向き合いを福利厚生制度で後押し

― 昨年(2023年)のファミワンカンファレンスでは、子育てと仕事との両立、継続したキャリアをかなえる施策についてお話しいただきました。この春から新たに、福利厚生として『Femself BOX(フェムセルフボックス)』の運用を始められたと伺いました。企画や導入の経緯をぜひお聞かせください

『Femself BOX』は、従業員のウェルビーイングの支援を強化する取り組みの一環として、特に女性の心身の健康に関する課題を解決したいというところがスタートでした。

当社の場合、単体での社員数が1350人ほどで、そのうち女性が約6割という状況です。現場で働いている社員に限ると約8割が女性となっています。平均年齢は32.8歳で、多くの若い女性が活躍している状況です。

女性の場合、スキルが身につきこれからさらに活躍できるというタイミングで、結婚や出産など次のライフステージを考える時期が重なることが多々あります。

会社としては、従業員それぞれが自分の身体とキャリアの両方にしっかり向き合い、自らが選択できるよう後押しする仕組みをつくりたいという想いで、この『Femself BOX』を企画、導入しました。

Femself BOX(フェムセルフボックス)とは

「Femself」はfemale(女性)とself(自身)を組み合わせた造語。『Femself BOX』には、オンラインピル処方、女性特有の健康課題相談窓口やAMH検査、卵子凍結費用補助、DE&I推進動画サービスなどが含まれている。

https://www.tgn.co.jp/news/post/293/

―この『Femself BOX』では、今の自分に必要な支援を選ぶことができて、先のキャリアを考えるきっかけにもなりそうですし、選択肢が増えるという点ですごくいい取り組みだなと感じています

そうですね。低用量ピル費用の半額補助や卵子凍結費用補助、AMH検査や女性特有の健康課題に関する相談窓口の提供など、今の自身の状況に応じて利用できる施策となっています。

私たちとしては、制度の社内認知はしっかり行った上で、必要な人が必要な時に制度を利用できる環境を、会社として整えることが重要だと思っています。

ライフステージは、社員一人一人によって考え方や進み方が異なります。自身が次のライフステージを意識する立場になったときに、「キャリア」と「プライベート」、どちらかを諦めるのではなく、どちらも妥協せずに自分らしい人生を歩んでいく、そんな使い方をしてもらえたらいいなと思っています。

また、特に意識したのは、正しい知識を身につけた上で、選択肢を広げてほしいという点です。ヘルスケアやDE&Iに関する動画やセミナーの視聴環境を提供することで、正しい情報や知識を得ることや、DE&Iへの理解を促進する取り組みとなっています。若手の社員が多いからこそ、広く正しい知識の提供と、自ら選べる環境の提供が重要だと考えています。

―この『Femself BOX』の提供を始めて、実際の従業員のみなさんの反応はいかがですか

社内外への告知は、3月8日の国際女性デーに合わせて行いました。
社内に対して通知した際は、いいねボタンでリアクションが返ってきたり、推進室のメンバーに直接「感動しました」や「うれしいです」といった連絡もきているようです。

オンラインピル処方については、4月の開始から、すでに10名ほどが利用しています(2024年7月現在)。

―少ないとは言え男性の社員もいらっしゃるとは思いますが、不公平感が出ないような工夫はされていますか

オンラインピル処方や卵子凍結費用補助などは、たしかに女性社員のみ対象の制度になりますが、今のところ男性社員から、性別によって福利厚生が違う、といった声はあがってきてはいません。 また、ダイバーシティやヘルスケアに関する動画やセミナーの視聴は、性別に関わらず利用可能です。男女ともに正しい知識を身につけ、自身の行動のヒントや相互理解につなげてほしいと考えています。

ウェディングプランナー以外の選択肢で働き続けられる環境も用意

―若い女性が活躍されている環境ということで、継続して働き続けやすい仕組みや制度の整備を推進されていますが、もともと課題感があったのでしょうか

当社はホスピタリティ業という特性上、土日祝日の出勤が発生しますが、以前より仕事と子育ての両立がしやすい環境や制度の整備を進めてきました。そのため、育休からの復帰率も非常に高い状態です。

創業して25年ほど経ち、継続して勤務する従業員のライフステージの変化を感じています。

特に、お子さんの成長に伴い、働き方を変えたいという声も増えてきました。保育園に預けられるうちは土日も勤務できていた方も、小学生になると状況が変わります。土日はなるべくそばにいるような働き方をしたいと考えた時、現場でウェディングプランナーやその他の職種で働き続けることが難しくなってきている人が増えているのが現状です。

