物流業界の女性活躍の実態と今後の展望~現状と企業の取り組み~レポート~【女性の健康課題と企業の取り組み】トークセッション前編

ファミワン主催の女性活躍推進セミナー「物流業界の女性活躍の実態と今後の展望~現状と企業の取り組み~」を2024年6月20日にオンラインで開催いたしました。

ファミワンでは各業界の女性活躍推進イベントを開催していますが、建築業界セミナーゲーム業界インタビューに続いて今回は物流業界の女性活躍推進の実態と、今後の展望について、登壇者、参加者の皆様と一緒に考える機会となりました。

本記事では、フジトランスポート株式会社 執行役員 川上泰生さまを迎えてのトークセッションパートをお伝えいたします。

<strong>登壇者紹介</strong>

フジトランスポート株式会社 執行役員 川上泰生さま

2012年富士運輸株式会社(現フジトランスポート株式会社)入社後、人事、経営企画、事業開発を担当。特に人事については採用システム「リクオプ」を導入後、採用数を伸ばし、また物流業界の女性活躍の場を広げるため、国土交通省の「トラガール促進プロジェクト」に参加し、現在も継続している。 

現在はフジホールディングス株式会社 マーケティング部長を兼任し、社員ユーチューバーとの広報を中心に活躍中。

株式会社ファミワン 代表看護師・不妊症看護認定看護師 西岡有可

不妊症看護認定看護師として都内の不妊治療専門クリニックで10数年勤務。不妊に悩むカップルへのケアやチームマネジメント、研究発表を経験。医療機関の枠組みを超えて、もっと身近な存在として悩める人へサービスを届けたい思いからファミワンへジョイン。現在は福利厚生セミナーやユーザー対応とともにサービス設計を担当。企業の課題をヒアリングし、適切なサービス設計や研修カスタマイズを提案している。

会社紹介

私はホールディングスカンパニーの所属ですが、その中核企業のフジトランスポートは大型トラックでの幹線輸送業務を行っております。特に大型トラックで長距離を運ぶ運送業ですので、採用や女性の定着という意味では、非常に難しい企業ではありますが、その中で、我々なりに工夫や改善に努めています。弊社は健康に関しては、2021年より健康経営優良法人となっております。

グループ従業員数は3000人超、所有トラック約3000台となっております。現社長が社長に就任して20年で売上は約100倍、従業員数も毎年増加を続けています。

今回のテーマにある女性活躍推進と物流業界の人手不足へどのような取り組みをされているのでしょうか?

川上さま: 物流業界の人手不足問題は、今に始まったことではなくずっと言われていることです。その中でよく言われているのが、女性の活躍、外国人、高齢者にもできる仕事が何かないかというところです。特に女性の活躍、女性の方に働いて頂くというのは、非常に大切なことだと考えています。取り組みについて5点、ご紹介します。

①EC貨物の運送における女性の活躍

EC(※)貨物は女性の方も運びやすく、比較的軽いものが多く、また、短時間で輸送できることから女性が多く活躍しています。(※)EC:「Electronic Commerce」の略。ネット通販、ネットショップなどが該当します。 表現は多種多様ですが、インターネット上で交わされる商取引のこと。

②女性フォークリフトオペレーターの採用と育成

埼玉に配送業と倉庫業を合わせてされている物流会社があるのですが、その倉庫にお邪魔したところ、フォークリフトに乗っている方がほぼ全員女性でした。若い方が多かったのですが、採用の担当の方に聞いたところ、大卒の方を採用してフォークリフトの業務を教えると非常にきっちりと仕事をしてくれる、とのことでした。

男性と女性の違いという観点になるかもしれませんが、荷扱いが男性に比べて丁寧で、非常に細やかな仕事をされるという事なのだそうです。

フォークリストオペレーターが、女性が活躍するという1つの機会として採用されているのは面白いと思いました。

他社でも女性の方で、フォークリフトオペレーターはいらっしゃいますが、こちらの会社の場合は、学生の時点から採用して、と1つのルートを作られているところが特長的な例です。

③運転操作性の高い新型トラックの導入

当社(フジ)では、1つは安全性の高いトラックをという事で新車を多数導入しております。今のトラックというのは、安全性が高く、新型のトラックであればあるほど、操作性や安全性が優れているので、女性のドライバーが入ってきても抵抗が少ないと思います。

④社内の女性専用施設の整備

我々の会社は女性のドライバーが徐々に増えていますが、取り組みの1つとして、シャワー室や仮眠室なども率先して女性用に区分けを行っています。

⑤「毎日家に帰ることができる」中継輸送

大型トラックは長距離を走る仕事ですので、家を空けることになるのですが「毎日家に帰ることができる輸送方法」がいくつかあります。その1つが中継輸送です。簡単に言うと、バトンタッチ輸送をしてトラックを乗り換えることにより、自分が出発した地点にその日中に戻って来られるという輸送手段です。

こういう輸送も取り入れて、長時間家を空けることのない働き方を実現しています。


西岡:確かにフォークリフトなどは、男性が操作しているイメージがあったのですが、女性が操作して、扱いが丁寧であるということですね。この女性社員の方たちは就職してから免許を取られているのでしょうか。

川上さま:そうですね。学生時代にはそういう経験はなく、会社に入ってから指導を受けてされていると聞いております。

西岡:また、新しいトラックにしているというところでは、きっとドライバーの方は、車の乗り心地が良かったり、運転での安心感も全然違うのでしょうね。

川上さま:特に運転席は、今はもうエアクッションもあり、乗り心地良く、またハンドルが軽くなっているので操作性につきましても使いやすくなっております。ですので、女性の方には、以前よりも運転しやすくなっているのではないかと思います。

西岡:長距離トラックの乗り心地が改善されているということで、腰にも良さそうで、非常に働きやすくなっている環境設備に対して会社様が取り組んでいらっしゃる事がお伺いできました。

今後、物理業界における労働環境や労働条件の改善に向けては、更にどのような取り組みが必要だと思いますか?

川上さま: 2024年問題で、人手不足やトラック不足に非常に拍車がかかっていまして、本当に業界として、色々な意味で、労働環境や条件を変えて、トラックドライバーを確保していかないと大変だと感じます。

先ほどの話のところで、やはり女性の方ですと、1つはトイレの問題がありますよね。特に大型トラックドライバーですと、やはりトイレの場所が少ないという話も聞きます。そういう面は、当社というよりも周りの環境を変えていかなくてはいけないのではないかと思います。

あとは当社の場合は各地に支店数を増やしているのですが、従業員の方で介護の問題が発生して故郷に帰らなければいけないという事があり、従来であれば、やむなく退職頂くような事案だったのですが、支店が増えたことによって、実家の近隣の支店で働く事ができました。支店数を増やしたことで離職にならず良かったと思います。

他にも、ある女性ドライバーの方のケースですが、母子家庭の方で子どもの授業参観に出たり、子どもとの時間を作りたいということで、勤務時間を夕方から夜が明ける前ぐらいに終え、毎日帰れるような勤務体系に変更し、結果、家庭・お子さんの育児と並行して仕事ができたという方もいました。仕事の内容によってフレキシブルな対応ができるのは効果的だと思います。

あと、毎日家に帰れない勤務体系の人は、出先でシャワーと使いますが、とある会社の話で、シャワーのヘッドをミラブルに変えたというだけで、すごく注目が集まったというのを聞いたことがあります。 私は男性なので良くわかりませんが、「それだけのこと」と思うようなことというものが、非常に好感を得ることがある様です。実はこういうことがとても大事だと思うので、色々なアイデアを出していけたらと思っています。

西岡:素晴らしいです。私もミラブルでしたら、ぜひそちらのシャワーが良いと思ってしまいました。衛生用品―トイレ、ドライヤー、タオル、シャワーなどが整っていたり、少し良いものであったりというのは、おそらく男性の方が感じるよりも、女性にとっては非常に大きなメリットとして感じます。川上さまのミラブルの話、女性のことをよくわかっていらっしゃると思いました。更なる取り組みというところで、介護があって離職せずに異動で仕事を続けることができたというのも正に御社ならではのできるところと感じました。

女性社員を登用するための、企業側の心構えを教えてください。

川上さま:我々の会社に言えることは、男性に対しても女性に対しても、仕事の差別はしないようにしています。ですので、女性の方も、場面によっては、大きな荷物などを運んでもらうこともあります。ただ「配慮」に関しては、これはまた別の問題で必要だと思うので、配慮がどこまでできるのかというところにきちんと心構えができているか、正しく理解できているかどうかの差かと思います。

川上様が普段から気をつけていることや、アンテナを張っていることなどがあれば、教えて頂いてもよろしいでしょうか。

川上さま:これは女性に限らず、誰もが気持ちよく働きたいですと思いますが、当然嫌なことがあったり、難しい仕事があったりもしますよね。 当社は人事に色々な話を聞く部門があり、女性の話を聞いてきちんと対応できるものはしておりますが、私自身もできる限り、話を聞くようにしております。 運送業は特に肉体的にきついところがあり、また、他業種に比べて勤務時間が長いので、やはりそういう状況の運送業でも、なるべく楽しくやろうということを心掛けています。その中でお互いに色々な話をすることというのは大事な事ではないかと思います。

西岡:ありがとうございます。話を聞く、コミュニケーションを取って、そんな大変な中でも楽しくやろうということが、今日聞いて下さっている方にも、非常にエールになっているのではないかと思いました。

これからの物流業界全体の女性活躍推進に向けての展望と課題について教えてください。

川上さま:少子化などを含めて労働人口が減る中で、我々物流業界に入ってくれる人というのは、本当に他の産業と人材の奪い合いと言うか、我々の産業の方に人が入って来て頂かないといけないというところがあるので、色々な意味で人手不足、人材不足の解消が必要だと思います。

その中で、機械化やAIなどで代われるものはありますが、特にトラック運送、「ハンドルを握る仕事については人が行う」という事は変わらないと思いますので、そういうところについて、他業界と比べて魅力のある業界にしていくことが課題だと思います。

また、女性管理職の登用という意味で、特に経営に近い層やマネージャーの層もそうですが、やはり我々の業界はまだ遅れていると感じますので、もっと推進していくべきだと思います。

西岡:なるほど。管理職に女性を起用することで、業界全体の女性の率や、管理する側にも女性が要るというところですね。ハンドルを握るのは、機械に代われない、人間にしかできない仕事をしているのだというところも、非常にこちらの業界の熱い思いを感じました。

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