海外赴任者及び帯同家族のメンタルヘルス

海外赴任は自身のキャリアアップや企業のグローバル展開に貢献するだけでなく、個人の成長や人生経験を豊かにすることにもつながるため、自ら希望する社員も少なくありません。しかし、海外赴任は赴任者自身のみではなく、家族全員にとって大きな挑戦であることを忘れてはいけません。新しい環境、文化、言語の壁など多くの変化に直面するため、家族のケアも重要となります。そこで今回は、海外生活におけるメンタルヘルスについてまとめていきます。

異文化への精神適応過程を理解する

心理学者のアドラーは、異文化に適応する過程を以下の段階に分けて考えました。この過程を予備知識として持つことで、赴任者及び帯同家族がどの段階にあるかを客観的に判断することができます。

興奮と幸福の時期

異文化に触れた最初の段階では、文化的な差異に対する興味が勝ります。新しい生活や文化への興奮や新鮮さが強いため、文化の表面しか捉えておらず、ストレスを感じていても表面化しにくい時期です。

戸惑いと混乱の時期

文化の違いが気になりはじめ、混乱が生じる時期です。自文化との類似点よりも、相違点に意識が向きやすくなります。

異文化を拒絶する時期

更に混乱が強くなり、異文化に対して拒絶を感じる時期です。異文化に対して、不満や怒りを口にすることも多くなります。ただし、このような否定的な言動は、異文化の中において、自分を再発見する時期でもあり、自己肯定と自尊心の成長に必要な課程でもあります。

異文化への理解の時期

文化の違いや共通点などをありのままに受け入れられるようになり、異文化の人と心情的に繋がりやすくなり、理解が深まる時期です。共感する気持ちを取り戻し、新しい状況や考え方に対して柔軟に対応ができるようになります。

文化の相違点・類似点を楽しむ時期

状況に応じてどちらの文化の行動パターンにも合わせて行動をとれるようになる時期です。自分の気持ちに忠実に行動できるようになり、文化の違いをプラスに捉えることができるようになります。

受診が必要なサインを見逃さない

上記のプロセスから逸脱しており、心理面でのサポートが必要な状況と判断した場合に最も大きな問題となるのは、適切な医療機関・医師を見つけることです。メンタルヘルスに関する場合は母国語で診察を受けることが原則であり、日本人の物事の捉え方や傾向を熟知した医師の診察やカウンセリングを受ける必要があります。また特に注意が必要なのは、うつ病の場合です。うつ病は、ストレスなど様々な原因により生じる、こころと体の病気です。うつ病の患者数は年々増加しており、海外赴任者においてはその何倍にもなると言われています。軽度のうつ病の場合、体の症状(不眠、過眠、食欲低下、胃痛、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸など)が目立ち、こころの症状(意欲低下や抑うつ気分、不安・焦燥感、注意・集中力の低下)が表面化しにくいため、気付くのが遅れてしまうことも多々あります。自殺企図など深刻な症状が出る前に、家族・同僚がサインを見落とさないよう、状況に応じて適切な医療支援を受けられるようサポートする必要があります。また海外赴任者は飲酒量が数倍にもなると言われていますが、多量飲酒は不安感や焦燥感が出現しうつ病発症のきっかけになることもあるため、注意しましょう。

ストレスを感じやすいポイントを理解し、予防する

赴任先や立場によってストレスを感じるポイントは異なりますが、共通のストレス源は、言語・文化、気候、衛生環境、治安、食事などの違いです。それぞれの立場で考えると、赴任者は、業務内容の変化や現地スタッフとの関係、過労、上司・部下との関係、休日の接待などが負担になりやすいです。帯同家族は、帯同による自身のキャリア断絶や異文化におけるアイデンティティの喪失、限られたコミュニティでの交友関係、娯楽の減少、夫(妻)の生活環境の変化により生じる夫婦関係の変化、赴任者の長時間労働や出張によるワンオペ育児、子どもの新しい教育環境、友人関係の構築などが問題となります。特に帯同家族のメンタルヘルスの問題は、家庭外に出にくく表面化しにくいため危険です。赴任者自身が多忙により中々帯同家族との時間を持つことができず、気付いた時には深刻な状況に陥ってしまっていた、というケースも多くあります。家族間でこれまで以上にお互いへの配慮が必要であり、例えば週に一度はお互いの感情や精神状態について評価・相談・報告をする時間を設けることが大切です。

まとめ

海外生活は、様々な挑戦が待ち受けています。家族全員がこれまで以上にお互いを思いやり、より安全で健康的な環境で過ごせるように協力し合うことが大切です。また企業側も、上記の視点を考慮した上で特別なサポート体制を構築することが、更なるグローバル発展のために必須と言えます。

参考文献

1)厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト 

2)こころの相談機関

3)Adler, Peter S. “The Transitional Experience: An Alternative View of Culture Shock.”

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