ファミワンカンファレンス2023レポート【パネルディスカッション「カルチャーとサポート~職場の理解と妊活・子育てを両立するための環境づくり~」】

ファミワン主催の「ファミワンカンファレンス2023」を2023年11月16日にオンラインで開催いたしました。

昨年に続き2回目の開催となる本カンファレンスは、『エンゲージメントを高める「組織風土づくり」のヒントとは』をメインテーマとし、「従業員のエンゲージメントを高めるにはどんな事を行えばよいか」「各社はどんな課題をもっているか」など、妊活支援・DE&I(※)とウェルビーイングを実践する企業の具体的な取り組みやその課題について、登壇者、参加者の皆様と一緒に考える場となりました。

※DE&Iとは:『多様性(Diversity)、公正性(Equity)、包括性(Inclusion)』を指し、組織や社会において異なるバックグラウンドや立場の人々に平等な機会と尊重を提供するための取り組みです。


本記事では、「カルチャーとサポート~職場の理解と妊活・子育てを両立するための環境づくり~」をテーマに開催したパネルディスカッションの様子をダイジェストでお伝えします。

多様な従業員を抱える企業の人事部の方々をお招きし、DE&Iの観点での具体的な取り組み事例、また、制度を整備する中でどんな想いや葛藤があるか、どんな事をサポートすべきか、などをお話しいただきました。

パネリストには、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 人事部 マネージャー 山本 明子氏、大成建設株式会社 管理本部 人事部 人材いきいき推進室 主任 中平 望美氏、株式会社山形銀行 人事総務部 ダイバーシティ推進室 笹原 裕香氏をお迎えし、株式会社ファミワンの不妊症看護認定看護師 西岡 有可がファシリテーターを務めました。

アーカイブ

パネルディスカッション「カルチャーとサポート~職場の理解と妊活・子育てを両立するための環境づくり~」の全ての内容はカンファレンスアーカイブよりご視聴いただけます。

 ▶︎ アーカイブの視聴はこちら

登壇者紹介

山本 明子 氏プロフィール(株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ)

2007年新卒入社。ウェディングプランナーを経験し、本社人事部に異動。採用・育成・人事制度の構築等を担当。

2019年には、働き方の多様性を受け入れる新人事制度の策定に中心メンバーとして参画。2020年に第一子を出産後、育休を経て復帰し、マネージャーに就任する。現在は育児と仕事のベストなバランスを家族で模索中。

中平 望美 氏プロフィール(大成建設株式会社)

2015年入社。1年間の採用業務を経験した後、東北支店へ異動。岩手県、宮城県で土木及び建築工事作業所の事務を担当し、作業所における人事・総務・経理・法務などを兼務した。

2020年2月より、現在の部署に着任。DE&I分野のうち、主に育児と仕事の両立支援、男性の育児支援、女性の健康課題に関する取組みを担当し、制度改正や研修企画等を行う。

誰もがいきいきと働くことのできる職場環境の実現を目指し、2児の育児との両立に奮闘中。

笹原  裕香氏プロフィール(株式会社山形銀行)

2015年入行。本店営業部で窓口業務や渉外業務を経験したのち、2018年7月人事総務部へ異動。人事総務部では内定者から若手行員の担当として研修企画を行い、講師を務めるほか、ダイバーシティ推進室の一員として育休者や各種制度利用者のサポートを行う。2020年12月に第一子を出産、育休を取得し2021年12月に職場復帰。復帰前の業務に加え、自身の不妊治療の経験をふまえ、様々な立場の職員が安心して働くことができる環境づくりに取り組んでいる。


女性のキャリアとライフイベントについて社員の意識を変える「プレコンセプションケア」への取り組み

<大成建設株式会社の取り組み>

グループ理念である「人がいきいきとする環境を創造する」を実現すべく、2021年の11月に人材活用方針(ダイバーシティアンドインクルージョン方針)のための具体的な行動指針を定め、ダイバーシティアンドインクルージョンを経営戦略と位置づけて取り組みの強化、加速を推進。

総合建設業という特性上、女性社員は全体の約20%ほど。女性社員本人を支援する取り組みだけではなく、男性社員を巻き込んだ風土改革を大きな柱として、男性の育児休業を取得促進、家庭との両立や多様な働き方への理解促進、男性上司や次世代リーダー層への意識啓発研修などを実施。2022年ごろからは、女性の健康課題に対する具体的な取り組みに着手。

ファミワン西岡:今年、大成建設の社内で「プレコンセプションケア※」のイベントを行われたそうですが、実施するきっかけや、その後の反応はいかがでしたか?