―なるほど、継続して働けているからこそ出てきた声とも言えますね

会社としては、キャリアの選択肢を広げることが重要と考えています。副社員制度やフリーウェディングプランナー制度、そして社外の親和性の高い企業と提携し、当社に在籍したまま他社で数年間働く経験ができる「社外留職制度」などもあります。

―職種や働き方を変えて、土日休めるような環境で勤務もできるということですね

そうです。「社外留職制度」は、他社での勤務を通じて経験を積むことで、成長の幅が広がる点がメリットです。全く違った視点で異なる仕事の領域を学び、戻ってきた後も、新たな視点やスキルを持って活躍してもらえることを期待しています。「副社員制度」は、週末も含めて勤務する日数や曜日、時間などを個別に相談して決められるので、この制度を利用している社員は多いです。

あとは、この4月からスタートしたのがフィールドトレーナーと呼ばれる教育係です。全国の各拠点に配属される新人ウェディングプランナーに対し、オンラインでの教育や育成を担当しています。勤務地や勤務曜日の制限が少ないため、育児中の社員を中心に、今まで培った経験やスキルを活かして活躍してくれています。

―ここまでのお話を伺う中で、従業員の声や状況をキャッチアップして、しっかり施策に落とし込めているなと感じます

そうですね。当社の場合、現場の社員から直接状況や課題を聞いたり、今考えていることの、実現可能性をヒアリングしたりと、社内で協力しながら制度や仕組みを作っていきます。

全社的に、新しいことをどんどん考えてやっていこうというオフェンシブな感じが根付いているので、人事だからとか現場だからなど部署間の垣根なく、自然発生的に生まれてくるものも多いと思います。

全館一斉休館への挑戦

―全国の店舗で一斉休館日を設定されたと伺いました。業界的に珍しい取り組みだと感じていますが、実施を決定されたきっかけや背景をお聞かせください

全館一斉休館は来年度のスタートとなり、2025年は6月6日(金)から6月10日(火)が休館日となります。対象は当社が運営する全国の直営結婚式場、ドレスショップ、ケーキ工房などです。休館中は「リチャージ休暇」の取得期間とし、従業員は5日間の連休を取得可能です。

現在も、個別に休暇制度を使って土日を含む連休の取得はできますが、現場が動いているとお客様や他の店舗スタッフのことが気になってしまうという声もありました。心置きなく休んでしっかりリフレッシュできる環境をつくりたいという想いで、この全館一斉休館という期間を設けたという経緯です。

決定に際しては、機会損失や業績への影響など、社内からいろいろな意見が出ました。それでも、従業員の心身の健康やエンゲージメントの向上を優先し、一斉休館を決めました。

―売上などへの影響を考えると、いろいろな意見が出るのは想像できます。ただ、業界としてはインパクトのある施策なのかなと感じています

私たちはウェディング業界のリーディングカンパニーとして、職場環境の整備についても先行した取り組みを行い、業界全体に良い影響を与えたいと考えています。

私たちの取り組みを見て、他の同業他社にも追随してもらうことで、業界全体の働き方や環境に対する印象を変えていけると良いなと思っています。また環境整備により勤続年数が上がることで、お客様により質の高いサービスが還元されたり、この業界を志望する人材が増えるなど、良い影響につながると考えています。

今後の展望

―働きやすさや働く環境の整備という点で、今後の展望や想いをお聞かせください

そうですね。まだまだやるべきことはありますが、当社の理念やビジョンに共感して働いてくれている従業員のみなさんが、長く働きたいと思う環境はどんな環境かを考え方の軸として、1つ1つ取り組んでいきたいと思っています。

その中で、責任の重い仕事を若い年齢で担っているスタッフも多いため、やはり心身の健康にはきちんと目を向けていくことが重要です。

休みやすい環境の整備はもちろんですが、ただ休むだけではなく、できれば休みをうまく活用しながら自分なりのインプットを増やして、個人の成長につなげてほしいと思っています。そこまでバックアップできるように、これからの仕組みや制度を考えていきたいと思っています。

ー自身の心身の健康を仕事に活かしてほしいという考え方は大変参考になります。キャリアかプライベートかではなく、キャリアとプライベート両方を大事にしてほしいという想いが伝わってきました。自分の健康や幸せが、お客様の喜びにつながるというのはうれしいことですよね。本日はありがとうございました!


■ 会社情報

会社名株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ
所在地東京都品川区
事業内容ウェディング事業、ホテル事業、コンサルティング事業、
オートクチュールデザイン事業、レストラン事業、ドレス事業 ほか
設立1998年10月19日
従業員数【単体】1,358名(2024年3月31日時点)
公式ページhttps://www.tgn.co.jp/