男性育休のこれから~両親の育休取得で実質10割給付案~

国の目標と男性育休取得の現状との格差

国は今、男性の育児休業の取得を促そうとしています。2025年に50%、2030年には80%の取得率にすることを目指しています。しかし現状としては年々増えているとはいえ、2022年度で17.13%と取得率の低さが課題となっています。

なぜ男性育休は普及しないのか?

制度が整っているのに、なぜ男性たちは育児休業制度を利用しないのでしょうか?

アンケート(厚生労働省)結果によると以下の結果になっています。

  • 収入を減らしたくなかった・・・39.9%
  • 職場が育休を取得しづらい雰囲気だった、会社や上司、職場の育児休暇取得への理解がなかったから・・・22.5%
  • 自分にしかできない仕事や担当している仕事がある・・・22%
  • 残業が多いなど業務が繁忙であった・・・21.9%

男性育児休業を取得しにくい理由として、収入を減らしたくないことに加えて、社風、属人化業務、人材不足、周りの無理解などが見えてきます。

両親が育休取得で実質10割の給付案の制度改革進行中

国の対策として厚生労働省は、収入が減らないように両親で実質10割の給付案を出して取得率を上げていこうとしています。多少の条件があるので見ていきましょう。
現在の給付率は休業前の賃金の67%で、社会保険料が免除されるため、手取り収入は実質的には8割です。これを改善していこうとしています。給付案としては両親が14日以上取得した場合は休業前の賃金の80%程度に引き上げ、実質10割の手取り収入になるように整えるという案です。これは男性の場合は子どもが生まれて8週間以内、女性の場合は産休後8週間以内に育児休業を取得した場合で、いずれも28日間を上限に給付率を引き上げるということです。

そのほかにも審議会では、子どもが2歳未満で時短勤務をしている人に対する新たな給付制度について、時短勤務中の賃金の一定割合を給付するほかに、労働時間や日数については制限を設けないこととするなどと案が出されました。

組織開発していくことも必要

ここで考えていきたいのは、収入を減らしたくないというアンケート1位の項目を国の制度が満たしたとすると、果たして取得率はうなぎのぼりに上がるのかという点です。もちろん今までよりは取得する人は増えるでしょうけれど、アンケートを見ると人材不足や組織の体制、周りの理解不足も大きくかかわっていることがわかります。収入が実質10割になったとしても、取ることが難しい人はまだまだ多くいるように思います。考えるべきは周りへの理解をどう広めていくのかということや、これからの人材不足社会に備えて業務の見直しをしていく必要があります。属人化業務も解消していかなければなりません。売り上げを上げていく仕組みすら変えていかなければならない業種も出てきていることでしょう。これからの時代に合わせて組織の形を柔軟に整えていくことが求められていると言えるでしょう。男性育児休業取得を整えることをきっかけとして、組織の課題も一緒に整えていきましょう。

フレックスやテレワークの導入も柔軟に

ここまで男性育児休業について考えて見えてきたこととして、収入の保証以外にも働きやすさを整えていくことが男性育児休業を浸透させていくことに役立つことが言えると思います。フレックス勤務やテレワークは子育て中の両親にはありがたい働き方でしょう。人材不足社会においても離職を防ぐ手立てになると思います。組織として今後の働き方の見直しをしていきましょう。

会社をあげて取り組んでいく

今までの風潮を変えていくことは簡単ではありません。何かきっかけと勢いがあると変化させやすいと思います。そのためにはまずは会社をあげて取り組んでいくという意思表示が社内の従業員に対してあるといいでしょう。特に中小企業は一人減ると業務を圧迫する環境がある中で、男性育児休業を浸透させていくことは積極的ではないでしょう。しかしこれをチャンスとして組織開発のドアを開けることができるかもしれません。宣言をして社員みんなで長く生き残っていく企業になっていくには今何が必要かを考えていく流れを作っていくことをお勧めします。社内で男性育休をきっかけにムーブメントが起きて、よりよい会社になっていくことを目指しましょう。会社としてステップアップすることは成果に繋がっていき、決して損なことではなく飛躍していくチャンスとなることでしょう。

育児休業を取って家庭に入ってもどうしたらいいかわからない

もう一つ考えるべきこととして、家庭で休業している間に男性としては何をどう手伝えばいいかわからないことで取りにくいということもあるように思います。女性と違ってあまり家事や育児について考えて生きてこなかった男性が、急に育児休業で家庭に入るわけです。何をどうしたらいいのか心構えができている人は少ないでしょう。実際、妻側からの声として夫が育児休業したけれど何もしてくれず休みのように過ごしていたという厳しい意見も少なくない現状があります。育児を妻だけでなく両親で担当することは単純に労働力が増えるので良いことですが、担当分けをすることの難しさもでてくるでしょう。また同じクオリティーを出していくには話し合っていくことや教えることも必要でしょう。家庭で起こることを事前に知り、学び心の準備をすることもスムーズに男性育児休業の取得率を上げていくには必要なことでしょう。

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