※プレコンセプションケアとは

“コンセプション”は妊娠や受胎という意味。前もってという意味の”プレ”と、配慮や気にかけるといった意味の”ケア”を組み合わせた「プレコンセプションケア」は、妊娠に備えて生活や健康に向き合う、セルフケアなどの総称。

中平氏:当社では女性の活躍推進を進めています。妊娠や出産など、女性特有のライフイベントを経る中でもいきいきと仕事を続けられるような制度や支援策を整備していく中で、男女にかかわらずキャリアとライフイベントのバランスを考え、再認識してほしいと思い、プレコンセプションケアに関するイベントを実施しました。

開催後の反応と成果としては、まず、「妊娠出産」と「キャリア」について考えてほしいと思っていた、20代や30代の社員の参加が非常に目立っていた点、さらに​​女性6割男性4割の比率で男女共に興味関心を持ってもらえた点は非常によかったと思っています。

「妊娠や性に関わることなど、会社で話すのはタブーという価値観を持っていたが、会社側から発信されることで、そのような悩みを相談するハードルが下がった」「妊娠に向けた早めの行動の大切さが理解できた」といった参加者からの意見がでるなど、我々人事部側のイベント開催の狙いにマッチしていた点に成果を感じています。

男性側からの意見として、「男性でも自分の生殖能力を知るっていうことが非常に大切」「男性側の理由で不妊に陥ることもあることを知ることができて良かった」など、自分ごととして興味関心を持ってもらう良い反応が得られました。

ファミワン西岡:本来、国が率先して取り組むような課題に対し、会社単位で取り組みを行ったのは、非常に大きなインパクトのある素晴らしい先進的な取り組みではないでしょうか。実際に参加した社員の意識の変化に繋がるという、大変すばらしいお話を聞かせていただきました。

このほかの取り組みとして、社員むけに行ったプレコンセプションケアイベントの具体的な内容や通知方法について、特に男性社員を巻き込むための工夫などをお話しいただきました。

パネルディスカッション「カルチャーとサポート~職場の理解と妊活・子育てを両立するための環境づくり~」の全ての内容はカンファレンスアーカイブよりご視聴いただけます。

 ▶︎ アーカイブの視聴はこちら

両立のための取り組み「副社員制度」と「フリーウェディングプランナー制度」

テイクアンドギヴ・ニーズの取り組み

テイクアンドギヴ・ニーズは、ウェディング事業やホテル事業などを主軸としたホスピタリティ事業を展開。

従業員数は1400人ほどで男性4割、女性6割の比率。平均年齢はおよそ32歳。ホスピタリティ業という特性上、土日祝日の出勤が発生するという中、仕事と子育ての両立のためのユニークな制度づくりに取り組んでいる。

ファミワン西岡仕事との両立のため、実際に取り組んでいることや制度などはありますか?という質問についてテイクアンドギヴ・ニーズの山本様にお話いただきます。

山本氏:悩み奮闘しながら様々な制度の運用に取り組んでいますが、その中でも当社の特徴が出ている制度を2つ紹介いたします。

1つは「副社員制度」です。この制度を利用すると、週に40時間のフルタイムで働かなくても、介護や育児など各個人の事情に合わせ、たとえば週数時間の勤務を選択できるようになります。給与は労働時間分の支払いになりますが、それ以外は正社員と同じ待遇が受けられます。

当社を含むホスピタリティ業界の最大の特徴である、土日祝日がメインの営業日という状況において、「副社員制度」が選択肢の一つに入ることにより両立のハードルが下がると考えています。日曜日など保育園が休みで預け先がない時などは、日曜日は思い切って休み、週に4日勤務で今までと同じ仕事をすることができるのです。

この制度の導入により、介護や育児、家庭の事情によってフルタイムで働くことが時間的にどうしてもできないけれど、これまでやってきた仕事が好きで働き続けたいという社員50名ほどが実際に利用していますので、制度をスタートして良かったと思っています。

もう1つは、フリーランスになることをサポートする「フリーウェディングプランナー制度」です。

社員からフリーランスになった個人事業主と業務委託契約を結び、それまでと同様に当社の会場で結婚式のプランニングをしてもらいます。契約時に年間に担当するお客様の数をあらかじめ決めておくため、おおよその​​収入を想定して独立をすることができます。

これまでに約10名の社員がこの制度を利用して独立し、実際に個人事業主のウェディングプランナーとして活躍している実績があります。

長年働いて高いスキルを持つ社員が、働き方の選択を広げながら継続してクオリティの高いサービスを提供できる関係性を築けることが両者にとって非常にプラスだととらえています。

ファミワン西岡:「副社員制度」と「フリーウェディングプランナー制度」という興味深い2つの制度をお話しいただきました。

私自身も不妊治療のクリニックで勤務していた時は、やはり土曜日に一番、患者様がいらっしゃるので、仕事の両立は非常に難しく、スタッフ達がそこで、仕事をすること自体を諦めてしまわないように、非常に苦慮していました。土日祝にこそ忙しいという業界で似たような経験がありましたので、非常に勉強になりました。

このほか、​​制度の導入・運用にあたっての葛藤、特に当事者以外の社員(男性やライフステージの変化が実感できないような年齢の社員など)への配慮についてお話しいただきました。

パネルディスカッション「カルチャーとサポート~職場の理解と妊活・子育てを両立するための環境づくり~」の全ての内容はカンファレンスアーカイブよりご視聴いただけます。

