【健康経営】安心して海外渡航(出張)するために必要な準備と注意点

新型コロナウイルス感染症による入国・出国制限が終了し、以前のように海外出張や旅行に行かれる方が多くなってきたと思います。今回は、海外在住の看護師という視点から、海外渡航前に知っておくべき医療・健康に関する注意点をご紹介したいと思います。

渡航前の受診と海外旅行傷害保険

海外渡航前には、歯科を含む健康チェックを行い、自身の健康状態を整えることが大切です。以下のポイントをふまえて、準備を進めましょう。

  • 持病やアレルギーのある場合は、必要な薬を準備する必要があります。内服薬は、滞在日数よりも余裕を持った日数分の薬を持参すること、またスーツケースと手持ちの鞄の両方に入れておくと、紛失や盗難などといった不測の事態にも備えられます。
  • 持病やアレルギー、内服薬については、英文証明書を準備しておくと、現地でのトラブル時に役立ちます。準備に時間がかかることが多いため、日程に余裕を持ってかかりつけ医に依頼をしましょう。
  • 海外旅行傷害保険に加入することで、緊急事態に備えることができます。最近では、クレジットカードによる海外旅行傷害保険特約を利用される方も多いかと思いますが、どちらの場合も持病や歯科については対象外となっていることが多いです。渡航前に、必ず保障内容を確認しておきましょう。

予防接種

目的地の感染症・予防接種情報を確認しましょう。厚生労働省検疫所FORTHホームページ¹)より、各地域の詳細情報を入手できます。摂取すべきワクチンがある場合や、摂取に関する疑問がある場合は、日程に余裕を持って、トラベルクリニックなどで相談をすることをおすすめします。

食事・水の安全性

 海外滞在中の食事は楽しみの一つですが、衛生状態に留意し、感染症を防ぐための注意が必要です。特に、水道水の安全性が確保されていない国や地域では、歯磨きやうがいにも水道水の使用を控えた方が良い場合や、シャワーの時に口に水が入らないように注意する必要のある場合もあります。

以下のポイントを守り、食中毒や感染症を予防しましょう。

  • 生水や氷、生肉、生野菜などは避け、十分に加熱された食品を選びましょう。
  • カットフルーツは避け、自分で皮を剥いたものを食べるようにしましょう。
  • 水分補給は、信頼できるブランドのボトル入りの水を利用することが望ましいです。

動物・虫対策

狂犬病、デング熱、マラリア、ダニ媒介脳炎など、日本ではあまり発生していない感染症が流行している国や地域があります。これらの感染症に注意が必要な理由は、高い致死率にあります。特に狂犬病は、発症するとほぼ100%の致死率が報告されています。また、蚊が媒介する感染症は、死亡数が非常に多いとされています。

以下の対策を取り、十分に気を付けましょう。

  • 野良犬や、猿には近づかないように注意をしましょう。万が一噛まれてしまった時は、速やかに受診をするようにしてください。
  • 蚊の多い地域では露出を避けて長袖を着用し、こまめに虫よけスプレーを使用しましょう。

また忘れてはいけないのが、これらの感染症には潜伏期間があることです。旅行から帰国後に症状が発症する可能性もあるため、リスクの高い地域に滞在した後は、帰国後も自身の健康状態に注意しましょう。何らかの異常が見られた場合には、速やかに医療機関を受診し、必ず渡航先を医師に伝えるようにしましょう。

緊急時の対応

海外滞在中に医療機関を受診しなければならなくなった場合、どこに連絡をし、どのように受診をすれば良いのでしょうか。国によって医療制度が大きく異なるため、   医療機関に駆け込んでも受け付けてもらえないことが多くあります。緊急時に慌てないために、以下の準備をしておきましょう。

  • 滞在国での救急要請方法や外国人の緊急受診方法を事前に確認しておきましょう。
  • 海外旅行傷害保険に加入している場合、利用可能な医療機関のリストを持参しましょう。また、保険会社のコールセンターの連絡先がすぐにわかるようにしておきましょう。
  • 保険未加入の場合は、滞在国内の日本人向け医療機関をリストアップしておきましょう。海外療養費は高額となる可能性が高いため、受診時は、診察費用がどの程度となるかを診察前に確認しておくと、安心です。
  • 海外療養費は、健康保険組合への申請により一部医療費の払い戻しを受けることが出来る可能性があります。緊急受診をした場合は、帰国後に健康保険組合へ確認をしましょう。
  • SNSやブログなどで、実際の経験談を検索することもおすすめです。ただし、情報の真偽は不明であるため、あくまで参考程度にすることをおすすめします。

いかがでしたでしょうか。コロナ禍を経て、久しぶりの海外渡航となる方も多くいらっしゃると思います。以上の注意点を頭に、少しでも多くの方が、安心・安全に海外渡航を楽しむことができますと幸いです。

参考 1)厚生労働省検疫所FORTH https://www.forth.go.jp/index.html