【感染対策】梅毒急増中!

はじめに

最近、梅毒の感染者が急増していることをご存知でしょうか?特に、20~40代男性、20代女性に突出して増加しています。梅毒は症状がなくても感染している可能性があり、自分でも気が付かないうちに誰かに感染させてしまっていることがあるため、とても危険な感染症です。

    梅毒の報告率(人口10万当たり報告数)、2000-2019年 国立感染症研究所より

そこで今回は梅毒について、皆さんが正しい知識を持ち、適切な対処をとることができるよう解説していきます。

梅毒とは

梅毒は、「梅毒トレポネーマ」という細菌による性感染症で、全身に様々な症状を引き起こします。梅毒という病名は、実際には梅の果実とは関連がありません。皮膚にできる赤く丸い形をした発疹が、ヤマモモの果実に似ていることに由来しています。主に性行為によって、口や性器などの粘膜や皮膚から感染するため、キスやオーラルセックスだけでも感染してしまう可能性があります。

梅毒は1940年代以降にペニシリンという抗生物質が発明されて初めて、根治することができるようになりました(ドラマ「仁-JIN」で主人公の南方先生がペニシリンを自身で作成して梅毒を治療していましたね)。ただし、検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、後に日常生活ができないほどの重篤な症状を引き起こすことがあるため、早期発見、早期治療が重要となります。

症状

梅毒は、大きく分けると感染後1年以内の早期梅毒、そして1年以上経過した後期梅毒に分けられます。現在は抗菌薬の普及により、後期梅毒を呈する患者は極めて稀になりました。梅毒は症状が自然軽快するため、治ったと勘違いしてしまいやすいのですが、実際は静かに重症化していくため、注意しましょう。

(1) 早期梅毒:感染から1年未満

  • 第Ⅰ期梅毒(感染後数週間以内)

「梅毒トレポネーマ」が侵入した部位(口腔内、肛門、性器など)にしこりや潰瘍、鼠径部(股の付け根)リンパ節の腫れが見られることがありますが、痛みを伴わないので気が付かないことも多いです。治療をしなくても症状が自然軽快するため、治ったと勘違いしてしまうことが多いですが、菌は体の中に潜伏している状態です。

  • 第Ⅱ期梅毒(感染後数か月以内)

感染から3か月程度経過すると、「梅毒トレポネーマ」が血液によって全身に運ばれます。「バラ疹」とよばれる赤い発疹が、手のひら、足裏、体幹部に見られます。発疹は通常数週間以内に自然軽快しますが、Ⅰ期同様、梅毒自体が治っているわけではありません。

(2) 後期梅毒:感染から1年以上

  • 第Ⅲ期梅毒(感染後数年以内)

感染から1 年以上経過すると、性的接触での感染力はなくなります。無症状のこともありますが、しこりやゴム腫(ゴムのような腫瘤)が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊します。特に骨病変は深く刺すような疼痛を引き起こし、夜間に悪化します。

  • 第IV期梅毒(感染後数10年以上)

第IV期まで進行した場合、多くの臓器に影響を与えます。例えば、心臓に繋がる大動脈の壁が弱くなり、コブをつくります。これは心臓の血流に影響を与えるため、大動脈瘤破裂だけでなく、心不全・心筋梗塞を引き起こします。脳に影響を及ぼすと記憶喪失、判断力の低下、錯乱などの認知障害や、性格変化を引き起こし、最終的には認知症・全身麻痺となります。脊髄に影響を及ぼすと、歩行障害や感覚障害、排尿障害などを引き起こします。ここまで進行してしまった場合、治療を行っても、大動脈や脳・神経などに生じた損傷を元に戻すことはできません。

先天梅毒

先天梅毒とは、梅毒が母体から胎盤を介して胎児へ母子感染してしまうことを指します。もしも妊婦さん自身が梅毒の適切な治療を受けていなければ、流産や死産のリスク、また無事に生まれても骨軟骨炎や発育障害、学童期以降に角膜炎や難聴などを発症してしまうことがあります。このため、梅毒の早期発見・早期治療が重要です。妊婦健診に梅毒の検査が含まれているため、確実な妊婦健診の受診、そして気になる症状があるときは必ず医師に相談するようにしましょう。

感染確率

特に早期梅毒(感染後1年以内)は感染力が非常に高く、性交渉を通じての感染確率は約30%です。更に、妊娠中の場合の母子感染確率も早期梅毒においては非常に高く、約60%にも上ります。また注意しなければならないのが、梅毒は潜伏期間(感染しているにも関わらず、検査では検出できない期間)であっても、他の人に感染させてしまう(感染してしまう)可能性があることです。

治療

梅毒は自然治癒することはないため、感染した場合は抗生物質による治療が数週間以上必要となります。

予防法

・不特定多数との性交渉を避ける

・コンドームを使用する(感染リスクは低下しますが、100%の予防はできません)

・自分自身だけでなく、パートナーにも少しでも気になる症状・心当たりがあるときは、病院を受診し検査を受ける

ここで注意しなければいけないのは、私達の体は梅毒に対して免疫を獲得することができないということです。つまり、一度感染して治療をしたとしても、再度感染する可能性があります。「一度かかったから、もうかからない」ということはないため、必ず予防を継続しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

以上のポイントを抑えて、皆さんが正しい知識をもって、梅毒を予防し、適切な治療を受けることができますと幸いです。

参考

梅毒診断ガイド

政府広報オンライン

厚生労働省 梅毒