 ▶︎ アーカイブの視聴はこちら

プラチナくるみんプラス認定取得のための「制度設計」と「社内理解の促進」

山形銀行の取り組み

山形県に基盤をおく地方銀行。従業員数は1800名弱。女性の割合が高く、行員正社員が444名、スタッフ非正規職員が548名在籍。

2015年4月に全国で初めて、高い水準で子育て支援に取り組む企業として「プラチナくるみん」の認定を取得。その後も様々な制度を改革、整備を継続し、不妊治療と仕事の両立にも取り組んだ結果、2023年5月、東北金融機関初、県内企業初となる「プラチナくるみんプラス」の認定を取得。

最近では、「産後パパ育休」と呼ばれる男性職員の出生時育児休職の取得の推進や、子どもを望む職員が不妊治療と仕事を両立するための「出生サポート休暇取得者」のサポートを行う。

ファミワン西岡:県内初の「プラチナくるみんプラス」の取得を進める中で、ここだけは意識、注意した点、また制度などありますでしょうか?

:プラチナくるみんプラス認定にあたって一番意識したことは大きく2つありました。

1つ目はやはり不妊治療の実態に基づく制度設計をするということ。2つ目は、社内の周知活動による理解促進というところです。

不妊治療の実態に基づく制度設計については、形だけある制度ではなく、不妊治療をしている当事者が本当に使いやすい制度であることが重要だと考え、今年の4月に「出生サポート休暇」を新設しました。

これ以前の2021年には、最大一年間休職可能な「不妊治療目的の休職」の運用を開始していましたが、長期間の休職かつ「もし休んで妊娠できなかったらどうしよう」という心理的なハードルが高かったためか、残念ながら利用者はいませんでした。

「出生サポート休暇」は、一日単位または一時間単位での取得を可能とし、年間に5日間取得ができます。休暇を必要な分だけ取得できるので、使い勝手が良く、導入開始月からすでに利用者が6名という実績があります。この制度を利用して妊娠できた利用者からは、大変ありがたかったという声もあり、私たちも導入して良かったと思っています。

行内への周知活動としては、まず最初に企業トップである頭取からメッセージを発信しました。その後も「不妊治療に取り組む職員が安心して働くことができるように、上司や同僚の理解やサポートをお願いします」という内容で、行内の掲示板や全職員に配布する行内誌の中で、反復して周知活動を行いました。

また、不妊治療の実態として、厚生労働省のデータや、通院頻度、当事者の悩みなど、実際に不妊治療に取り組む職員の声なども発信しています。

ファミワン西岡:この「出生サポート休暇」という名称が、非常に使いやすさに配慮されているネーミングだと思い聞かせていただきました。

以前にほかの会社の取り組みを伺う中で、不妊治療休暇を申請するには、会社へのカミングアウトや、あの人不妊治療してるんだと周囲から言われたりすることを考えると利用に勇気がいる、という話を聞いたことがあります。今となっては、妊娠の選択肢として不妊治療は当たり前ですが、制度の名前により利用しにくいということもあるようです。

「出生サポート休暇」という名称や、トップからメッセージを発信することで、会社がサポートしますというポジティブなメッセージとなり、制度設計に携わった方の気持ちや、当事者への思いや配慮がすごく伝わると思いました。

このほか、​​職員への平等性の観点から、制度設計や情報発信の際に配慮、留意したことなどについて具体的にお話しいただきました。

パネルディスカッション「カルチャーとサポート~職場の理解と妊活・子育てを両立するための環境づくり~」の全ての内容はカンファレンスアーカイブよりご視聴いただけます。

 ▶︎ アーカイブの視聴はこちら

おわりに

大成建設 中平氏からはプレコンセプションケアについて、妊娠前の話として例を挙げていただきました。テイクアンドギヴ・ニーズの山本氏は産後、育児中の働きやすさの制度づくり、山形銀行 笹原氏は妊活のサポートというところで、妊娠前から妊娠出産、育児まで切れ目のない一つの支援、それぞれの時期のサポートについて、具体的な事例をお話しいただきました。

妊娠出産というと、望んでいる人だけの話で結婚していない私たちには関係ない、と捉える人もいます。肩を並べて働く社員同士、正しく知っていてほしいという位置付けで打ち出すことで、特定の人「だけ」にしないというところが非常にポイントだと改めて認識できるパネルディスカッションとなりました。


今、企業と従業員との関係性を育む「エンゲージメント向上」への取組みが、企業全体を成長させる施策として注目されています。

従業員のエンゲージメント向上のためには、組織全体の風土作りが不可欠です。そして企業の規模に関わらず、行動を起こすことが個人、組織、社会のウェルビーイングを生み出す鍵だとファミワンは考えます。

社員や従業員のエンゲージメントを高める取り組み、制度を取り入れたいけれど、どこから手をつけたらいいかわからない、まずは話を聞いてみたいとお考えの企業様は、一度ファミワンまでご連絡ください。

▶︎ お問い合わせフォーム