今年は、例年よりも早くインフルエンザの流行が始まっています。
2026年は8月中旬の時点で、全国のインフルエンザ患者数が流行開始の目安を超え、感染症法が施行された1999年以降では、2009年に次いで2番目に早い流行入りとなりました。
「まだ夏なのに、もうインフルエンザ?」と驚いた方もいるかもしれません。
インフルエンザは、毎年流行する時期や規模が異なります。今年は特に早い時期から流行が始まっているため、ワクチンについても例年とは少し違った視点で考えておく必要があります。
今回は、インフルエンザワクチンの種類や、最近よく聞く「フルミスト」、今シーズンの接種時期などについて、薬剤師の立場から解説します。
インフルエンザワクチンの種類
現在、インフルエンザワクチンには、注射するタイプと、鼻に噴霧するタイプがあります。
これまで一般的に使われてきたのが、注射するタイプのワクチンです。不活化ワクチンと呼ばれるもので、インフルエンザウイルスの一部をもとにつくられています。
ワクチンを接種すると、インフルエンザウイルスに対する免疫がつくられ、インフルエンザの発病や、発病した場合の重症化を防ぐ効果が期待できます。
ただし、ワクチンを接種したからといって、インフルエンザに絶対にかからなくなるわけではありません。その年に流行するウイルスの種類や、年齢などによっても効果は異なります。
従来の注射するタイプのワクチンは、13歳未満では2回、13歳以上では1回の接種が基本です。接種後の効果は、半年ほど続くとされています。
注射のワクチンを接種した後は、接種した部分の痛みや赤み、腫れなどがみられることがあります。また、発熱、だるさ、頭痛などがみられることもあります。多くは数日程度で自然におさまりますが、ごくまれにアナフィラキシーなどの重い副反応が起こることもあります。
また、高齢者向けには、従来のワクチンよりも抗原量を4倍にした「高用量インフルエンザワクチン」もあります。筋肉内に注射するタイプで、防腐剤を含まないワクチンです。
高用量ワクチンはすでに国内で承認されており、75歳以上の方を対象に2026年度から定期接種が始まる予定でしたが、今シーズンの定期接種化は見送られました。今後の導入が期待されます。
最近よく聞く「フルミスト」とは
「フルミスト」は、鼻にシュッと噴霧して接種するタイプのインフルエンザワクチンです。
従来の注射のワクチンとは異なり、弱毒化したインフルエンザウイルスを使った「生ワクチン」です。国内では2歳以上19歳未満の方が対象となっています。
フルミストは、2歳以上19歳未満では1回の接種で済むため、注射の回数を減らしたいお子さんにとって選択肢のひとつになります。また、注射をする必要がないので、注射が苦手なお子さんでも接種しやすいこともメリットです。
接種後の効果は、半年から1年ほど持続するといわれています。
一方で、生ワクチンであることから、誰でも接種できるわけではありません。免疫の機能に異常がある方や、免疫を抑える治療を受けている方などは接種できない場合があります。
また、接種後には鼻水や鼻づまりなどの症状がみられることがあります。ワクチンに使われたウイルスが一時的に鼻などから排出される可能性があるため、接種後1~2週間は、重度の免疫不全の方との密接な接触をできるだけ避けることが推奨されています。特に、乳児など免疫機能が十分でない方と同居している場合は、接種前に医療機関へ相談するとよいでしょう。
注射のワクチンとフルミストのどちらがよいかは、年齢や健康状態、接種しやすさなどによっても変わります。お子さんの場合は、こうした違いを踏まえて選ぶとよいでしょう。
今シーズンのワクチン、いつ打てばいいの?
インフルエンザワクチンは、接種してすぐに十分な効果が得られるわけではありません。接種後、免疫がつくられるまでにはおよそ2週間程度かかります。
例年は、インフルエンザの流行が本格化する時期に備えて、12月中旬ごろまでに接種を終えることがひとつの目安とされています。
今年は例年よりかなり早く流行が始まっており、予診票の配布なども前倒しにしている自治体もあります。
そのため、「例年と同じ時期まで待てばいい」とは限りません。接種できる時期になったら、今年の流行状況も踏まえて、早めの接種を検討するとよいでしょう。
また、流行が始まった後でも、ワクチンを接種する意味がなくなるわけではありません。インフルエンザの流行は一定期間続くため、まだ接種していない場合は、今からでも接種について医療機関に相談してみましょう。
ワクチンの効果持続期間は?
「一度ワクチンを接種すれば、シーズン中ずっと安心」と思っている方もいるかもしれません。
従来の注射するタイプのワクチンは、接種後1か月程度をピークに、その後は時間の経過とともに効果が徐々に低下していきます。それでも、半年ほどは効果が続くとされています。
一方、フルミストは半年から1年ほど効果が持続するといわれています。
ただし、どちらのワクチンも「この期間は必ず効果が続く」というものではなく、年齢やその年に流行するウイルスなどによっても効果は変わります。
また、インフルエンザワクチンは基本的に毎年接種することが勧められています。
「できるだけ早く接種した方がいい」とはいっても、流行の時期やワクチンの効果が続く期間などを考える必要があります。特に今年は流行が早いため、例年よりも早い時期から接種を検討することが重要になりそうです。
ワクチンを接種してもインフルエンザになることはある
インフルエンザワクチンを接種しても、インフルエンザにかかることはあります。
ワクチンは感染を完全に防ぐものではなく、発病や重症化を抑えることを目的としています。そのため、「ワクチンを打ったから、インフルエンザ対策はもう大丈夫」と考えるのではなく、手洗いや換気、人混みでのマスクなど、できる範囲で感染対策を続けることも大切です。
今年は例年になく早い時期からインフルエンザが流行しています。
ワクチンには「感染を完全に防ぐ」というより、発病や重症化を防ぐという役割があります。注射が苦手なお子さんには、1回の鼻への噴霧で接種できるフルミストという選択肢もあります。
今年の流行状況を踏まえながら、自分や家族に合った接種方法やタイミングを考えてみてください。
参考文献:

