肺NTM症が増加中|中高年女性に多い理由と、健診で見逃さないポイント

目次

はじめに

最近、「肺NTM症(非結核性抗酸菌症)」という病気がニュースで取り上げられる機会が増えています。聞き慣れない名前ですが、日本では患者数が増えており、特に中高年の女性に多いことが知られています。

「NTMって何?」「結核とは違うの?」「自分も気をつけたほうがいい?」――今回は、そんな疑問に看護師の立場からわかりやすくお答えします。

NTMは、身近な水や土の中にいる菌

NTMとは、結核菌とらい菌を除く抗酸菌の総称です。現在、約200種類が知られており、水や土、浴室や水道など、私たちの身の回りに広く存在しています。

「そんな菌が身近にいるの?」と心配になるかもしれませんが、NTMに触れたり吸い込んだりしても、ほとんどの人は病気になりません。約200種類のうち、人に病気を起こすことが知られているのは約50種類です。

その中の一部が肺に感染して病気を起こしたものが「肺NTM症」です。日本ではMAC(マック)と呼ばれる菌の仲間が原因の大半を占めています。

また、名前は結核に似ていますが、肺NTM症は基本的に人から人へうつる病気ではありません。家族にうつすことを心配して、生活を分けたりする必要は通常ありません。

日本では患者が増加傾向

肺NTM症は世界各地で増えていますが、日本や韓国など東アジアでは特に増加が目立っています。

日本の全国調査では、肺NTM症の新たな患者は2007年に人口10万人あたり年間5.7人、2014年には14.7人でした。さらに、2025年に報告された最新の全国調査では、2023年の推定罹患率は16.5人/10万人年でした。調査方法には違いがあるため単純な比較はできませんが、日本で長期的に増えていることがわかります。

なぜ日本や東アジアで多いのかは、まだ完全にはわかっていません。体質、肺や気道の特徴、環境、生活習慣など、さまざまな要因が研究されています。

患者が多いこともあり、日本では古くから肺NTM症の全国調査が行われ、疫学や診断、治療について多くの研究が続けられています。日本から発信された研究成果が、世界の肺NTM症診療に役立てられることも少なくありません。

特に中高年の女性に多い

肺NTM症の特徴の一つが、女性、とくに中高年女性に多いことです。

日本の大規模データを用いた研究でも女性に多く、50歳以降に患者が大きく増えることが報告されています。

ただし、「更年期だから発症する」という意味ではありません。なぜ女性に多いのかはまだ完全にはわかっておらず、体格や気道の特徴、ホルモン、もともとの肺の状態など、さまざまな可能性が研究されています。

40代、50代以降の女性にとっては、「自分にも関係するかもしれない肺の病気」として知っておいてよい病気です。

ほとんどのNTMは問題にならない。でも、一部は肺を大きく傷める

ここが、ぜひ知っておいてほしいポイントです。

NTMは身近な環境にいる菌で、触れたからといって多くの人が病気になるわけではありません。しかし、肺NTM症を起こす菌の中には、肺で炎症を起こし、少しずつ肺を傷めていくものがあります。

さらに、一部には治療が難しく、比較的短い期間で病変が広がり、肺を大きく傷めてしまうものもあります。中には、進行すると呼吸する力そのものが低下してしまうケースもあります。

つまり、「NTMはどれも怖い菌」ではありませんが、「身近にいる菌だから放っておいてよい」というものでもありません。

どんな症状があるの?

肺NTM症では、長引く咳や痰、息切れ、発熱、血痰、だるさ、体重減少などがみられることがあります。

ただし、症状がほとんどない人もいます。そのため、健康診断の胸部X線で異常を指摘され、詳しい検査を受けて初めて見つかることもあります。

咳や痰が続いていても、「風邪が長引いているだけ」「年齢のせい」と思ってそのままにしてしまうこともあるでしょう。しかし、肺NTM症だけでなく、喘息、肺炎、結核、肺がんなどでも同じような症状がみられます。

咳や痰が長く続く、血痰が出る、息苦しさが増えた、理由なく体重が減ったといった場合は、呼吸器内科などで一度相談してください。

見つかったら、すぐ治療するの?

肺NTM症と診断されても、全員がすぐ薬を始めるわけではありません。症状や画像の変化、原因となる菌の種類などをみながら経過観察することもあります。

一方、病気が進んでいる場合や、進行しやすいと判断された場合には、複数の薬を使った治療が必要になります。

大切なのは、「症状がないから大丈夫」と自己判断で放置せず、診断された後も定期的に状態を確認することです。

健診を「受けっぱなし」にしない

肺NTM症は胸部X線だけで診断することはできません。異常があれば、必要に応じて胸部CTや痰の検査などを行います。

大切なのは、健診で「要精密検査」「胸部異常あり」と言われたときに、そのままにしないことです。症状がなくても、肺の中では変化が起きていることがあります。

また、健診で異常がなくても、その後に咳や痰が長く続く場合は受診してください。健診は一時点のチェックであり、日々の体調変化を見ることも大切です。

怖がりすぎず、でも見逃さない

NTMは、私たちの身近な水や土に普通にいる菌です。多くの人にとっては、触れても何も起こりません。

一方で、その中には肺に病気を起こし、時間をかけて肺を傷める菌も、比較的短期間で病変を広げ、肺に大きなダメージを与える菌もあります。

そして、日本では肺NTM症の患者が増えており、特に中高年女性に多いことがわかっています。

だからこそ大切なのは、NTMを必要以上に怖がることではなく、「肺の異常を見逃さない」ことです。

定期的に健康診断を受ける。胸部X線で異常を指摘されたらきちんと精密検査を受ける。咳や痰などの症状が長引いたら医療機関に相談する。

「健診をきちんと受ける」

「気になる症状を放置しない」

肺NTM症について、まず覚えておいてほしいのはこの2つです。

参考資料

・厚生労働省「非結核性抗酸菌症(NTM症)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/ntm.html

・国立健康危機管理研究機構(JIHS)「非結核性抗酸菌症」IASR 2025年

https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol46/541/541r11.html

・Hamaguchi Y, et al. ERJ Open Research. 2025.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39963166

・Namkoong H, et al. Emerging Infectious Diseases. 2016.

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4880076

・ATS/ERS/ESCMID/IDSA Clinical Practice Guideline. 2020.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32628747

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この記事を書いた人

人が生きていく上で最も重要なことは、心身の健康だと考えています。「まだまだ若いし、自分には関係ない」、私自身も数年前まではそう考えていました。しかし海外での生活を経て、日本でとても恵まれた医療環境にいたことに気付き、その環境に甘えていたことを痛感しています。看護師として、また働く母として、皆さんの健康への意識を高められ、そして働くお母さんたちの力になれる情報を発信したいと考えています。