薬剤師が伝える!今のうちから対策しよう ―災害時に役立つお薬の備え―

日本は、海外に比べて地震や大雨、台風などの災害が多い「災害大国」と呼ばれます。
近年、災害に関するニュースで備えについて考える機会も多くなってきていますね。
食品や飲料などの生活物資の備蓄に意識が向きがちですが、飲んでいる薬も事前に備えておくことがとても大切です。

災害時は医療機関も機能しづらくなりますので、いつも通りに飲みたいときに薬が飲めないという状況も大いに考えられます。
いざという時のリスクを少しでも減らすために、今からできる対策と困ったときの対処法を知っておきましょう。

今回は災害時の薬について、解説していきます!

目次

災害時に困らないために 今からできること

よくある災害時の薬の困りごとやトラブルについて紹介します。

・飲んでいる薬の名前、種類がわからない
・避難時に薬を持ち出し忘れた、避難生活が長引いて手持ちの薬がなくなってしまった
・薬の保管・飲むことができない
※冷所保存が必要な薬の保管や水不足による服薬困難など
・食事や水分が十分に取れないことによる影響


日常的に飲んでいる薬がうまく飲めないことは健康に大きな影響を及ぼします。また、普段通りに飲めていても環境の大きな変化で体調を崩してしまうこともあります。
今から対策を意識し、いざという時のリスクを減らしておきましょう。


お薬手帳を持ち歩き、中身をしっかり記載しよう

震災などの混乱の中では、医療機関で保管しているカルテなどの確認ができず、「白い丸い薬」の情報だけでは薬の特定ができません。実際の現場でも、ご自身の飲んでいる薬がわからず、医療者側も確信をもって適切な治療ができずに困った事例が多くありました。
普段よりお薬手帳を常に持ち歩き、ご自身が飲んでいる薬の情報がわかるようにしましょう。
また、お薬手帳には薬の情報欄以外にも体質やアレルギー、かかりつけの病院や薬局の情報記載欄があります。
お薬手帳は薬局や病院で薬のシールを貼付するだけのものと思われがちなのですが、事前にこれらの情報もしっかり確認・記載をしておくと、いざという時の助けになります。

スマートフォンのお薬手帳アプリも普及しておりますが、災害時は電子機器の充電切れの可能性もあるので、紙の手帳も持っておくと確実に情報の管理ができます。
お薬手帳の最新のページをコピーし、災害用リュックに入れておくのも一つの方法です。同様にスマートフォンで最新のページを写真に撮って残しておくのもよいでしょう。

3日~7日分お薬の予備を持っておく

いつも飲んでいるお薬は、非常用として3日~7日分の予備を持っておくことが推奨されています。
普段から手元のお薬が少し残っているタイミングで早めの病院受診をすると、お薬切れを防ぐことができますので、心がけておくとよいでしょう。

また、お薬にも有効期限がありますので、新しい薬から順番に使用するようご注意くださいね。備蓄のお薬が古くならないように薬を購入・処方されたタイミングで常に入れ替える「ローリングストック」方式で管理するようにしましょう。

市販薬について

避難所での生活は急激な環境変化からくるストレスで、体調不良が起きやすくなります。痛み止め、風邪薬、胃薬、湿布薬、塗り薬などを常備薬として災害用リュックにあらかじめ備蓄しておくと安心です。
もしもの時に起こりうる体調変化をあらかじめイメージして、各家庭にあわせて用意をしておきましょう。
持病がある方や他に飲んでいる薬がある方は、市販薬の飲み合わせについて事前にかかりつけの医師や薬剤師にご相談ください。

水不足によって薬が飲めない状況もありますので、飲料水の確保が大切です。また、水なしで服用できる市販薬や「OD錠(口腔内崩壊錠)」を選んでおくこともおすすめです。
OD錠は口の中に入れると唾液で溶けて飲むことができます。パッケージに「水なしで飲める」「OD錠」といった表記あるものを選ぶとよいでしょう。

服用・保管に注意が必要なお薬

糖尿病の治療でインスリン注射を使用中の方など、お薬が冷蔵庫での保存が必要な場合があります。該当するお薬を使われている場合は、保冷バッグも災害用リュックの中に備えておきましょう。

(慢性疾患がある方)災害時に薬を続けるか?休むべきか?確認しよう

災害によって体調が悪化し、病気の治療がうまくいかなくなる状態を「災害シックデイ」と呼びます。
災害時は睡眠不足、食事不足、水分不足などさまざまなストレスがかかります。糖尿病など食事に影響するような治療をされている方は、普段通りの生活ができずにお薬を通常通り飲むことで病状悪化につながるケースも多いのです。
特に慢性疾患をお持ちの方はお薬や治療によって災害時に薬を続けるか、お休みするべきか注意点を事前に確認をしておくと安心です。
お薬についての災害時の項目をまとめました。
災害用リュックの確認時に一緒にチェックしてみましょう!

災害時、困ったらどうする?

どれだけ入念に準備をしていても、避難所などでお薬や治療のことで困るケースは出てきます。
災害で病院や薬局などの医療機関が通常通りに稼働できない状況もありますが、いち早く必要な治療やお薬の供給ができるように医療従事者は被災地でさまざまな活動を行っています。

もし災害時でも機能していれば、かかりつけの病院・薬局に指示を仰ぐのがよいでしょう。
ただ医療機関が機能していないような状況であれば、避難所に臨時で設置される救護所や、医療相談窓口に相談しましょう。窓口では、医師や看護師、薬剤師等の医療スタッフが在中しています。
また、災害時の特例として、かかりつけの病院・薬局が機能していなくても、救護所でお薬を処方してもらって受け取ることができる制度もあります。
混乱の状況下ではありますが、「迷惑をかけてしまうかも」「こんな状況では無理だ」と諦めて我慢せずに困りごとがあれば相談するようにしましょう。

主な相談先

  • 営業していれば、かかりつけの病院・薬局、避難所近くの医療機関
  • 避難先の「医療救護所」や、臨時に開設される「相談窓口・救護薬局」
  • 相談先がわからなければ、避難所のスタッフやボランティアへ

この時に役立つのが、やはりお薬手帳です。飲んでいるお薬の内容が正確にわかることで、同じお薬の手配ができ、在庫がない場合は似た効果のお薬を代用で処方してもらうことができます。

※避難時の注意点:安全が確保できるまで薬は取りに戻らない!

もし災害時に薬を持ち忘れたことに気づいても、安全が完全に確保できるまでは自宅に取りに戻らないことが大切です。まずは起きている災害から命を守ることが最優先です。余震や家屋倒壊などの二次災害を避けるためにも、自分で何とかしようとせずに避難先の医療体制を頼りましょう。

まとめ

災害時の薬に関する準備しておくべきポイントを解説しました。特に医療機関がひっ迫するような緊急事態では、薬の備蓄・自分がどんな治療を受けてどんな薬を飲んでいるのかを説明ができる状態にすることが重要です。
災害はいつやってくるかわかりません。
いざという時に少しでもスムーズな医療を継続できるように、今のうちから準備をしておきましょう。

参考

・鹿児島県薬剤師会ホームページ
https://kayaku.jp/kusurikenko/kakarituke.html
・日本薬剤師会 薬剤師のための災害対策マニュアル
https://www.nichiyaku.or.jp/activities/disaster/manual.html

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この記事を書いた人

3年間、調剤薬局の薬剤師として勤務。医療モール内の薬局で婦人科を含め幅広い診療科の患者対応を経験しました。皆さんの健康に対するお悩みや「気になる!」に寄り添った情報発信をしていきたいです。